望まぬ再会
「凄い数のオークなの」
草原の中、無数のオーク達がこの周辺を闊歩している。
緑色の肌に大きな体。ミノタウロスよりは弱いもののA級ランクの魔物だ。
「ユリノ……本当に良いのか? 戦っても」
アレンはユリノに優しく尋ねると彼女は大きく首を縦に振った。
アレンとしては彼女を仲間にしたつもりはあっても戦わせるつもりはなかった。
出来れば普通の子供が普通に過ごせるように戦闘とはなるべく離れさせるつもりだった。
だけどもユリノはそれを拒否した。最初の数日は大人しく戦闘を見守るだけに徹していたがやがては自分も戦うと口にしたのだ。
「アレン……ありがとうなの。でも私だけ見ているのは何だか違う気がしたの。一緒に戦う方が仲間って感じがするから」
ユリノはそういうとアレンに対して少しだけ不安そうな表情で見る。
「それとも私じゃ……役に立たない?」
「そんなことないよ。ユリノ戦いたいなら止めないさ。俺は単に盗賊達みたいに無理矢理戦わせるのが嫌だっただけだ。お前の実力は疑っていない一応戦ったわけだしな」
アレンはそういうと彼女が戦いたいと言ってから製作していた新武器をユリノに渡す。
それは彼女の体には不釣り合いな大きな剣。だが、その不釣り合いさは見た目だけの話。
実際彼女が持ってみるとその大剣は軽々と持ち上がった。
「早速斬り殺してくるの!」
「危なくなったらすぐ戻ってくるんだぞ」
「分かってるのー」
ユリノはそう言うと早速魔法で姿を消す。それと同時にオークの首が突然斬り落とされる。
更に何体もいるオークが次々と身体を斬られて気がつけば十体ほどのオークを簡単に倒してみせた。
「透明化の魔法ってアレン様も使えるのですよね?」
「ああ、彼女との戦いでコピーしたからな」
「流石はアレン様です。この透明化魔法さえあれば相手は認識出来ないわけですから元から強いアレン様はもっと強くなったのではないですか?」
「透明魔法は確かに便利な魔法だよ。だけども熟練の冒険者やSランク以上の魔族なら簡単に対策されてしまうだろうな」
戦闘経験の浅いシアからすれば透明化の魔法は凄く強そうに見える。
だが実際ユリノと戦った時に自分だけではなくベルフェにも彼女の接近は気づかれていた。
つまり透明魔法を使ってもある程度実力がある相手には簡単に気配でバレてしまうのだ。
「とはいえ便利な魔法であることは確かだな」
アレンはそういうと石を拾う。すると石が透明になりその場から消える。
そしてアレンは投げる動作をするとしばらくしてから彼とは離れた位置に石が出現した。
「透明魔法は自分の姿は勿論のこと自分が触れている物体も透明化することが出来る。そして手から離れても一定時間はその物体は透明化が持続するみたいだな」
新しく手に入れた透明魔法を確認しているとオークの一体がこちらに接近してくる。
オークが手にしていた剣をこちらに向かって振るうがそれを軽く避けると短剣で相手の心臓を突き刺した。
「うぅ……ごめんなさいなの。オークの一人を逃がしちゃったの」
「別に謝る必要なんてない。これだけ戦えれば十分だ」
ユリノの周囲には沢山のオークの死体が転がっている。
本来ならばオーク一体を倒すのに冒険者が五人は必要になる。
だがそれを彼女の透明化と獣人特有の身体能力の高さで簡単に倒してしまったのだ。
「これで任務は達成だな」
「これでアレン様もBランクに昇格ですね! これなら勇者ギルドになるのもすぐかも知れませんね!」
「どうだろうな。Aランクまでは上がるだろうがSランク以上となると敵の強さがまるで変わってくるからな」
Aランクの冒険者は大勢いるがそこからSランクに上がるとなると急激にその数は減る。
何故ならSランク以上の魔物は皆が人の姿をしており、頭が働き、身体能力や魔力も数段上がるからだ。
さすがにベルフェほどの魔族はいないがその分、集団で行動し連携を取って戦うはずだ。
「そういえばベルフェさんみたいな人間に近い魔物とゴブリンみたいな魔物って同じ魔物にしては随分と能力も見た目も違いますよね。何故なのでしょう?」
「それは単に人間が私達魔族と魔物を一緒にしているだけだよ。魔物は私達魔族相手でも普通に襲ってくるし言葉すら通じないからね」
「人間と魔族は戦争をしているからな。魔族を魔物と同じ呼称をすることで少しでも魔族を殺す時の精神的な負担を減らすのが目的だろうな」
もっとも人によっては魔族のことを魔族と呼んだり魔物と呼んだりと魔族の呼び方は定まりきれていなかったりする。
基本的には魔物と呼ぶ人の方が多いだろうが。
「そうなんですね。ベルフェさんの性格は……あんまり良くないですけど仲良くは出来るのに残念です」
「……性格が良くない」
「そういうものだろ。人間同士だって魔族同士だって仲良くなれるときと争ってしまう時がある。だから人間と魔族が争ってしまうのも仕方のないことだ」
「それはそうですけど……」
「でもだからって俺達まで必死に殺し合う必要はない。俺達は魔族でも人間でも関係なく仲良くすればいいって思ってるよ」
アレンは貧民だからと多くの人間から虐げられてきた。
だからこそずっと思ってきた。貧民や貴族、そんなものは只の呼称にすぎないのだと。
貧民だから悪だとか貴族だから優れているとかそんなことはないのだ。
それは魔族だって同じこと。大事なのは人間とか魔族だとかではなくどれだけ相手を思いやれるかなのではないかとアレンは思っている。
「流石はアレン様でございます。人と魔族が仲良くするそんな目標を掲げることが出来るなんてやっぱりアレン様は優しいです! 崇拝対象にして本当に良かったです!」
シアは嬉しそうに表情を明るくする。それに反して性格が良くないと言われて拗ねたような表情をするベルフェ。
そんな彼女たちと一緒に協会へと向かおうとしたその時だった。
「ようやく見つけたぞ……アレン」
そこにいたのはリファドだった。いやリファドだけではない。
風の囁きのギルド全員がそこにいた。




