18──魔王とダンジョン配信
ダンジョン入り口の近辺は照明器具などが設置され、明るかったが、そこから奥へ一歩進めばもう暗闇の世界だ。
「それじゃあダンジョン配信の準備するからね。ラヴィ、武器の点検を」
「もうしてあるよ」
二人が風変わりな道具を出す。リレーバトンのような筒と、拳銃に似た武器。
「それは何だ?」
「何って武器よ、武器。ダンジョン入るのに丸腰って訳にはいかないじゃん」
「武器?」
ルキファスがリヴルの筒を見下ろす。
「貴様はそんなチンケな棍棒を使うのか」
「これは棍棒じゃなくてマルチワンド! 知らないの?」
「知らん」
「簡単に言うと、ちょっとした魔法の弾とかシールドが出せる道具だよ」
「ほう」
魔法の杖と似た物かと頷くルキファス。
「それで、そっちの変わった鎌は何だ?」
「これは鎌ではなくて銃です」
「ジュウ?」
「えっと······簡単に言うと魔力で弾を発射する武器です」
「ほーう」
そんな武器もあるのかとルキファスは感心した。
「ルキファスさん、モンスターと遭遇しても大丈夫だよ。あたしらが倒すから」
「なに?」
これは妙な話であった。人間は元はと言えば敵。そして、モンスターは野生であれば魔族にも攻撃してくるとは言え、魔族にとっては家畜のような存在。それから守るとは言われるとは。
「さて、と。これで配信開始!」
マイフォンを操作していたリヴルがルキファスとラヴィを振り返る。
「それでは張り切っていきましょう! ラヴィ、いくよ!」
「うん!」
リヴルの持つマイフォンに向かって姉妹が元気よくピースする。
「いえーいっ! アレグリア所属の新鋭ダイバーリヴルと~······!」
「妹のラヴィですっ」
「今日も最高にキラキラな配信をお届けするよ~!」
二人が活気に満ちた声でカメラに向かって挨拶をする。ラヴィの持つマイフォンの画面にはもう訪れている視聴者のコメントが流れていた。
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:新月の鷹・『登録者1万人っ、おめでとー!!』
:チェックメイド・『いえ~いっ!』
:taroZ・『キターーー!』
:芋のポテト・『1万人おめでとう!!』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『1万人おめでとー!!』
:妹推し紳士・『1万人突破!!おめでとー!』
:あああああ・『祝!10,000!!』
:greencha・『1万おめ!!』
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高速で流れる挨拶の時間は、姉妹を祝う言葉で溢れた。
リヴルが今にも飛び上がりそうな喜びに震えてから大きく頷く。
「ありがとー!! これも何時も応援してくれる皆のお陰だよ! 本当にありがとう! 」
「ここまで頑張ってこられたのも皆さんのお陰です! お祝いコメントありがとうございます!」
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:芋のポテト・『良い最終回だった』
:操之命大神・『今までありがとう!』
:摂氏50℃のゴミ箱・『感動の最終回だった!』
:あああああ・『リヴル先生の次回作にご期待ください!』
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「こらーっ! 勝手に終わらせるなー! あたし達はまだまだ活動してくから! ここはほんの通過地点! だから今後も応援よろしくね!」
「これからもよろしくお願いいたします」
顔も見えない多くの人間と喜びを分かち合う二人の姉妹。その様子をルキファスは奇妙な目で見ていた。
(登録者というのが増えるのはそれほど喜ばしい事なのか。)
彼には、彼女達の感情が理解出来なかった。
「えー、それでは改めまして皆さん! 本日もダンジョン配信していきまーす! 場所はおなじみアトミーホールのダンジョン!」
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:tissuekenja19・『ポロリ、パンチラ期待』
:新月の鷹・『頑張って!』
:芋のポテト・『実家のような安心感』
:婚約破棄おじゃる令嬢・『今キタキリスズメ』
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「そう、何時ものダンジョン。だけど~っ、今日は特別企画! そう、あの魔王ルキファスさんが来てるの! 魔王様自らがダンジョンの視察に来ました~!」
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:芋のポテト・『ファーッ?!』
:あああああ・『な、なんだってー?!』
:greencha・『魔王様ー!!』
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リヴルがマイフォンのカメラをルキファスに向ける。
「えー、それではルキファスさん、二千年ぶりに帰宅した感想をお願いします!」
リヴルとの予てよりの打ち合わせたセリフであったが、ルキファスは怪訝な顔を浮かべた。
「ここは俺の居城ではない。深淵──貴様らはダンジョンと呼んでいたな。ダンジョンなど無数にあって一々覚えてもないわ」
「ちょっとー! ちゃんと魔王様として相応しい発言してよー!」
「相応しいも何も、よく覚えてもおらんものは覚えておらん」
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:婚約破棄おじゃる令嬢・『ダメじゃんw』
:操之命大神・『打ち合わせ不足』
:taroZ・『放送事故かな?』
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「えー、ともかく! 魔王様の帰還に変わりはないよね! それでは魔王様自らダンジョンについて感想を述べてもらいつつ、探索していきましょー!」
こうして、ダンジョン配信が開始された。
ライトで辺りを照らしながら、リヴルがルキファスにマイクを向ける。
「それではルキファスさん。ズバリ、ダンジョンを作った理由を教えてください」
「深淵の成り立ちが知りたいのか?」
「まあ、そんなとこ」
朽ちかけた遺跡を進む一行。先頭は嫌々ながらラヴィが務めている。
「元はと言えば深淵は我ら魔族の生まれた世界でもある。貴様ら人間の祖先が地上に栄えていたように、我らは地下で繁栄していた」
「ほうほう! では、地底人ってやつですか?」
「そのチテイジンとやらは知らんが、貴様らを地上の民とすれば、魔族は地下の民と言える。我らは魔力の濃い地の奥深くか、自然の力に閉ざされた場所を好む。と言うより、生まれがそういう環境だから、そっちが馴染むのだ」
「なるほどー! つまり、このダンジョンこと地下世界はあたし達人間から見ると“洞窟”とか“ダンジョン”になる訳ですが、ルキファスさんから見ると普通の生活空間なんですね!」
「そうだ。そしてそこをそのまま住居として改良していったのだ」
「つまり、ダンジョンは基地や要塞ではなく、単なる魔族の都市って事ですね!」
「その通りだ。少しは理解能力があるようだな」
「馬鹿にすんなーいっ!」
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:リヴルちゃんすこすこ侍・『煽られてるw』
:greencha『ガチでそれっぽい事をそれっぽく言えるのは才能よな』
:taroZ・『魔王様って役にはまってるよな』
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「やっぱりダンジョンと言えば、勇者なども攻めてきたのでしょうか?」
「いくつかの重要拠点はな。だが、それは勇者に限らず人間の兵士なら誰でもそうだった。もっとも、大抵の場合は返り討ちにしてやったがな。ククク」
「なんと恐ろしい! みんな、やはり魔王は恐ろしい存在でした! そんな魔王が再びこのダンジョンに君臨するのでしょうか?! どうなるあたし達!」
「こんな重要でもなんでもない深淵になど君臨するか。第一、部下が一人もおらんではないか」
二人がそんなやり取りをしていた時であった。
「あっ、モンスター」
と、ラヴィが声を上げた。
お疲れ様です。次話に続きます。




