49──魔王の思いつき
「うえ~いっ! ラブリブチャンネルのお時間ですよ~! みんな見てる~? 今夜もキラキラな時間をお送りするのはアレグリア所属のあたしことリヴルと~っ」
「同じくアレグリア所属、妹のラヴィと······」
「特別顧問の魔王ルキファスだ」
三人が始まりの挨拶を述べる。
────────────────────
:芋のポテト・『3万人おめでとうございまする!』
:あああああ・『うぇ~いっ! 3万おめー!』
:チェックメイド・『3万人おめでとう!』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『3万人おめでとう!』
:新月の鷹・『登録者3万人おめでとう!!』
────────────────────
コメント欄は祝いの言葉に溢れ、リヴルとラヴィは喜んで礼を返した。
「みんなありがとね~! ここ最近、お陰で沢山の人達に見て貰ってるわ! それもこれも普段から支えてくれる皆のお陰! ありがとう!」
「皆さんありがとうございます! これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いいたします」
────────────────────
:妹推し紳士・『うおおおぉんっ、ラヴィちゃん、こんなに大きくなっちまって······』
:摂氏50℃のゴミ箱・『これからも頑張れ!』
:婚約破棄おじゃる令嬢・『このウェーブは止まられねえぜ!』
:ABCエビ・『今北』
:greencha・『マジで勢いすげえよな』
:Cityビースト『推してるよっ!』
────────────────────
ここ最近の姉妹の活躍は目を見張るものがあり、応援しているファン達からは応援や称賛の声が相次いだ。
そんなコメントの中に、こんなコメントも多く含まれていた。
────────────────────
:芋のポテト・『しかし、魔王様効果もすげえよな』
:あああああ・『魔王様、今宵もお麗しゅう······』
:ぷーりん・『ルキファスさんっ、おめでとうございます!』
:チェックメイド・『今では魔王様も推しだぜ』
:taroZ・『魔王様、我ら眷属一同ついていきまっせ』
────────────────────
自身に向けられる声援や祝いの言葉の数々。それは、当然人間からなど受けた事などないルキファスにとっては奇妙なものであった。
しかし、それは不思議な感覚でもあった。
「はいっ! 皆からの温かい声援をたくさん貰ったところで! あたし達からいくつかの発表があります!」
カメラに向かって背を伸ばして胸を張るリヴル。
「あたし達の特別顧問である魔王ことルキファスさんなんですが、この度、正式にメンバー入りを決定しました~! いえ~いっ、ぱふぱふ~!」
小道具の小さなラッパをパフパフとやたらめったらに鳴らして囃し立てるリヴル。当のルキファス本人は真顔のままである。
「皆さんも知っての通り、ルキファスさんは神話に語り継がれる恐ろしい魔王! それを、あたし達姉妹がうっかり復活させてしまったのはご存知の通り! あのルキファスさん初登場配信の時、謎のダンジョンで間違えて封印解いちゃったの~!」
────────────────────
:芋のポテト・『人類史の戦犯で草』
:婚約破棄おじゃる令嬢・『お前らのせいかいwww』
:チェックメイド・『攻めた設定で草』
:あああああ・『魔王様ーっ!!』
────────────────────
「あたし達姉妹も勇敢に立ち向かったけど、その善戦虚しく、今はこうやって服従させられて神官にさせられちゃったの。そして、魔王様の新たな世界征服のための尖兵となったのよ! そう、あたし達は悪の女幹部シスター!」
────────────────────
:摂氏50℃のゴミ箱・『なんかエロくね?w』
:妹推し紳士・『悪の女幹部とな』
:LOVEtea・『じ、人類は終わりじゃ~!』
:新月の鷹・『美人姉妹の幹部だね!』
────────────────────
「今までは魔王様は特別顧問の名を借りて静観していたけれど、今日からは違うわ。自ら配信にガンガン参加して、多くの人間を眷属にしていく予定よ!」
リヴルの作り上げたでっち上げの設定。
しかし、その内のいくつかは事実である事を本人達ですら知らない。
それはともかくとして、配信に来ている視聴者達は大いに盛り上がり、場はほどよく温まった。
「それでは、今から魔王様に改めて意気込みなどを聞いていきたいと思います! さ、我が忠実なる舎弟のラヴィ、用意なさい」
「私がいつお姉ちゃんの舎弟になったの!」
────────────────────
:リヴルちゃんすこすこ侍・『俺もリヴルンの舎弟にしてくれええー!』
:妹推し紳士・『俺をラヴィちゃんの舎弟にしてくれええー!』
────────────────────
文句を言いながらも、ラヴィは予め作成しておいたカンペを取り出してリヴルと入れ替わりに画面の中へと入った。
リヴルがカメラを動かしてルキファスとラヴィが並ぶ画面に押さえる。
「えー、それでは魔王様。魔王様は2000年ぶりに復活なされ、世界を支配するつもりですが、その最終目標は何なのでしょうか?」
これは予め打ち合わせておいた質問であり、ルキファスも既に答えを用意していた。
「しばらくは明確な最終目標は無い。が、先ずは長年の歳月によって朽ちてしまった我々の魔界を復活させるのがしばらくの間の目的だ」
「なるほど。ゆくゆくは魔王軍の再編成も視野に入れているのでしょうか?」
「まあな。だが、今の時代の人間どもは大した相手ではない。武力を持って制する必要も無いだろう。前のように巨大な軍にするつもりは無い」
「それでは、どうやって人間ども······人間達を従わせるのでしょうか?」
段々と渋い表情になっていくラヴィに対して、リヴルは画面外でニコニコの最絶頂を迎えていた。
ルキファスはというと、打ち合わせこそしたものの、己の本心を語れば良いだけなので実に自然に続けた。
「この時代ではインフルエンサーとかいうのが絶大な力を有すると聞いた。有名になり、不特定多数の人間からの支持を集めた者は自ずと支配者になると。つまり、それは武を使わずにこの世を手中に収めるということ」
────────────────────
:芋のポテト・『概ねその通りでございます』
:あああああ・『魔王様のご威光なら必ず超有名インフルエンサーになるかと』
:チェックメイド・『我らのように眷属を増やし続け、世界を掌握いたしましょうぞ』
:ABCエビ・『訓練されたリスナーが多いな』
────────────────────
ルキファスはコメントを読み、頷いた。
「俺はしばらく配信とやらで人間どもの支持を集めていく。手駒を多く従え、その後の事はまたその時考える。だが、そうだな······」
と、そこで。ルキファスは何かを思いついたのか、こんな事を言った。
「我が居城のあったゼグルの深淵。まずはあそこの様子でも見に行くか」
「ちょ、ちょっとストップ! 魔王様、ゼグルの深淵って何?」
予定になかったルキファスの発言にリヴルが困惑したように聞く。
「そんな話初耳なんだけど?!」
「今思いついたからな。あそこは俺が主に暮らしていた場所だ。もし魔族を復活させるなら、あそこを先に見ておかなくてはな」
「ちょ、ちょちょちょいっ! 勝手に決めないでよ! というか、そこどこ?」
────────────────────
:greencha・『これだよ、これ。こういう放送事故が醍醐味なんよ』
:摂氏50℃のゴミ箱・『また打ち合わせ不足かいw』
:ぷーりん・『ルキファスさんカッコいいー!』
:taroZ・『ゼグルって何ぞ?』
────────────────────
ルキファスの唐突な発言と、それに戸惑うリヴルの様子に配信は茶化すような雰囲気が流れていた。
お疲れ様です。次話に続きます。




