30──魔王の片鱗
前回と同じく、実在のゲームの内容と酷似した設定の描写があります。知らない方には分かりにくいかもしれません。大変申し訳ないです。
──ビシッ、バシッ、ビシッ、ボワ~ンッ──
「えええええええっ!? うっそー!?」
「凄いっ······」
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:芋のポテト・『ファー?!』
:あああああ・『魔王様TUEEEEEE!』
:ぷーりん・『凄いっ!』
:摂氏50℃のゴミ箱・『これは凄い』
:taroZ・『普通にうめえじゃんwww』
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画面の中で爆散する強敵。リヴルが何度やっても倒せなかった相手は霧となって消えた。
ルキファス操る勇者は凄まじい反応速度で全ての攻撃を躱し、驚異的な命中率で相手の弱点を射貫いた。
一瞬。刹那の間。そのタイミングで避け、的確に相手を撃つ。ルキファスは軽々とそれをやってのけた。
操作の妙技と言うより、並みの反射神経や動体視力では出来ない芸当であった。
「······はっ!? お、おお! 流石は魔王様! いや~、あたしも本当は倒せたんだけど、見せ場をあげようと思ってねー! うんうん、凄い!」
「······お姉ちゃん、悔しいの?」
足をつねられたラヴィが飛び上がる。
「あっははは! さっ、ルキファスさん交代ね。また後でやらせてあげるから」
「別にやりたくはない」
ルキファスはつまらなさそうにコントローラーを返した。
リヴルは悔しそうに唇を歪めて尋ねた。
「どうやってあんなに避けたり、あんなに正確に矢を射てたの?」
「どうも何も、普通にやっただけだ」
もちろんそんな説明で納得のいく訳がない。
そう、リヴル達のような現代人は知らないが、魔族には魔眼と呼ばれる目を持つ者が存在する。人間のそれとは比べ物にならないほどの動体視力だ。もし音に模様や文字が付いていたなら、それを正確に読み取れるほど。
そんな魔眼を持つ魔王にとっては、ゲーム内の映像は全てフレーム毎に捉えられる。
「魔王様のビギナーズラックによって先に進めるようになりました! さあっ、魔王様お疲れ様! ここからはあたしが引き継ぐわね」
「好きにするがいい」
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:新月の鷹・『あの動き、慣れてるというより、純粋に避けられてる感じだった』
:摂氏50℃のゴミ箱・『既プレイ勢か?』
:芋のポテト・『だったとしても上手いわ』
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思わぬ魔王プレイにコメント欄は一時沸き立ったが、すぐにその先へと興味は運ばれていつた。
「はいっ、チュートリアルダンジョンを全てクリアしました! いや~、サクサクだね! やっぱあたしってゲームの天才かも!」
完全所見ではないとはいえ、リヴルは極めてテンポ良く進め、ストーリーも展開していった。
いくつかのイベントを終えた後、主人公である勇者の行動範囲も広がり、広大な大地へと進む。
いくつかの敵を倒し、さらに勇者の能力や装備も充実させていくリヴル。
「おお~っと! 宝箱です! きっとすんごいお宝があるに違いない! どんな物が入ってるんだろう!」
その実況や説明はお世辞にも巧妙とも達者とも評価し難かったが、明るく楽しむ様子は見る者聴く者をも明るい気持ちへとしていく。
よく喋り、よく驚き、よく喜んでは、よく笑った。
リヴルのそんな姿を、魔王は不思議そうに見ていた。
そんな配信が二時間ほど続いた頃であろうか。
「よっし! ライフも増えたし、装備も強くなってきたわ。次は~······あっ、怪しい所はっけーん!」
マップを探索中、怪しい場所を見つけるリヴル。朽ち果てた巨大な遺跡だ。
その遺跡へと入る。
が──
「うわっ! なんか強そうな敵を発見! しかしあたしもパワーアップ済み! かる~く捻ってやりますか!」
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:婚約破棄おじゃる令嬢・『あ』
:taroZ・『あっ』
:芋のポテト・『そいつはアカン』
:操之命大神・『あー』
:greencha・『あ······』
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その敵を一目見た既プレイ視聴者達はその後の展開を察して言葉を失った。
「とおりゃあ~!」
勢いに乗ったリヴルは果敢にそのケンタウロスのような敵に挑んだが──
──ズシャアッ! ドサッ、GAME OVER──
「え、え、え······えええぇ~!? い、一撃!? えっ、だってライフだって初期の三倍くらいあるのに?!」
プレイヤー達には最早『強敵』の代名詞さえ付けられている敵によってリヴルは五秒程で敗北した。
剣と弓を使う敵であるが、その一撃一撃が即死級のモンスターで、既プレイ勢には第二のトラウマを植え付ける相手だ。
「い、今のは当たりどころが悪かったのよ! たまたま頸動脈とかに当たっただけ!」
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:芋のポテト・『頸動脈ならしょうがない』
:あああああ・『そんなシステムねえよ!』
:新月の鷹・『強いもんね······』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『これは仕方ない』
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あまりにも唐突な死。勝負にすらならない敗北。
そこで引き下がるような性格ではないライバー少女。
「そっちがその気なら! あたしもこの貴重なボムアローをお見舞いするわ!」
──チュドーンッ、ズシャアッ、ドサッ──
──ビシッ、バシッ、ドゴオッ、ドサッ──
──ザシュッ、ザシュッ、ズシャアッ、ドサッ──
──GAME OVER──
「うぅ、うええぇ~ん······反則、反則よ~。近距離だと一撃で殺られて、遠距離にも矢を飛ばしてきて······後ろに回っても距離を詰められる······シールド連打もやってみたけど、あいつの攻撃重すぎ······たーおせ~ないよ~~······」
「ドンマイ、お姉ちゃん······」
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:greencha・『うん、次行こっか』
:taroZ・『もうスルーしようぜ』
:芋のポテト・『泣かないで』
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「······お姉ちゃん、貸して」
と、ここで見かねたラヴィが交代してコントローラーを構える。
「私もやってみる」
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:妹推し紳士・『おおおおおおおっ! ラヴィちゃんの出陣じゃあああ!』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『お姉ちゃんの仇を打ってくれー!』
:新月の鷹・『頑張って!』
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この二時間の間、ところどころ交代でプレイしていたラヴィ。そのセンスは姉よりも良かった。
視聴者らの期待も高まり、ついに始まる死闘。
──ビシッ、ブゥンッ、ザッ、バシバシバシッ、ビシッ、ブオオンッ、シュッ、カアンッ──
「お、おおっ! ラヴィうまいじゃん! やれー! そこ、ラッシュよー!」
「うっ、シールドがっ······」
──ブオオンッ、ビシッ、ズシャアッ、ドサッ──
GAME OVER
「惜しい~! でもやるじゃんラヴィ! 半分まで減ってたわよ!」
「うん、やっぱり強いよこの敵」
残念そうにリヴルへとコントローラーを返すラヴィ。リヴルよりも圧倒的に上手く立ち回ったが、やはりほとんどの攻撃が一撃で死をもたらす戦いは難しい。
コメント欄も彼女の健闘を讃え、その結果を惜しむ声で溢れた。
「うぅ、でも悔しい~。けど、ここで詰まってても仕方ないもんね。残念だけど今日はこのくらいにしとこっかあ」
「······」
「あ、ルキファスさん。すっかり忘れてた」
横でしかめっ面で見守っていたルキファスにリヴルが気づく。
「ごめん、ごめん。ついエキサイトしちゃってさー。この敵強すぎて」
「······よくは分からんのだが、要はあの攻撃をジャンプで躱して、一撃も食らわずに攻撃を入れれば良いのだろう?」
「それが出来ないから瞬殺されとんのやろがいっ!」
「······貸してみろ」
ルキファスがコントローラーを取った。
お疲れ様です。次話に続きます。




