13──失われた歴史
ルキファスの登場によって配信のコメント欄は盛り上がり、様々なコメントが流れていく。
それらをリヴルとラヴィは確認しながら進行していく。
「はいはーいっ、みんな聞きたい事はたくさんあるだろうから、事の成り行きをあたしから説明しちゃいまーす!」
リヴルは昼間のダンジョン探索と、その直後に遭遇したルキファスの事。そして、ここまで来る間にあったルキファスのおかしな挙動の数々を語った。
山で遭難して記憶喪失となり、自身を魔王だと思い込んでる面白キャラだという風に。
ルキファスの事を本物の魔王とは知らず······。
「て訳で! 少なくとも自分の事を魔王ルキファスだとマジで思ってるのだけは確かなのっ。つまりっ、本物の魔王様ってこと!」
────────────────────
:芋のポテト・『いや、そうはならんやろ』
:No.35zako・『誘拐やん』
:チェックメイド・『警察行きなさいwww』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『俺もその手を使えばリヴルちゃん家にっ······』
:ぷーりん・『どこかのライバーさん?』
────────────────────
「えー、では魔王様ご本人からの言葉をお聞きしましょう。ルキファスさん、お名前をどうぞ」
────────────────────
:ブラック社畜・『名前言ってるやんけ!』
:あああああ・『大事な事なので本人にも言わせます』
────────────────────
ルキファスはカメラのレンズをじっと見つめながら口を開いた。
「ルキファスだ。少し前まで深淵の最下層に封印されていた。封印が解かれ、深淵を昇っていったら外でこの小娘達に会った。後の事はこの娘の話した通りだ」
────────────────────
:芋のポテト・『結構さまになってるのが草』
:あああああ・『魔王様ーー!』
:greencha・『すげえ、ここまで淡々とやりきるとはwww』
:摂氏50℃のゴミ箱・『右目と右腕に包帯巻くの好きそう』
:ぷーりん・『普通にカッコいい』
────────────────────
「えー、ルキファスさん。年齢とご職業を教えてください」
「言っただろう。大体800か1000歳くらいだ。職など無い。魔を統べる王が仕事と言えば仕事にはなるが」
────────────────────
:ブラック社畜・『要はニート?』
:sunaip13・『なんだ、お前らと同じかw』
:あああああ・『同業者かよwww』
:No.35zako・『間(男の)王ですね。分かります』
────────────────────
「えーっと······魔王とはどんな事をするのですか?」
「一口には言えん。だが、主に支配だ。恐怖と力によって世界を統べる。我が魔力によって僕を操り、歯向かう者を滅する。制圧した地は、そこの人間どもの王を服従させて我が秩序によって統治する」
「はー、なるほどー。恐怖政治ってやつですね?」
「そんな生やさしいものではないがな」
────────────────────
:操之命大神・『盛り上がってきましたーwww』
:チェックメイド・『なんかガチ感漂ってるのが草』
:芋のポテト・『本気で言ってそうなのがポイント高い』
────────────────────
「えー、ルキファスさんは封印から解かれたと言ってましたが、どんな封印だったんですか?」
「かなり複雑で大がかりな封印だった。まず、レヴィリィの四重結界を基軸とし、クロウリアの垂直線を施してからルブリメンによる守護壁を張り、その上にレグナームを構築。エレメントによる魔力流動を施し、イドの術式呪文を天二十、地十四、そして人を七つ書き連ね──」
「ちょ、ちょちょっ、ストップ! ストップ! 何語話してるのかサッパリなんですけど?!」
思わず途中で止めるリヴル。
「話してる内容の九割が理解出来ないんだけど······」
「それはお互い様だ。俺だって配信やら学校やら登録者やら何一つサッパリだったんだからな」
「と、とにかく! 凄い御大層な封印だったという事ですね?」
「そうだな。あんなに大がかりにしてたのには流石に呆れたものだ」
────────────────────
:greencha・『ヤバいwこいつガチだwww』
:あああああ・『ガチの魔術語ってる感がエグいw』
:ぷーりん・『魔王様ー、眷属にしてー!』
:芋のポテト・『エレメントとかって本当にある魔法学用語じゃなかったっけ?』
────────────────────
「え、えー、それでは。魔法ルキファスさん、現世に復活した感想をお願いいたします」
「その前に、俺からも質問させろ」
「え?」
ルキファスはリヴルとカメラの二つを見比べて言った。
「貴様らは俺の事を知らんのか? ルキファスという名前を聞いた事がないのか?」
その問いにリヴルが答える。
「いやー、詳しくは。でも、確か古文書に載ってる魔王の名前だよね?」
「うん。そうだったはず」
それまで静観しながらコメントを追っていたラヴィも相づちを打つ。
「昔、『大厄災』が起こる前の古代文明の石板とかにその名前が残ってます」
「大厄災?」
聞き返すルキファス。
「その大厄災とはなんだ?」
「え? えっと······大きい厄災!」
「お姉ちゃん、そのまんまだよ······」
「しゃーないじゃんっ、あたしだってよく知らないんだから! 誰かーっ、考古学ニキ助けてー!」
リヴルがカメラに向かってSOSを出すと、やや間を置いてから色々な説明等が流れた。
────────────────────
:ぷーりん・『たしか神話が関係してるんだっけ?』
:greencha・『あれだろ、神と悪魔の戦いだとかそういうの』
:No.35zako・『ルキファスってのは神話に出てくる魔王の名前だよな?』
:あああああ・『たしか大厄災は本当にあった事で、その厄災を古代人達は魔王との戦いって伝えたんだっけ?』
:芋のポテト・『大厄災とは、約二千年ほど前にこの星を襲った自然災害とそれに起因する疫病、戦争によって人類文明が崩壊した出来事。数十年近く続いた気候変動と疫病。さらには飢饉と数百年続いた争いにより、このムリア大陸では人口が約二割まで減少した。歴史的資料などの大半もこの時期に紛失、破損してしまい、災厄前の社会の全容は不明瞭となっている』
:リヴルちゃんすこすこ侍・『その失われた古代文明の数少ない資料の数々に“魔王”という存在が記されているんだったっけ?』
:チェックメイド・『博識ニキサンキュー』
────────────────────
しばらくコメントを追っていたラヴィが頷いてルキファスに説明する。
「つまり、二千年程前に人類は気候変動とか疫病によって滅亡寸前まで追い込まれて、文明が一度崩壊した出来事を大厄災と言うそうです」
「二千年······」
ルキファスが思わずラヴィに振り向く。
「それでは俺の名前はその二千年前の災厄より以前の資料に残されているのか?」
「えっと、そうなります」
「てことは~······ルキファスさんは約三千歳という事だね! うぇ~いっ、長生き~!」
ルキファスはしばらく、一人呆然として目の前を流れていくコメント欄の文字を追っていった。
お疲れ様です。次話に続きます。




