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29──ゲーム実況

ある有名ゲームの内容と酷似した設定を明記せずに書いております。知らない方には少し分かりにくい描写があり、申し訳ありません。

 



 ──ピロピロピロピロピロ······ピロンッ──



 ゲームプレイ開始からおよそ10分ほど。ルキファス操る勇者がいよいよ広大な世界へと駆け出した。


「とりあえず、このアクションボタンでアイテムを拾いまくって」


 指示された通りにアイテム収集するルキファス。途中で『木の棒』というアイテムを手に入れ、勇者が手に持った。


「なんだこれは」

「あっ、それは武器よ! やったね、これで何時でも好きなだけ暴れられるわねっ」

「これが武器?」


 あまりに原始的な武器に魔王は苦い顔をするのみであった。


「あっ! 早速敵よ! ルキファスさんっ、あそこのゴブリンを倒さなきゃ!」

「あれか」


 それらしきモンスターが近くを歩いている。それに駆け寄る勇者(魔王)。


『ギィィッ!』

「死ぬがよい」


 ──バシッ──


 正面から一撃を入れる魔王。しかし──


『ギャイイ!』


 ──ドカッ、ビシッ──


「あっ、反撃されてるわ! 早く倒さないと!」


 ルキファスは一撃入れただけで操作を止めてしまい、その後は首を傾げながら敵になされるがままとなった。


 ──GAME OVER──


「あちゃ~。何やってんのルキファスさん~」

「なぜあのゴブリンは一撃で死なんのだ」

「そりゃ木の枝だからよ。ちゃんとした武器じゃないと」

「くだらんな」


 ルキファスは冷たく見下した目を向けた。


「頼るべきは己の力のみ。武器の強弱に事の行く末を賭けるなど人間らしい」

「そんな事言って負けちゃってんじゃん」

「勇者が死んだのだから悪くはない」

「だ、駄目だこりゃ······」

「お姉ちゃん、ドンマイ······」



 結局。


 ルキファスにはゲームその物が相性が良くないという結論を出した姉妹。


 リヴルの思いついた企画、『魔王様にRPGやってもらおう』は『魔王様とRPGを楽しもう』へと変更される事となったのであった。



「うぅ。これ、夜の配信大丈夫かしら。あたしがプレイしててもルキファスさんは横で『勇者殺せ!』って言うだけなんじゃ······」

「あり得そう······」




 そして、夜となった。




 既に夕飯は終わり、配信スタンバイを終えた三人。夕食と就寝の間のこの時間帯こそ、ライバー達のゴールデンタイムであり、一番の激戦区であると言っても過言ではない。


「それじゃあ始めるわよ。いいわねルキファスさん。ルキファスさんは横で盛り上げ役やってればいいだけだからね? 変な事したり言ったりしないでよ?」

「それならばここに呼ぶ必要があるのか?」

「それはそれっ、これはこれ!」


 やや強引な理論で進めるリヴル。


「ま、いっか。あたしもこのゲームちゃんとやりたかったし」

「他の実況者さんのプレイ動画ならいっぱい見たけどね」


 そして、OnAir。



「いえ~いっ! 皆様ごきげんよう! ラブリブチャンネルのお時間です! 今日のエスコート役はアレグリア所属のあたしリヴルと~」

「同じくアレグリア所属のラヴィと······」

「特別顧問の魔王ルキファスだ」


 打ち合わせ通りに適切なタイミングでセリフを述べたルキファスに、リヴルは満足そうにウィンクした。


「はいっ! という事でやってまいりました。いや~、まさかこの面子で勇者ゲームをやることになるとは。世界は平和ですね!」


 ────────────────────

:芋のポテト・『魔王様、今夜もご機嫌麗しゅう』

:婚約破棄おじゃる令嬢・『おっすすー!』

:摂氏50℃のゴミ箱・『今日はリアタイ出来たぜ』

:新月の鷹・『こんばんわ~!』

:ぷーりん・『魔王様ー! 素敵ー!』

:操之命大神・『靴下も片方脱いで待ってました!』

 ────────────────────


 溢れるコメントにラヴィも大きく頷く。


「みなさん、今朝お知らせした魔王様のゲーム実況に関して言っておかないといけない事がありまして。ルキファスさんはゲームが苦手みたいなのでプレイは私達姉妹がやります」


 ────────────────────

:あああああ・『魔王様ゲーム下手なんかw』

:taroZ・『魔王が勇者になると聞いて』

:芋のポテト・『魔王様、しっかりしてくれ~』

:妹推し紳士・『ラヴィちゃんのプレイ見たいでござる!』

 ────────────────────


 予定とは違う形になったものの、それでも配信は盛り上りを見せていた。


「それじゃあ、始めてみよう! 今からやるのは~、みんな大好き『プレスオブザマイルド』こと“プレマイ”よ!」


 ────────────────────

:摂氏50℃のゴミ箱・『おおおおおー!』

:あああああ・『珍しく旬のゲームだ!』

:新月の鷹・『楽しみっ!』

 ────────────────────


「実は昼間にルキファスさんともちょっとプレイしたんだけどね。ただ、魔王様的には勇者を手助けするのが我慢ならなかったみたい」


 ────────────────────

:芋のポテト・『ならしょうがないwwwww』

:taroZ・『まあ、確かにwww』

:ぷーりん・『なんか可愛い(笑)』

:操之命大神・『やっぱ気になるな』

 ────────────────────


 ルキファスのテストプレイは無かった事とされ、ニューゲームで開始するリヴル。


「な、なんて綺麗な映像なんでしょう! こ、これは凄い! この綺麗な映像は正に凄い!」

「お姉ちゃん、もうちょっと具体的に······」


 相変わらず下手な実況に、コメント欄はいじる言葉に溢れた。


「いいのよっ、素直な感想が一番じゃん!」


 序盤は既にルキファスのテストプレイで予習済みだ。リヴルはサクサクと進めていった。


「おおっと! 初めての住人を発見! 何やらただ者ではなさそうです!」


 そうやってゲームを順調に進めていった。

 何と言う事のない、極めて無難で平凡なゲーム実況。


 しかし──


「うっ!? あ、あれはまさか!」


 ゲーム序盤に現れる強敵。多くのプレイヤー達を初見殺ししてきたトラウマの敵が現れた。


 ──チュドーンッ、ドサッ、GAME OVER──


「ぬあんですってえ!?」


 呆気なくやられ、ゲームオーバーとなるリヴル。


「ぬ、ぬぐぐっ! 次は負けない!


 ──チュドーンッ、ドサッ、チュドーンッ、ピピピピピッ、ブオンッ、チュドーンッ──


 ──GAME OVER──


「つ、強いぃ······」

「お姉ちゃん、あれは避けて進まないと」


 その強敵は厄介だが、無視しても進める。本来なら相手にせずに進むのが正攻法である。


 が、しかし。


「ここで逃げてはゲーマーの名が廃る! とおりゃあああ!」


 撮れ高や話題性のために、リヴルは果敢に挑んだ。



 しかし······。


 ──チュドーンッ──


 GAME OVER


 その努力虚しく全く歯が立たない。


「ぐすっ······」

「お姉ちゃん、ドンマイ」


 ────────────────────

:リヴルちゃんすこすこ侍・『泣かないで』

:新月の鷹・『仕方ないよ』

:ぷーりん・『このガードナー強いもんね』

:芋のポテト・『お前はよくやった。もう休め』

 ────────────────────


「······おい」


 と、そこで。

 これまで沈黙のままに見守っていたルキファスが口を開いた。


「なぜさっきから負けてるのだ?」

「強いから勝てないの!」

「よく分からんが、あの光る攻撃を避けて弱点の目玉を攻めれば良いのだろう?」

「それが出来たら苦労しないよー!」

「······貸してみろ」


 予想外な事に、そこでコントローラーを取るルキファス。


「えっ、ルキファスさんがやるんですか?」

「ああ」


 頷くルキファス。


「いつまで経っても何も変化が無いのでな。見てられん」

「ぐ、グサッ! い、今のは効いた······」


 ────────────────────

:あああああ・『辛辣で草』

:芋のポテト・『おおっ、魔王様の出陣じゃー!』

:ぷーりん・『魔王様~! 頑張って~!』

:taroZ・『キターーー!』

 ────────────────────


 コントローラーを構える魔王に、コメント欄は盛り上がった。




お疲れ様です。次話に続きます。

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