31──プロゲーマー魔王
──ブオオンッ、ザッ、バシバシバシッ、ブゥンッ、ザッ、バシバシバシッ、ビシッ! ヒュッ、キィンッ、バシッ、ビシッ、ブゥンッ、ザッ、バシバシバシッビシッ──
『グゴオオオッ······!』
「でゅえええええ~っ?! うっそおおー?!」
「す、凄いっ!」
画面の中。強敵のモンスターは断末魔の咆哮を上げてガクリと項垂れた。表示された体力ゲージは尽きていた。
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:あああああ・『すげええええええええ!?』
:操之命大神・『普通にクソうめえwww』
:ぷーりん・『ルキファスさんカッコいい!』
:芋のポテト・『冗談抜きで魔王様TUEEEEEE!?』
:greencha・『ノーミス、ノーダメだと?!』
:摂氏50℃のゴミ箱・『めちゃ上手くて草』
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すっとんきょうな声を上げるリヴル。驚きを隠せないラヴィ。驚愕のコメントに埋め尽くされるチャット欄。
──ボワ~ンッ──
そして、霧となって消える強敵。
その場には、強力な装備やレアアイテムがドロップしていた。
「······はっ!? ル、ルキファスさんっ、そのアイテム全部拾って!」
「これか」
アイテムを回収する魔王。その手からコントローラーを引ったくるように取ってリヴルが性能などを確認していく。
「にゅえええ?! つ、強っ?! なんてイカれ性能してんのこの武器ー!」
「やったね、お姉ちゃんっ」
今まで手に入れてきた武具とは比べ物にならない程強力な装備に姉妹も大興奮していた。
「マ、マジ? ルキファスさん、こんなにゲーム上手かったの?」
横では相変わらず面白くも何ともないという表情の魔王。
そんな魔王を二人はまじまじと見てから顔を見合わせるばかりであった。
「······はっ!? そ、そうだった。今日はもうそろそろ終わりにしようと思ってたんだった。え、えっとー······と、という訳で! みなさーん、今日はこんなに進んでしまいましたー! 続きもいずれは配信する予定ですのでお楽しみに~!」
まだまだ盛り上がるコメント欄を見送りながら、リヴルは配信終了の操作をした。
ラヴィの確認画面でも、配信は無事に終了し、姉妹はホッと一息ついた。
「······いや、それにしても······」
リヴルはじっとルキファスを見た。当の魔王は自分を見つめる少女に怪訝な表情を返すだけであった。
「なんだ、どうかしたのか」
「ルキファスさん、ゲームめっちゃ上手いじゃん。隠してたの?」
と、少し不満気味な質問。対して、返答はアッサリとしていた。
「何も隠してなどない。ゲームとかいう物も今日初めて触った。というか知った」
「もしそれが本当ならとんでもない才能なんですけど······」
「もしかしてだけど、ルキファスさんって実は記憶喪失になった超有名プロゲーマーだったりして······」
本来ならルキファスに魔王らしいコメントやリアクションをしてもらいながら面白おかしく盛り上げる配信を作っていく予定であったが、全く予想していなかった方向で配信は色めき立った。
もちろん悪い結果ではなかったのだが······当初の予定とは大きく違っていたのは間違いない。
「まあ、でも。配信盛り上がったし、いっかぁ」
リヴルは少し複雑な思いもしたが、彼女らの目的はもっと有名になって人気になること。目先の目標で言えばバズる事である。つまり、配信自体が成功すればそれで十分なのである。
「でもお姉ちゃん。ルキファスさんってあんなにアクション系上手かったんだから、他のゲームもやって貰えばウケるかも」
「うーん。まあ、そうかもしんないんは、しんないんだけどー······」
苦虫を噛み潰したような表情で考え込むリヴル。
「でもなー。あたし達は別にゲームの上手さを売りにしてる訳じゃないし。どれかって言うと皆でワイワイ楽しむ感じであってガチ勢プレイが中心じゃないし。それよりも個性というか、キャラというか、そういうので推し進めて行きたい感じだし······第一これはあたし達姉妹のチャンネルであってルキファスさんはあくまでゲストだしなぁ······」
リヴルには彼女なりの考えがあるようで、意外にも安易な判断には至らなかった。
それは的を得た考えでもあった。配信者に高いスキルを求める需要もある一方で、そういうのではなく唯一無二の個性などを求める需要も多いのだ。
むしろ、プロやプロ顔負けのゲーマーも配信活動をしている昨今では、ゲームの上手さだけではインパクトが足りないのも事実であった。
「うん。ルキファスさんにはちょくちょくゲーム配信をお願いしよう。でも、基本的には魔王キャラで売りましょう。それに、あたし達の本業はゲーム配信よりもダンジョン配信なんだから」
「へー。お姉ちゃんにしてはまともな答えだね」
姉にのしかかられ、背中のツボを思いっきり指圧されるラヴィが「ギブっ、ギブ!」と叫んでいる光景を、ルキファスは不思議そうに眺めた。
そんな配信の次の日の朝食の時間であった。
「どひゃああー!?」
「わあっ!?」
突然、奇声を張り上げたリヴルにラヴィが仰け反る。仰け反った反動で椅子から転げ落ちた。
「いったたた······もうっ、いきなり大声出さないでよ」
「ちょ、ちょちょちょちょっ、ちょちょっと見てみてよっ、ラヴィ!」
リヴルが手にしていたマイホを見せると、ラヴィも思わず声を裏返した。
「嘘っ?! 登録者が9000人も増えてる?!」
「な、なんでっ、なんでっ?!」
突然の登録者上昇に困惑する二人。
すぐに自分達のチャンネルを開き、直近二日の配信アーカイブの再生数を確認した。
「え、え~っと。いや、再生回数は多いけどそんなに激増って訳でもないし······」
「あっ! お姉ちゃんっ、これ!」
と、そこで。自分のマイホでも確認していたラヴィが声を上げた。
「見てっ、今あたし達のタグと魔王タグで調べたらこんなのが」
「切り抜き動画? 『ダイバー界にヤバい魔王現れる』『激辛魔王降臨』『ガチ感ヤバい魔王様』『名の知れたプロか?魔王ライバー』?」
それはユークリに上げられていた3分から5分程度の短い動画群であった。視聴者の中の何人かが、配信で流れた場面のいくつかを切り抜いて編集し、投稿した物だ。
動画を投稿した者の中には、新人ダイバーらの活躍を定期的に切り抜いて紹介している後援者的なファンも居り、そういった者が投稿した動画は一定数の人間に情報を届けるのだ。
「そっか! 切り抜き動画でバズってあたし達のチャンネルに来てくれたって訳ね!」
「うん! やったね! 凄い大バズだよ!」
その場で手を取り合ってピョコピョコ跳び跳ねる姉妹。肝心のバズをもたらした立役者である魔王はそんな二人を奇異な目でチラリと見た後、すぐに激辛ラーメンをすすった。
「うむ。美味い」
「この機を逃す事は出来ないわ! こんな大チャンス一生に一度あるか無いか!」
小さなホワイトボードをバンっと叩くリヴル。そこには赤いマジックで『ビッグウェーブ!やるなら今っきゃない!』と力強く書かれていた。
三人は例のごとくオフィスに集まり、今後の作戦を立てていた。
「一週間経たない内にあたし達は登録者数の三倍近いゲインを成し遂げたわ。これはもう勢いありまくりだわ。この機を逃さず、一気にバズを畳み掛けるわ!」
「それは分かるけど、何をするの?」
「プロデュースよ!」
リヴルはビッとルキファスを指差した。
「ルキファスさんを本格的にプロデュースするの!」
かくして、この日の会議がスタートした。
お疲れ様です。次話に続きます。




