護衛任務
「おめでとうございます! これでギルドランクはDランクからCランクに上がりましたね!」
いつも通り受付嬢に任務の報告を終えると今まで任務を達成してきたからなのかギルドのランクが上がる。
レボルシオンを結成してから一週間と数日、アレンは今まで沢山のギルドに所属してきたがこんなにも早くランクが上がるのは初めてのことだった。
「ですか凄いですね! まだ一週間なのにCランクにまで上がってしまうなんて」
「仲間のおかげだよ」
「仲間ですか……良かったです。アレンさんが信頼できる人と巡り合えて!」
感慨深そうにこちらを見る受付嬢。それに対して自分も静かに頷く。
確かに今まで沢山の人に迫害されて追放されてきた。
スラム育ちでは勇者ギルドになれないんじゃないかそんな風に不安になったことも何度もあった。
だけども今は違う。シアにティアナにベルフェ。
彼女たちのおかげで自分の夢が叶うような気がするのだ。
「……ん? この依頼……護衛任務にしてはやけに報酬が高いな」
アレンが次の任務を探していると明らかに報酬額が高い依頼を目にする。
内容を見るに複数のギルドで一つの任務を達成する合同任務となっている。
そもそも合同任務を護衛任務でするのも珍しい。
「この任務に興味があるのですか?」
「護衛任務にしては高い報酬だが、そらに合同任務だ」
「ここ最近頻繁に商人達が何者かの襲撃を受けているみたいで……勿論護衛は付いていたんですけど全滅してるみたいなんです」
「だからこその高額な報酬か」
依頼の報酬はその危険度によって増加する。今回大量に冒険者が死亡したことで報酬が高額になったのだろう。
ならば面白いと自分はその任務用紙を手に取ると受付嬢に渡す。
「ちょっ……ちょっと待ってください! これは只の護衛任務じゃないんですよ! 護衛達が殲滅しているってことは裏ギルドの人達が関わっているかも知れないんです!」
裏ギルドとは非合法のギルド組織。主に貧民街出身の人物や犯罪者が集まった組織で略奪や暗殺といった普通のギルドでは出来ない仕事を生業にしている。
裏ギルドは素行には問題はあるがその実力は本物で本来であればCランクのギルドでは相手にならない連中だ。
だからこそ受付嬢が心配するのも理解できるのだが。
「俺達は勇者ギルドを目指す必要がある。裏ギルドの連中に勝てないようでは勇者にはなれないだろ?」
「……分かりました。でも合同任務です。危なくなったら他のギルドと協力を」
「向こうにその気があれば良いんだけどな」
「……あはは」
それに対して受付嬢は困ったように苦笑した。
ーーー
「君たちがレボルシオンかね?」
護衛任務として商人たちを護りながら草原を歩いていると突然他のギルドの冒険者がこちらに話し掛けてきた。
茶髪の大男。彼は全身を高価な鎧で身を包んでいた。
「そうだが……何か用か」
「レボルシオンの噂は聞いている。なんでも貧民の癖に勇者ギルドを目指す馬鹿な奴らがいるってな」
合同任務の時点である程度予想はしていたがやはり他のギルドからは自分達のギルドは快く思われていないらしい。
早速というべきかこうして絡んでくる奴も出てくる。
「それで……何が言いたいんだ」
「お前みたいな奴はこの任務に来るなと言っているのだ!」
瞬間、冒険者の男がアレン目掛けて剣を振るう。
だがその剣は地面に激突する。それはアレンが何かしたわけではない。
その男がわざとアレンから攻撃を外したのだ。
彼にはアレンを攻撃するつもりはなかった。ただ脅してビビらせたかったそれだけだった。
だが一向に怯えないアレンに苛ついたのか彼を睨み付ける。
「少しは怯えろよ」
「剣の動きで当たるかどうかぐらい分かる。それより本当に良いのか強化魔法掛けなくて」
「何度も言っている! 貴様のような貧民の魔法などいらんとな! お前に魔法を掛けられると思うとそれだけで寒気が走るわ!」
冒険者はそれだけ言うとアレンから離れる。そんな彼を見てアレンは溜め息を吐いた。
アレンとしては他の冒険者と協力したいと思っていた。
その為に良ければと強化魔法を掛けることを提案したのだが、それを拒絶したばかりか貧民ギルドは近づくなと罵詈雑言を受ける始末だった。
仕方ないので他のギルドとは距離を取ったがそれでもこうやって冒険者達が絡んでくる。
「アレン様……あいつら無礼ですよ! 折角アレン様が祝福を与えて下さるのにそれを拒絶するなんて! 殺しましょう!」
「そんなことで殺していたら人がいなくなるぞ」
「でもアイツらはアレン様を侮辱したのですよ! 私は悔しいです! アレン様が良いと言ってくれれば私がこの剣で戦いますよ!」
「ダメだ。俺達の任務は商人の護衛だ。冒険者同士で殺し合っている場合じゃないだろ。それを向こうも分かってるから嫌がらせだけして攻撃はしてこないんだよ」
戦おうとするシアの手をそっと握って落ち着かせる。
シアも最初は怒っていたが暫く自分が側にいると落ち着いて来たようだ。
「……アレン様優しすぎますよ」
「本当は一緒に戦いたいんだけどな。なんでこんなに嫌われるんだか」
「人間なんてそんなものだよ。生まれた場所が違うだけで考え方が違うだけで相手を殺す生き物なんだし」
ベルフェは冷めたような目で他の冒険者を見ながら呟いた。
生まれた場所が違う。そうそれだけなのだ。だがそれだけで人は人を嫌うことが出来てしまう。
だから人間は愚かだとベルフェは考えているのかも知れない……でも自分はそれだけが人間の全てだとは思わない。
「……そうだな。そういう人間もいるよ。だけど俺はシアやティアナみたいな優しい人間も知っている。ベルフェだって俺と一緒に行動してくれているのは俺がそういう人間じゃないって知っているからだろ」
「……アレンは優しいから好きだよ。でもアレンみたいな素敵な人間は他にはいないんだよ? アレンはもっと自分が優れた人間なんだって自覚してほしいかな」
「過大評価だな」
「事実を言っただけ……それより」
「……分かってる」
ベルフェと自分はそれに気づいたのか周囲を警戒する。
それに対してシアやティアナは不思議そうな顔で自分達を見ていた。
「えっ……どうかしたのですか? 敵はいないみたいですけど」
確かに視界には敵がいないように見える。だけども足音が、地面の砂が、気配が敵が来ていると教えてくれていた。
自分はシアの肩に手を掛けて下がらせると同時に何もない虚空に向けて蹴りを入れる。
「かはっ!」
呻き声と共に虚空からケモ耳の少女が姿を現す。
彼女は蹴りを食らったことで吹き飛ばされ、慌てて木に足を付けて着地した。
「なっ……敵がいたなんて」
「なんだ……こいつは! ボロボロじゃないか!」
アレンも同時にその少女に驚く。アレンが攻撃したのは軽い蹴りの一撃のみ。
なのにその少女は既に全身が痣だらけで見るからにボロボロの姿になっていた。
「おいおい! バレてんじゃねーかよ! 使えねぇなぁ!」
少女が姿を現したと同時に大勢の盗賊達がこちらを取り囲む。
そんな盗賊たちに他の冒険者たちは剣を構えて対峙した。
「貴様らが商人を襲っている盗賊たちか! なるほど見たところやはり貧民の集まりとみえる。良いだろう我らの魔法攻撃で倒してやろうではないか!」
冒険者と盗賊達が戦う。その間に自分は目の前の少女に刃を向けた。




