36──廃坑でバズを
ライトの光が、廃坑の中を照らして奥へと進んで行く。
「えー、こちらのツフォールダンジョンは、かつては何らかの鉱石を採掘していた場所ではないかと言われております! 歴史資料からも何かを産出してたのは明らかです!」
「そんなんじゃ分からないよ。えっと、このツフォールダンジョン周辺の村は絵の具の顔料の名産地であったという記録があり、実際に藍銅鉱や孔雀石が多く発見されています。なので、主に銅を採っていたのではないかと言われています」
「そうそうっ、それが言いたかったのよ!」
そのダンジョンのうんちく的な前情報を述べながら、実況していく。
「えー、それではここで魔王様にも何か豆知識的な小ネタを披露して貰いましょう。魔王様、このダンジョンはどういった目的のために作られたのですか?」
「知らん」
「そ、そうだったのかー! 皆さんっ、このダンジョンが作られた目的は知らないだそうですっ! なんと、そんな新説が······って、コラあー!! 知らんじゃ話になんないでしょうがー!」
ルキファスの解答に怒りだすリヴル。
「ちょいちょーいっ、魔王様ー! さっきちゃんと台本の打ち合わせしたでしょ?!」
「ああ、あれか。興味無いから覚えておらん」
「ぬあにぃー?!」
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:芋のポテト・『台本言うなwww』
:No.35zako・『舞台裏を晒すなwww』
:ABCエビ・『これが噂の魔王様か』
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「お、お姉ちゃん、キャラ崩壊っていうか、本性がさらけ出されてるよっ」
「はっ············コホン······や、やだな~、魔王様ったら~。とぼけちゃって、も~。ここは本当は秘密基地か何かだったから詳しく話せないだけなんでしょ~?」
取り直し笑顔で強引に話をくくって先へと流した。
「ですが! 例え魔王本人がシラを切ってもあたし達は真相を突き止めます! そう、このまま進んで! 真相だけに、深層へと!」
「······」
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:あああああ・『え?』
:芋のポテト・『は?』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『ん?』
:新月の鷹・『今来ました』
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「······小娘」
静まり返った洞窟内にルキファスの無情な声が響く。
「今のは笑うところだったのか?」
「······いえ、真剣に気を引き締めるところよ」
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:No.35zako・『止め刺されてるやん』
:芋のポテト・『流石魔王様。容赦ねえぜ』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『ほら、涙拭けよ······』
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「ええーいっ、あたしの事はいいの! それより、ルキファスさんは本当にここの事は知らないのね?」
「知らん。前にも言ったが、深淵──ダンジョンなど無数に存在するのだ。その全てをいちいち把握などしておらん」
「ふーむ。と、言う事は。ここは特に重要拠点でも何でもないという事ですね?」
「そういう事だ」
リヴルはちょっと考えるように唸ったが、それならそれでと言った。
「なら、魔王様には過疎化地域の視察に来てもらった。という事にしましょう!」
「なんだそれは?」
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:芋のポテト・『過疎っつうか、廃墟って言うか······』
:No.35zako・『設定が更新されました』
:ABCエビ・『りょっ』
:LOVEtea・『気になるんだが、ルキファス氏は演技なのかマジ魔王なのか』
:チェックメイド・『↑マジの魔王様やぞ(ネタ)』
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「ほら、真の支配者なら自分の領土の事は何でも知ってないと。もしかしたら、知らないところで誰か部下がクーデターを起こそうと企んでるかもしんないし、反抗勢力が地下組織を作ってるかもしんない! はたまた、貴重な資源を報告しないで懐に入れる横領部下とかも!」
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:あああああ・『なんだそりゃwww』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『今日も推しが好調のようで幸せです』
:新月の鷹・『何だか壮大だね』
:cityビースト・『いや、その理論はおかしいw』
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「······ふむ。なるほどな」
と、コメント欄に溢れかえるツッコミとは裏腹に、当の魔王は真顔で頷いた。
「一理無くもないな。現に、人間どもの反抗を許したのも、そういった細かい警戒が足りなかったからだ」
「そっ! どーだっ、皆の衆! あたし達神官はそんなとこまで考えているのだよ! はっはっは!」
「えぇ、その神官設定ほんとにやるの?」
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:芋のポテト・『何か新しい設定が生まれてるw』
:No.35zako・『神官は草』
:あああああ・『なんで神官なのに魔王側なんだよw』
:新月の鷹・『しん、かん?』
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「なるほど、小娘。貴様は魔力はもちろん、体力面でも全く役に立ちそうにない脆弱な存在だが、策略や計画などの進言に関してはそこそこ使えそうだな」
「思いっきりバカにしてるやないかーいっ! あ、いや違った。ははーっ、魔王様ー、ありがたき幸せ!」
「お姉ちゃん······」
ラヴィはもはや呆れを通り越して、若干の哀れみの目を向けていた。
配信のためならバカらしい事でも大真面目にやり、全力で取り組む。そんな少女の美学があった。
「しかし、ふむ······」
ルキファスは周囲を見回した。
(銅が産出された廃坑だとか言ってたな。しかし、ドトリトにそんな大規模な深淵があった覚えはない)
しかし──
(逆に、人間どもの資源を奪って隠した場所はあった。確か、塗料の元となる鉱石なども収めていたはずだ)
記憶に違いが無ければ、それはドトリト──つまり、今のセリークリバこと現在地──に作ったと報告を受けた覚えがあった。
人間の使う資源の大半が魔族にとっては不必要であったが、人間の弱体化のために略奪は推奨されていた。
その収納される深淵がいくつか存在していた事をルキファスは思い出した。
(たしか、そこにあれも置いてたような······)
「······リヴルとやら」
「うん? なに、魔王様。珍しく名前呼びじゃん」
「お前の目的は話題作りであったな。その話題とは、お前ら人間どもにとっては価値のある物が見つかれば話題になるのか?」
「そりゃもちろん。お宝とか、太古の遺跡とか見つかればバズるわよ~」
「······ついてこい」
と、ルキファスが歩き出す。
突然、前を歩き出したルキファスにリヴルとラヴィは面食らった。
「ちょ、ちょっと、どうしたの?」
「ルキファスさん?」
二人に構わず闇の奥へと進むルキファス。姉妹は慌ててその後を追った。
「ま、待ってよー! 一人で奥に行くと危ないわよー!」
「モンスターは少ないダンジョンですが、武器も無いのに危険ですっ」
配信はさらに奥へと潜っていった。
お疲れ様です。次話に続きます。




