幸せになるために
「な、なんなんだ……コイツは」
「ひぃぃ! 化け物だ! 殺されるッ!」
アレンに攻撃をしようとした盗賊達が発火魔法によって次々に燃やされていく。
勿論盗賊たちも馬鹿ではない。当然燃やされる前に攻撃をしようと魔法攻撃を放つがそれらは全てアレンに当たることなく消滅する。
「魔法攻撃が消されるのかッ!」
「一気に片付ける!」
アレンは無数の魔方陣を展開するとそこから漆黒魔法を放つ。
魔方陣から放たれた黒い光に盗賊は慌てて盾を構えるが盾を貫通して盗賊たちを殺していく。
「こんな攻撃……すぐに避けてーーギャァァァぁぁッ!」
勿論中には漆黒魔法を避ける盗賊もいる。だがその盗賊もまた発火魔法によって全身が燃やされて消滅する。
「な……なんなの……この人」
そのもはや戦闘とは呼べない状況に獣耳の少女は怯えつつも剣を構える。
発火魔法は視界に入ったものを燃やす魔法。ならば透明化すればそれを防ぐことが出来る。
ユリノは透明化をしてアレンに接近するとその首を目掛けて刃を振るう。
だがその刃は彼の剣によって防がれてしまった。
それと共に透明化が解除されてユリノが姿を表した。
「……なんでバレてるの」
「気配で分かる。それよりなんでこんなボロボロになってまで戦うんだ!」
「そんなの……パンを食べるために決まってるの!」
「パンだと……!」
「暴力を受けても……辛くても……パンを食べさせてくれるの!」
ユリノはそう言うと剣をアレンに向けて何度も振るう。
ユリノの身体能力は獣人というだけあって普通の人間とは比べ物にならないほどの身体能力を有している。
だからユリノの攻撃は普通の冒険者では対応することは不可能だ。
だがアレンはそんなユリノの攻撃を簡単に受け止めてしまう。
「その気持ちは分かる。だがお前はそれでいいのか?」
「いいも悪いもないの……それしか方法はないの!」
「沢山殴られて! その耳だって片方なのは引きちぎられたからなんだろ! なのにそんな人生のままでいいのか!」
「人生は人の生きる道なの。獣人は……私は人じゃない……だから」
「でもお前には感情がある! 人間と同じじゃないか!」
アレンはユリノの腹部を蹴り飛ばす。それと同時に無数の漆黒魔法でまだ攻撃をしようとしている盗賊達を倒していく。
「ぐっ……理想論だけで話さないで欲しいの! 私だけがどれだけ人間だと言っても周りは私を人間だとは思わないの! 獣人に生まれた時点で不幸なまま生きるしかないの」
「だったら俺がお前を人間と認める! 俺だけじゃない俺の仲間だって認めるはずだ!」
「人間……私が人間……そんな簡単に」
「今まで沢山いじめられてきたんだろ! 沢山辛い思いをしてきたんだろ! 苦しい思いをしてきたんだろ! だったらその分お前は幸せになるべきだ!」
「そんな簡単に幸せになれるわけがないの!」
ユリノは一気に加速するとアレンに対して刃を振るう。
だけどそれを彼は避けるとそのまま剣を振るってユリノの剣を弾き飛ばした。
「そうだ! 幸せなんて簡単になれるものじゃない。だからこそ一緒に目指すんだ!」
「……一緒に」
「俺は不幸な人生なんて認めない。不幸になったのならその分幸せになるべきだと考えている。そして人は幸せになるために生きているんだ……だからお前も俺と一緒に幸せになって欲しい」
「貴方は……幸せがどんなものか知ってるの?」
「偉そうなことを言ったがまだ分からないんだ。だから一緒に知っていこう、俺達で一緒に幸せになっていこう」
アレンの言葉にユリノはゆっくりと彼の元へと近づいた。
「私も幸せに……幸せになりたいの!」
「なら決まりだな。俺はアレンだ、お前は」
「ユリノ……なの」
「ユリノか、これからよろしくな。後は俺に任せてくれ」
アレンはそれだけ言うとユリノの頭をそっと撫でる。
それだけでユリノのボロボロだった身体は全て治り、欠けていたもう一つの獣耳も生えてきた。
「コイツ……裏切ったのか!」
「だったら二人とも殺すまでだ!」
「まだ攻撃をするつもりなのか!」
「自分が優勢だと思ってんじゃねぇぇぇ!」
無数の魔法攻撃がアレンとユリノに放たれる。だけどもその魔法攻撃は彼らに近づくと同時に消滅する。
「クソッ! なんで相手は魔力が切れないんだ! 人間なんだろッ!」
別に彼らも何も無策で効いていない魔法攻撃を撃っているわけではない。
人間である以上、魔力には限りがある。ならば沢山魔法攻撃をして相手が魔力切れを起こせばこちらにも勝ち目があった。
だけどもそれは普通の冒険者の話。彼の魔力は未だに途切れる様子はない。
「だったら近接攻撃で!」
大勢の盗賊が殺される中で何人かの盗賊がアレンに近づこうとするがそれと同時にバタりと盗賊達は倒れてしまう。
アレンの怠惰魔法によって盗賊達はすべての能力が弱体化して死んでしまったのだ。
「一気に終わらせるッ!」
アレンは次々に迫り来る盗賊達を燃やしていく。
もはやそれは戦闘ではなく虐殺に近い。アレンは発火魔法の他に、無数の魔方陣から漆黒の巨大な光が放たれる。
「う、うわぁぁぁぁッ!?」
「ぐぁぁぁぁッ!?」
それは漆黒魔法の威力をあげた魔法攻撃。
その黒い光は盗賊たちを次々に飲み込み消滅させていった。
気がつけば既に生きている盗賊の姿はない。百人以上はいたであろう盗賊はその全てがアレンによって倒されたのだ。
「すごい……あんなにいたのにみんな消えちゃったの」
「同じスラム出身。こいつらのやったことは許されることじゃないが、それでもここまで殺すことになるとはな」
でもただ殺し尽くしたわけではない。少なくとも彼女を救うことは出来た。
アレンはそっとユリノを見ると彼女を連れてシア達の所へと合流したのだった。




