50──かつての魔王城へ
「ゼグルの深淵とは──」
ルキファスはいたって真面目に説明した。
「俺が根城にしていた場所だ。七十二の層と六つの結界柱で構成され、数千の魔族と数万のモンスターによって守りを固めた難攻不落の城だ。入り口から最深部の城までは普通に移動するだけでも最低十日はかかり、その道中には数百のトラップが仕掛けられている」
「うっわー、何なのそのコテコテなオーバーキルな設定のダンジョンは」
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:芋のポテト・『ぼくの考えたちいきょうシリーズ味を感じるな』
:greencha・『設定とおっぱいは盛れば盛るほど良い』
:チェックメイド・『最後面感半端ないって!』
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ルキファスの新たな設定公開──だと思っ皆思っている──に、配信は沸いた。
リヴルも面白いと判断したのか、話を合わせていく。
「なるほどー。つまり、その難攻不落のダンジョンを勇者に突破されてルキファスさんは封印されたと」
「いや、そうではない。俺はそこから離れて辺境の地に行楽へ赴いていた所を勇者達に強襲されたのだ。ぬう、忌々しい奴らめ」
「ルキファスさん、こ、行楽って、何その面白い設定っ、ぷっ、くくくく······」
ルキファスの話に思わず笑いそうになるのを堪えるリヴル。ラヴィも少し失笑していた。
「な、なるほど! ルキファスさんのような魔王にも行楽という穏やかな趣味があったのね! で、その後結局そのルキファスさんのお城はどうなっちゃったの?」
「知らん。封印される前は健在だったが、そこからすぐに陥落したのか、しばらくは保ったのか、既に消えていた俺には分からん」
「まあ、それはそうかもね」
相づちを打ちつつ、リヴルはふと気になった事を尋ねた。
「で、魔王様は自分の家に帰りたいの?」
「ん?」
そんなセンチメンタルな質問にルキファスは冷めた答えを返した。
「そんな事ではない。だが、もし魔界を復活させるなら居城を拠点にした方が早いというだけの話だ」
「魔王って愛着とか執着って無いのねえ」
しかし、そこで。リヴルは何か考えついたようで、首を捻り、ブツブツと独り言を呟きだした。
「でも、待てよ······あたし達の次のダンジョン配信は決まってなかったし、ここはルキファスさんの言うゼグルの深淵とかいう場所に行くっていう企画でも······」
「お姉ちゃん、配信中だよ」
「あっ。ごめんっ、ごめ~んみんな~! ちょっと考え事しててね! でも、そのゼグルとかいうダンジョンはどこにあるの?」
その質問にルキファスは淡々と答えた。
「ここからそう遠くはない。シュラマーヤ······貴様らはシュラヤと呼んでるそうだが、その辺りに張り巡らされた環状地下道から入れる」
「シュラヤのダンジョン? あれって確か······ラヴィ、ちょいとダンジョンマップ持ってきて」
「うん」
ラヴィが画面から消え、リヴルがカメラをくいっと自分へと向ける。
「さあっ、魔王様の言うゼグルの深淵とは何なのか!? そして、そのダンジョンは今も存在するのか!? 我々ラブリブチャンネルはその今世紀最大の謎に挑むのであった!!」
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:LOVEtea・『な、なんだってー?!』
:婚約破棄おじゃる令嬢・『お、終わりじゃ~! あの深淵に触れてはならぬ~!』
:ぷーりん・『有名なダンジョンなのかな?』
:チェックメイド・『今調べたが、ゼグルなんていうダンジョンは無いな。ゼガっていうダンジョンはあるけど、禁止ダンジョンっぽい』
:taroZ・『↑有能』
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ダンジョンマップを持ってきたラヴィがルキファスへと見せる。
「この辺の事でしょうか?」
ラヴィがマップの一部分に指差すと、ルキファスは頷いた。
「ああ、そうだ。大体この辺りか」
そこはダンジョンの密集地帯として古くからその存在が公に知れ渡っており、何度か大きなモンスター騒動も起きたエリアだ。
しかし、実際はダンジョンの密集地帯というより、その地域全体をカバーするほどの超巨大なダンジョンの入り口が無数にあるだけだということは、あまり知られていない。
「あちゃ~。ここはほぼ全部が禁止ダンジョンだね」
示された地図を見て言うリヴル。
「こっから西と北は政府が公的に禁止してて、こっちの南側は企業が私有地化してるわね。たしか、あたし達の親会社のリ・バースフィアが管理してたような······」
言いながら、リヴルはカメラへの配慮も忘れなかった。マップを持って、件の部分を指し示して説明を始めた。
「みなさん、ルキファスさんのお家がどこか判明しましたっ! なんと、このシュラヤにあるダンジョン密集地帯にあるそうです! さしずめ魔界の集合住宅と言ったところでしょうか! しかしっ! ご覧の通りこの辺りのダンジョンはほぼ全部が禁止ダンジョン扱い。残念ながらルキファスさんの実家配信は叶いそうにありません······」
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:greencha・『くそ、自宅凸しようと思ってたのに!』
:摂氏50℃のゴミ箱・『あそこは謎大きダンジョンよなあ』
:Cityビースト・『五世紀くらい前まではヤバい場所だったらしい』
:新月の鷹・『昔にモンスターの事件があった場所だもんね』
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残念そうに苦笑するリヴルとラヴィ。そんな姉妹に魔王はこんな問いかけをした。
「よくは知らんが、ここは立ち入り禁止の場所だと言ったな?」
「ええ、そうよ。あたし達の親会社も管理してるけど、所属ダイバーでも入れて貰えないのよねえ」
それを聞いたルキファスは鼻でフンっとあしらった。
「お前らの上司はあのオルグロンなのだろう? だったら話は早い。すぐに入れるぞ」
「はい?」
妙な事を口走った魔王に、姉妹は目をパチクリさせて顔を見合わせた。
当のルキファスはカメラに向かってこう言った。
「オルグロン。どうせ姑息な貴様の事だ。俺の動向が気になって見てるのだろう? そのままよく聞け」
「「???」」
訳が分からずに困惑する姉妹には構わずルキファスはカメラ目線で続けた。
「今の話の通りだ。俺は一度ゼグルの深淵にあるベルグランドの様子を見てくる。貴様が管理してるダンジョンの入り口とやらを通れるように手配しろ。以上だ」
ルキファスは言いたい事だけ言って、周囲には説明もせずに話を終えた。
流石にそれでは意味も分からず、場が変な空気になると思ったリヴルが質問する。
「ちょいちょーい。今のは何?」
「このカメラとやらに話せば、俺の姿と声が遠くの者にも届くのだろう? だから今オルグロンへ命令を下したところだ」
「オルグロン? 何か前にもそんな人の名前を言ってたような······?」
「うん。誰だったっけ?」
まさかそれが自分達の親会社の代表だとは思いもよらない姉妹なのであった。
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:芋のポテト・『魔王様ってけっこう電波よな』
:ぷーりん・『ルキファスさん、謎めいたとこもカッコいい!』
:Cityビースト・『いえ~いっ、オルグロン見てるー?』
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とりあえず、変な空気になる前にリヴルも話を合わせる事にした。
「よーし! オルグロン~! 魔王様のご命令よ! あたし達をゼグルダンジョンに導きなさ~いっ! じゃないと~······魔王様より八つ裂きの刑に処するぞ~!」
悪のりするようなリヴルの言動に、ラヴィは呆れたように頭を振っていた。
お疲れ様です。次話に続きます。




