3──禁断の地
闇をライトの光が切り裂いてゆく。
「おー! 見て見て! ただの洞窟じゃないよ、明らかに人工の壁じゃんっ。測定通りダンジョンだったね」
「うん。まあ······」
ダンジョンである確信を得て浮き立つリヴル。対して、一層不安気になっていくラヴィ。
「大丈夫かな······ねえ、お姉ちゃん、ちゃんと“傘”は持ってきてるよね?」
「もちろん! どんなダンジョンだろうと油断せずあらゆる事態を想定する。それこそ一流のダイバーだからね!」
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:芋のポテト・『おー、本当にダンジョンだったのか』
:greencha・『洞窟オチはなかったか』
:チェックメイド・『これは期待』
:tissuekenja19・『触手モンスター出ないかな』
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配信を始めてから10分。姉妹は危険に遭遇する事なく順調に進んでいった。
「このダンジョンなんか変わってない? 普通のと比べてめっちゃ綺麗って言うか」
「そう?」
時折立ち止まってはライトで壁や天井、床を照らしていくリヴル。
「ん~。なんて言うのかなあ。こう······コーラスのア~ア~ア~って声が聞こえてくる感じ?」
「神聖な感じがするって言いたいの?」
「そうそう、それっ」
ラヴィにも姉の言わんとしている事は分かった。そのダンジョンはそれまで二人が潜ってきたダンジョンとは何かが違っていた。
ダンジョンとは、各地に残された遺跡、遺構の事を差す造語だ。元は城の拠点やトップのある塔を意味するドンジョンという言葉が、各地に残る遺跡に向けて使われ始めた。
ダンジョンにはモンスターと呼ばれる特殊な生物達が存在する。かつては普通の場所にも居たと言われるが、今はダンジョンにしか存在しない。
現代人達はそんな不思議で不可解なダンジョンに潜っては研究したり、この二人のように動画配信などのネタにするのだ。
「このダンジョン不思議ー。なんか空気違うんだよねえ」
「う、うん。モンスターはまだ居ないみたいだけど」
リヴルもラヴィも、片手にマイフォンを持ち、もう片方には武器を持っていた。
リヴルはサランラップの芯のような筒。ラヴィは拳銃のような形の道具を持っている。
どちらも護身用の武器である。
「にっひっひ。すんごいモンスターが現れて、めっちゃ撮れ高最高な配信になったりして」
「や、やめてよ。そんなの出てきたらすぐ逃げなきゃ」
「冗談! みんなも神回期待だよね?」
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:摂氏50℃のゴミ箱・『wktk』
:あああああ・『祭り会場はここか?』
:sunaip13・『いいから奥いこ』
:新月ノ鷹・『危なかったら帰ろうね」
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「ふっふ~。これはバズりの予感! さっ、行くよラヴィ!」
「ま、待ってよ」
天井は高く、幅も広い。大きな廊下になる。壁や床には二人が見た事もない文字や紋様が刻まれている。
「うわーっ、雰囲気出てきた~! 何これヤバくない?! なんかただ事じゃなさそう!」
「も、もしかして、本当に大発見とかになったりして······」
二人は立ち止まってその壁を照らして観察した。撮影用のカメラでもあるマイフォンからの映像は視聴者達にも鮮明に映像が伝わっている。
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:婚約破棄おじゃる令嬢・『おお?! なんかヤバめな雰囲気?」
:芋のポテト・『誰か有識者、解読頼んだ』
:操之命大神・『これ、確か古代文字とかそういうんじゃなかったっけ?』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『はい神回』
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「ここ、マジで普通のダンジョンじゃないんじゃない?! だって入り口から真っ直ぐ下へ伸びてるもん! こんなダンジョン今まで無かったよ!」
「ね、ねえ、戻ろうよ。もしかしたら歴史的にも価値ある場所かも。事務所に知らせよう?」
「こんなチャンス二度と来ないよ! 進むわよラヴィ! やっとあたし達に運が巡ってきたんだから!」
すっかり興奮するリヴル。それとは裏腹に不安が大きくなるラヴィ。
それまでの経験には無かったタイプのダンジョンに、二人の精神は大きく揺さぶられていた。
「深くなってきたわね」
入り口で使った道具、通称アンカーと呼ばれる中継アンテナを設置するリヴル。
やがて、薄暗い通路は狭くなっていき、また雰囲気が変わり始めた。
「えー、ダンジョン攻略から三十分くらい?経ちました。モンスターが居ません。しかも仕掛けとか別の道も一切ありません。通路は真っ直ぐです」
レポートを欠かさず続けながらリヴルは壁に描かれた紋章やマークを見ていった。
「うーん。なんか雰囲気的には歴史の教科書にある古代文明の遺産的なアレだね」
「うん。これ、“大災厄”前に栄えたっていう文明の意匠に近い気がする」
「マジマジ?! ほんとに、ほんとの大発見?!」
「か、かもっ」
姉妹は顔を見合わせて興奮したように笑った。妹のラヴィも不安より好奇心が勝り始めていた。
さらに進むと、今度は大きな扉が現れた。石で出来ていた。
「うっわ、重そ~。開くかなあ」
「開けた途端、トラップ起動とかないよね······」
二人が近寄ってみるが特に何も起こらない。
胸元ほどの高さに石柱のような閂があったのでそれを横に押してみると、ゴリゴリと石を擦り合わせる音を立てながら動いた。
「気をつけてラヴィ。下ろすよ」
「う、重い······」
二人がかりでその石の留め具を下ろし、そっと扉を押す。
「ふんぬぬぬ······」
扉は重い音を立てて開いた。
中からゾクリとするような空気が出てくる。
「え、え~。第一関門突破です。さらに奥へ行きます」
「み、みなさん、何かあったら警察に連絡よろしくお願いします」
姉妹はさらに進んだ。すると、また同じような扉がすぐに現れた。
「また······」
「開けるよラヴィ」
二つ目の扉を開け、また進む。すぐに三つ目が現れて、それも開ける。
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:greencha・『また門か』
:妹推し紳士・『ラヴィちゃん、頑張れ!』
:芋のポテト・『あれ?内側じゃなくて外側に鍵って変じゃね?』
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「ふい~。五つ目の門を突破。進みます」
「お、お姉ちゃんっ、同接数が500越えた!」
「マジ?! よーしっ、疲れが吹き飛んだ~! ラヴィっ、ここまで来たら行くっきゃない! 目指せっ、最深部!」
緊張と喜びにより、二人は疲れも忘れて速足になって進んだ。通路の内壁にはさらに見知らぬ紋様が張り巡らされていった。
そして、ついに──。
「あっ! なんかそれっぽい扉が!」
「わ、わあ······」
姉妹の前に現れたのは、それまでの扉とは一味違う雰囲気の扉。
ただの石ではなく、白くて表面が滑らかな陶磁器のような質感。そして、大きく描かれたサークル状の魔方陣。
「ね、ねえ。あれって魔方陣ってやつでしょ? 大昔は今とは違って魔法が主流だったっていう時代のやつ?」
「ま、まさか。魔法がそんなに強い訳ないじゃん。そんなのおとぎ話だよ」
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:チェックメイド『大発見キターーー!!』
:sunaip13『え、これマジで大発見?』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『今ツブヤイターで拡散中!』
:あああああ『久々に出会っちまったよ。伝説に』
:摂氏50℃のゴミ箱・『これどっかのスタジオとか?』
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息を飲む姉妹。二人して不安げな顔を見合わせたが、何かに憑かれてるかのように頷きあって扉に手を掛けた。閂は無い。
「うっ、ふんぬぬぬ······」
「うーーーんっ······」
──ズズズズズズ······──
扉がゆっくりと開いていく。
すると──
──ガチャンッ──
「ひゃっ!?」
「きゃあ!?」
何か、バネが弾ける音がした。
お疲れ様です。次話に続きます。




