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ティアナの一撃

「今こそ我が冒険者の実力を見るがいい!」


迫り来る盗賊達相手に冒険者達が無数の魔法攻撃を行う。

沢山の魔法達が盗賊達に襲い掛かるが、それらの攻撃を盗賊たちは軽く避けていた。


「な、何故避けられる……! ゴブリンは避けなかったぞ!」


「俺達は人間だ! 魔物退治のつもりで人殺しなんかしてんじゃねぇよ!」


「ぐぅ! ならば我が剣撃にて倒してみせよう!」


魔法攻撃が当たらないなら剣で斬ればいい。冒険者達は剣を取り出すと盗賊の長であるフィルクに斬りかかる。

だが、それをフィルクは横に移動して避けるとすぐに腹部に刃を貫いた。


「ぐあぁぁぁ! 馬鹿な……!」


「はっはっは! 冒険者ってのは随分と弱いじゃねぇか!」


「この! 貧民の癖に!」


「私の仲間を傷付けるなんて!」


冒険者の一人がやられたことで他の冒険者達がフィルクに復讐をしようと剣を振るう。

だけどもこの冒険者達は人を斬った経験が少ないのだろう。

何人も冒険者たちを襲ってきたフィルクには何も出来ず無惨に斬り殺されていく。


「見たところSSランクの装備をしてるな……ありがたく頂くぜ」


フィルクは自分の武器を捨てると更に強い剣を装備する。

そしてこちらに向かってくる冒険者にフィルクは逆に剣を振るう。

冒険者は咄嗟に盾でガードをする。本来であればそれによって剣は弾かれるはずだった。

だがフィルクの手にしたSSランクの武器はいとも容易く盾を真っ二つに斬り伏せた。


「俺の盾が……!」


「仲間の武器で死ぬなんてな!」


「ひぃぃ! こっちに来るなぁぁ!」


フィルクは盾を斬られて泣き叫ぶ冒険者を斬り伏せると更に何人もいる冒険者たちを次々に殺していった。

もはやそれは戦闘ではなく虐殺。冒険者一人一人はSランク相当の実力があったのにも関わらず気がつけば沢山いた冒険者達は全員が動かなくなっていた。


「……他のギルドが全滅した!? アレン様の加護を受けないから!」


気がつけばアレンのギルド以外の全ての冒険者がフィルク一人にやられていた。

ならばとシアがフィルクと戦おうとするがそれよりも早く無数の魔法攻撃がシア目掛けて放たれる。


シアは何とか避けようとするが全てを避けることは出来ない。

シアはすぐに盾を構えて避けきれなかった魔法攻撃を防いだ。

本来であれば盾を構えていても魔法攻撃を一度や二度受ければ壊れてしまうが彼女の盾には傷一つついていない。


「これがアレン様の力。この盾があればどんな魔法攻撃でも!」


「だったら近接攻撃を仕掛ければいいだけだ!」


魔法攻撃を防いでいるとすぐに盗賊の一人がシアに斬り掛かる。


シアの実力はまだ低い。当然、手練れの盗賊の動きに対応できずその剣がシアの腹部に当たる。

だがその攻撃はシアの鎧に弾かれ盗賊は大きく仰け反ってしまった。


「攻撃が効かないだと!?」


「これがアレン様の力です!」


シアは動揺した盗賊に刃を振るう。それに対して盗賊は反応出来ずに斬り伏せられた。

それによって調子が出てきたのか、更に一人二人と斬り倒す。


「チッ……鎧の隙間を攻撃すりゃいいんだよ! こっちは数が多いんだ!」


盗賊たちの数はまだまだ多い。それに対してシアの実力では例え強い装備をしていたとしても倒しきることは不可能だった。

だがそれはあくまでも魔法を使わなければの話。シアには神降ろしがある。


「こうなったら神降ろしで!」


シアは自分の身体に神様を降臨させる。水色の天使の輪が出現し、青く光る翼が彼女の身体から生えてくる。

今回降臨した神様はアテナ。戦を司る神であり、その効果は圧倒的な速度と剣の実力。


「ふぅー……大丈夫。アレン様から頂いた装備で魔力切れはそこまで気にしなくて良いはず」


現在シアの装備している鎧には豊富な魔力が宿っており、装備するだけでシアの魔力を補給することが可能になっている。

もっともそれにも限度があり、アレンのように無限に魔法を使えるわけではないがそれでも今までと比べて長く戦闘を行うことが出来る。


シアはアテナの力を使い。高速で敵の眼前に移動すると次々に敵を斬りつける。

中にはシアの動きに反応できる盗賊もいたが今度は彼女の洗練された剣技によって何も出来ず倒されてしまう。


その彼女の先程までとは違う動きに盗賊たちはシアを警戒して距離を取った。

それに対してシアは詰め寄ろうとするが、戦闘可能時間の限界を超えた。


「……くっ、流石に一週間少しでこの魔法を使いこなすのは無理でしたか」


神降ろしは強力な魔法。故に魔力消費は当然膨大なのだが問題はそれだけではない。

神という存在を憑依させることによる肉体の負荷。

既にシアの身体はボロボロであり、口から血が溢れ始めた。


「血を吐いてる奴がいるぜ!」


「くっ……思った以上に負担が」


血を吐いているシアを見て盗賊の一人が魔法攻撃を放つ。

それに対してシアは盾で防ごうとする。だけども自分が思っている以上に身体の負担は大きかったようで盾を構えることが出来ない。


「しまっ……!」


「死ねぇぇ!」


放たれた魔法攻撃がシアに接近する。だがそれが彼女に当たることはなかった。

シアの眼前、そこには盾を構えたティアナがいたからだ。

彼女の盾により相手の攻撃魔法は防がれる。そして速度魔法で瞬時に盗賊の眼前に移動すると剣で相手の胸を突き刺した。


「よいしょっと……何とか間に合ったわね。とりあえずベルフェの所まで下がれそう?」


「ありがとうございます。すみません……身体が全然動かなくて」


「だったらすぐに運ぶわ」


ティアナは敵の攻撃魔法を華麗に避けるとシアを抱えて商人を護衛しているベルフェのところへと向かった。

ベルフェの周りには既に何度か戦闘が行われたのだろう何人もの盗賊が動かなくなっていた。


「ベルフェ、シアの治療をしておいて」


「はーい」


ベルフェはボロボロになったシアに回復魔法を施す。

それを確認したティアナはすぐに戦闘状態に戻り、盗賊を次々と斬り殺していく。

そして盗賊のリーダーであるフィルクの所へと接近した。


「相手は四人だろ! なんで手こずる!」


「残念ね! 私たちにはアレンの装備と強化魔法があるのよ」


「自分の腕より先に男の自慢をしやがって! そんな奴に負けるかよ!」


フィルクはティアナに向かって剣を振るうが、彼女はそれを軽く避けると逆に反撃の刃を振るった。

それを咄嗟にフィルクは盾で防ぐが盾がその一撃で砕けてしまう。


「くっ……お前には分からねぇだろうな! 貧乏人の気持ちが! 俺達スラム出身は好きな仕事に就けないんだ! だから人を殺したっていいだろうが」


「私もスラム出身よ。冒険者になりたかったのならアレンみたいにギルドを作れば良かったのよ! 貴方はこれだけの人を集められるのにそれを悪いことにしか使わないなんて!」


「自分の価値観で語ってんじゃねぇ! 誰がギルドの冒険者になるかよ! あんな危険で殺し合いしかしないような仕事に!」


フィルクはケーキが作りたかった。ケーキ屋さんになるのが夢だったのだ。

だけどもケーキ屋さんは平民以上の階級じゃないとなることは出来ないのだ。

故に彼はケーキ屋さんではなく裏ギルドを束ねる盗賊になった。


「俺は剣を握るよりもケーキを作りたかったんだ!」


先程奪った剣はSSランクの上等な装備。故にアレンの作った剣ともギリギリ渡り合うことが出来ていた。

そしてフィルクにはまだ奥の手がある。そう彼はまだ魔法を使っていない。


「これで終わりよ!」


ティアナはフィルクに向かって剣を振り上げる。

だけどそんな彼女の右目がーー燃えた。それは発火魔法、木の葉しか燃やせない程度の威力の弱い魔法。

だからこそ工夫した。工夫をして結果、相手の目を燃やすという方法を思い付いたのだ。


ティアナの目が燃える。当然それは痛いはずだ。

普通ならば目を瞑って隙を作ってしまうだろう。

だけども彼女はそれをしない。強烈な痛みに耐えることが出来てしまう。


だって彼女は既に苦しい想いを沢山してきた。夢を叶えようとして何度も叶えられなかった悲しい想いを。

夢を諦めようとしてだけども諦めきれなかった自分の中途半端さ。その中途半端ゆえの苦しみ。

だからこそ痛みに耐えることが出来た。


そして痛みに耐えて身体を動かすことが出来たのは幸せを経験したから。

それはアレンと一緒に冒険者として活動してきたここ一週間と数日の素敵な思い出だった。


「確かに貴方の言う通り、冒険者は魔物と戦ったり冒険者同士で殺し合ったりして危険かもしれない……だけど」


ティアナが剣を振るっている。それに対してフィルクは反応するが動くのが遅れた。

発火魔法で片目が燃えているのに動き続ける彼女に恐怖を覚えてしまったのだ。


「私は冒険者が好き! だってアレンと一緒に過ごす今はとても幸せだから!」


「あぁぁぁぁッ!」


ティアナの斬撃を前にフィルクは叫び声をあげるとそのまま動かなくなる。

それを片目で見届けると他の盗賊たちを倒すために剣を振るうのだった。

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