番外編2:マルコの商談日誌 ~金の卵と最高の仲間~
俺の商売哲学は「儲かる話には首を突っ込む」だ。だから、あの寂れたロカの町の市場で、場違いなほど生命力に満ち溢れた野菜と、それを売る気高い瞳の元令嬢を見つけた時、俺の商人としての勘が、けたたましく警鐘を鳴らしたんだ。
「こいつは金の卵だ!」ってな。
エレオノーラ、いや、今じゃ俺たちのノラシェフだが、最初の印象は「世間知らずだが、胆力のあるお嬢さん」って感じだった。交渉の仕方も堂々としてたし、なにより自分の育てた野菜への絶対的な自信が、その瞳から伝わってきた。
面白そうだから、一口乗ってやろう。最初は、そんな軽い気持ちだった。
食堂『太陽の恵み』の資金を出したのも、投資の一環さ。この野菜の価値を広めるには、最高の宣伝になると思ったからな。用心棒のカイの旦那は、最初は俺を警戒しててやりにくかったが、まあ、それだけノラシェフを大事にしてるってことなんだろう。
だがな、一緒に仕事をしていくうちに、俺の気持ちは少しずつ変わっていった。
ノラシェフは、金儲けのためじゃなく、本当に「美味しいものを食べて、人を幸せにしたい」って純粋な気持ちで料理を作ってた。そんな彼女の料理を食べた客が、本当に幸せそうな顔で帰っていくのを見るのは、正直、大金を手にするのとはまた違う、格別の喜びがあった。
伝説の料理人ソフィア先生まで仲間に加わった時は、さすがにぶったまげたがな。これで、金の卵は本物のグリフォンにでもなっちまうと思ったぜ。
谷が豊かになって、村人たちが笑顔を取り戻していく。俺は、その活気の中で商売をしながら、いつの間にかこの谷が、自分の故郷みたいに好きになっていた。
国を救うために王都へ行くって話になった時、俺は二つ返事で引き受けた。
「国を救えば、後で莫大な利益が転がり込んでくる!」なんて算盤を弾いたのは、もちろん本当だ。だが、それだけじゃなかった。
この最高の仲間たちと一緒に、でっかいことを成し遂げてみたかったんだ。儲け話だけじゃない、胸が熱くなるような、最高の冒険をな。
結果、俺たちは本当に国を救っちまって、俺も「救国の商人」なんて呼ばれて、がっぽり儲けさせてもらった。
でも、一番の儲けは、金じゃなかった。
ノラシェフ、カイの旦那、ソフィア先生、谷のみんな。
こいつらという「最高の仲間」と出会えたこと。それこそが、俺の人生で最高の商談だったのさ。




