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12──魔王、配信に降臨

 



「マイクよーし、カメラよーし! テストおーけー!」


 配信機材の前で張り切るリヴル。その後ろでは呆れたようなラヴィと、周囲をじっと観察しているルキファスの二人が控えている。






 三人は、リヴルが『オフィス』と呼んでいる六畳ほどの部屋に居る。動画編集や、配信に使うための部屋で、ダイバー活動をしている二人にとってはその名の通り仕事場である。


 中は雑然としており、何枚ものゲームディスクや機種が積み上げられ、一見するとガラクタにしか見えない物も多数放置されている。ダンジョンで手に入れたアイテムの類いである。


 唯一整理整頓の行き届いた箇所は、部屋の角に置かれた机の周り。パソコンや収録機器が安置されている。



 今、その部屋では生放送、ライブ配信の用意がなされており、あと数分で本番が始まる。


 そう。ツブヤイターと呼ばれるインターネットサービスで『甦った古代の魔王様?!が家にやって来た!? この後八時からあたし達のチャンネルで紹介しますっ!』とリヴルが発信した通りに。



「ルキファスさん、最後の確認よ。放送禁止用語だけは絶対に言わないでね」

「さっき言ってたものか。下らんな」


『死ね』『殺す』などの暴言や、ある特定の特徴や思想を持った人間。またはコミュニティに対する差別的表現などの禁止。それがルキファスに求められた配信のマナーであった。


「気に入らん奴は殺して当然。弱者や役立たずにはそれを自覚させる事も当然。それを禁止とはな。ククク、貴様ら人間お得意の慈愛や友愛の精神というやつか」

「キャラ的には素晴らしく完璧だけど、ほんと止めてよ? 炎上でバズるのは嫌だからね······」


 リヴルが最後の確認をしていき、パソコンを操作する。


「さあ、えーっと待機人数は、と······わっ! すごいっ! ゲリラ配信なのにもう300人も来てる!」

「え、ほんと?」


 ラヴィも身を乗り出して画面を見る。


「ほんとだ······。凄い、今日はいつもより注目度が上がってる」

「言ったでしょ~? このあたしに任せときなさいってね」


 カメラとマイクの角度を調整し、ルキファスをベストポジションに座らせる。


「最初はあたし達が始まりの挨拶をするわ。それでカメラを向けるから、向けられたらルキファスさんはレンズをちゃんと見てね」

「そのガラス板を見れば良いのだったな?」

「そっ。それじゃ~······スタート!」


 配信開始のボタンが押され、いよいよライブ配信が始まった。





「みんなっ、いきなりでごめんね~っ! アレグリア所属のダイバー、リヴルと~······」

「妹のラヴィです」

「いえーいっ! ラブリブチャンネルっ、今日もドドンッとキラキラな配信いってみよ~!」

「みなさん、ごめんなさい。いきなり配信だなんて」


 目の前で突然踊り出したかのような大きな身振り手振りのリヴルにルキファスは面くらっていた。声も大きい。




 ────────────────────

:芋のポテト・『ゲリラ配信きちゃっ』

:摂氏50℃のゴミ箱・『緊急放送と聞いて』

:greencha・『お、今日はどうした?』

:あああああ・『二回目とか最高!』

:チェックメイド・『なんか魔王降臨とか聞いたんだけどw』

:sunaip13・『それより昼間の変な奴どうなった?』

:taroZ・『うおおおっ、今日はリアタイできたぞ!』

:ブラック社畜・『ヒャーッ、残業中のリアタイは染みるぜー!』

 ────────────────────



 さらには、パソコン画面に流れる文章の群れ。その言葉遣いや単語などは見慣れない物も多い。


 色々と流れに乗れていないルキファスをさておき、リヴル達は最初の挨拶や雑談を軽くこなしていく。


「そうそう、そうなの! 昼間の配信でダンジョン近くで出会った謎の男。なんとっ、我が家に保護していまーす!」



 ────────────────────

:芋のポテト・『ファーッ?!』

:操之命大神・『男いらん』

:リヴルちゃんすこすこ侍・『コラボしたのか······俺以外の男(やつ)と······』

:tissuekenja19・『合体配信はよ』

:No.35zako・『今キタ』

:ぷーりん・『こんばんわー!』

 ────────────────────



「実はね、あのお兄さんはただの視聴者でもなければ不審者でもなかったの。な、な、なっ、なんとおっ! あの、神話に語り継がれる魔王ルキファスだったの!!」



 ────────────────────

:芋のポテト・『ファーッwwwwwww』

:greencha・『な、なんだってー?!』

:摂氏50℃のゴミ箱・『お、終わりじゃ~、この世の終わりじゃ~!』

:あああああ・『魔王タグってそれかいwwww』

:taroZ・『一体昼間の配信で何があったんだ?』

:ぷーりん・『魔王?』

 ────────────────────



 視聴者の反応を見ながら満足そうに頷くリヴル。


「そうなのよー、魔王なの! あたしらん家にはあの古代の魔王様が降臨してるんだー。きゃーっ、こわーいっ。みんな助けて~! ツブヤイターで勇者募集してー!」

「もう、恥ずかしくて見てらんないよ······」



 ────────────────────

:リヴルちゃんすこすこ侍・『俺が助けに行くぞお!』

:あああああ・『↑止めるのじゃ!お前のレベルでは魔王に勝てん!』

:greencha・『あの昼間のダンジョンに戻って伝説の剣をゲットするのだ!』

:操之命大神・『勇者よ、魔王を倒すには北の泉にある聖水が必要じゃ』

:芋のポテト・『魔王の城はここから東へ行った山だ。魔王の城はここから東へ行った山だ。魔王の城は──』

:チェックメイド・『魔王の城の門を開けるのにはドラゴンの血が必要じゃ』

:ブラック社畜・『なんか米でRPG始まってんだけどwwww』

 ────────────────────



 羞恥心でいたたまれないラヴィに反して、コメント欄は大変に盛り上がっていた。


「あっははは! みんなが盛り上がってきたところで! いよいよ魔王様に降臨してもらいましょう! それでは皆様、魔王様のご登場です!」


 リヴルがカメラの角度を変え、すでに待機済みの魔王ルキファスへと向ける。


 ルキファスは事前に聞いていた通りにカメラのレンズを真っ直ぐ見た。


 リヴルとラヴィが移動し、ルキファスの横に並ぶ。配信画面の中央をルキファスが占め、その横にリヴルの体の一部だけが映る形となる。


「こちらが! 昼間出会った不審者こと、神話の恐ろしき魔王、ルキファスさんです! 知らないって人はアーカイブに残してあるから今日の日付の配信動画観てね!」




 ────────────────────

:摂氏50℃のゴミ箱・『美形じゃねえか!』

:taroZ・『イケメンやん』

:ぷーりん・『えっ、カッコいいんだけど?』

:芋のポテト:『わりと美形魔王っぽくてワロタw』

:tissuekenja19・『3Pキボープ』

:ブラック社畜・『誰やねんwwwww』

 ────────────────────



 こうして。


 魔王ルキファスの波乱に満ちた初配信が始まったのであった。



お疲れ様です。次話に続きます。

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