14──未來の世界
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:摂氏50℃のゴミ箱・『で、厄災前の石板とかに魔王ルキファスって名前があるんだよな』
:sunaip13・『神話に出てくる魔王の名前だろ?英雄達が倒したとかなんとか』
:ブラック社畜・『なんか首切ったら鳥になって消えたとか、聖剣を刺したら石になって砕け散ったとか、死んだら死体が消えたからその場所ごと封印したとか色んなオチがあるよな』
:taroZ・『はえー。お前ら詳しいな』
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勝手気ままに流れていく情報のレーン。
ルキファスはその一つ一つを注意深く追っていった。
(なるほど······)
そして彼はおおよその状況がおぼろ気ながら把握出来てきた。
まず、この妙な世界はやはり睨んだ通り未來だった。それも、二千年ほど経過した遥か未來。
この時代の人間達がなぜ自分の事を恐れないのか。そもそも、なぜ知らないのか。作り話の中の登場人物くらいにしか思っていないのか。
それは、厄災と呼ばれる事変が起こった事と、予想以上の年月が経った事によって『魔王』の存在がきちんとした形で後世に残らなかったからだ。
悲しい事に、かつて世界を震撼させた魔王も、それを命懸けで倒した英雄達も、今では神話という名の『おとぎ話』の中にしか残っていないのだ。
(これはいい)
それはルキファスにとって好都合であった。
人類は今、最大の天敵を目の前にしてるにも関わらず、それを倒そうとするどころか警戒すらしていない。むしろ、エンタメ要素として楽しんでるという狂気だ。
これならば弱った魔力を持ち直すまで誰の襲撃も受けずにゆっくりと待てばいいだけだ。復活してからの最大の懸念であるカウンターアタックは可能性がゼロになったのだ。
「て訳よ魔王様。もーう、本人ならこのくらいの予備知識無いとダメじゃ~ん」
横で茶化してくるリヴルをルキファスは横目に見てほくそ笑んだ。
(しかもこれは思いがけず好都合な展開になっているようだ)
自分の事を本物の魔王だとは誰も思っていない。
ならばルキファスがとる行動は一つ。
本当に本物の魔王であるという事を隠せば良いのだ。そうすれば完全に力を取り戻すまで誰にも攻撃されない。
かと言って魔王である事を周囲にバレないように偽って振る舞うのはルキファスの性格的にも難しい。
彼は嘘や演技が下手なのである。『僕は魔王なんかじゃありません』とは口が裂けても言えないだろう。
そこへくると、今の状況は全て好都合だった。
素のままで、自分の事を魔王だと言っても周囲の人間が『はいはい、そうですか』くらいにしか捉えていないのだ。
誰も倒そうとはしない。逃げ隠れもしなくていい。そのままでいても問題ない。おまけにこの時代の人間勢力の情報や文化を知るための足掛かりとしての拠点と利用価値のある人間も手に入った。
「ククク。やはり俺は運命そのものに王として選ばれてる訳か」
「まーた変な事言ってる。でも笑顔まで邪悪な感じしててすごいねー」
「わ、私はちょっと怖いかも」
(よし、この愚か者達は誰一人として己らの愚行に気づいておらんようだ。俺が力を取り戻すまでせいぜい利用させてもらうとするか)
「シチョーシャ?と言ったか。貴様らはなかなか優秀な文官達のようだ。さっきまでのように俺の質問に答えろ」
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:操之命大神・『態度悪っwww』
:チェックメイド・『いきなり横柄で草』
:ぷーりん・『はい!』
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ルキファスは様々な質問を投げ掛けた。
ここは何と言う国か。人口はどのくらいか。兵力はどんなものか。今でも勇者のような人間が居たりするのか。
視聴者達は『我らシャラヤの民でごわす』『人口は八千万程です魔王様』『とりあえず戦闘機と戦車、最近はドローンが主流』『勇者とは現代の不審者である』などなど、ルキファスの知りたい情報のいくつかを提供した。
(ふむ。やはり世情は大分様変わりしてるようだな。となれば、人間どもの戦力は念入りに調べてからでないと事は起こせんな)
ルキファスの中でようやく活力のような物が湧いた。
復活してから今までは混乱や驚きが多くを占めていたが、現状が把握出来た今はどう人間どもを服従させるかという邪悪な思考で一色であった。
だが、自分の想像もし得なかった発展を遂げた人類相手の戦争は魔王として心踊るものがあった。既に聖戦は始まっているのだ。二千年前の魔王対二千年後の人類。それが彼の体に流れる魔の血をたぎらせた。
「よし。視聴者ども、今宵はこのくらいでいい。これからも俺に服従すれば貴様らにはそれ相応の地位を与えてやろう」
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:芋のポテト・『ははーっ、魔王様!』
:摂氏50℃のゴミ箱・『かしこまりました!』
:あああああ・『ありがたき幸せ!』
:taroZ・『了解です魔王様!』
:社畜ブラック・『魔王軍に転職してえ』
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「ちょいちょいっ、勝手に終わらないでよ」
「でもお姉ちゃん、今回は二時間枠しかとってないからちょうど良いんじゃない?」
「む。それもそうね。じゃあ、残った時間はあたし達の活動記録の定期報告にしよっか!」
退席して、姉妹から離れて窓際に立つ魔王ルキファス。彼は爛々と光る眼で外に映る夜景を眺めていた。
(夜の中にこれほどの光を灯すとは。なるほど、相当に文明が進化したようだな)
これほど発達した文明なら軍事力もそれ相応の物だろう。そこへさらに勇者のような人間達が加われば面白い戦いになるに違いない。
(まずは体力と魔力の回復をしつつ、しもべ達を探すか。もっとも、生きてたならの話だが)
魔族なら二千年の時間も生き長らえるのも可能だ。かつての部下もこの時代に居るかもしれない。
(問題は探す方法だ。さて、どうするか)
「それじゃあ、時間になったから今日の放送はおしまいっ! みんなばいばーいっ、お休み~!」
「お休みなさーい」
カメラに手を振り、パソコンをいじる姉妹。配信が終了した。
カメラとマイクを片付けながら、自身のマイフォンを見てリヴルが驚きと喜びの声を上げた。
「あっ! ツブヤイターですごいビュー数伸びてる! バズってる!」
「ほんとだっ、かなり話題になってる······!」
「ふっふ~ん! ほーら言ったでしょラヴィ。あたしに任せなさいって」
「う、うん」
そこで不安げな表情に戻るラヴィ。
「でも、ルキファスさんはどうするの? まさか、本当にここに泊めるの?」
「もちろん! この配信はウケるわ! これからもルキファスさんにはじゃんじゃか出演してもらわないと!」
「でも、私達の寝室はベッドが二つしかないし」
「同じ部屋に寝かせる訳ないじゃんっ。ここで寝て貰うわ」
「ここに?」
まだ窓際に立つルキファスにリヴルが声をかける。
「ねえ、ルキファスさん。とりあえず布団一式ここに持ってくるからさ、この部屋で寝てもらっていい?」
「ああ」
ルキファスは上の空で返事した。
いそいそと寝具を用意する姉妹。
魔王は一人、そんな事には関心も寄せずに夜景をただ眺め続けていた。
お疲れ様です。次話に続きます。




