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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第6章 オリエンテーション編Ⅰ
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第91話 第2ラウンド

今回の分量は少し多めです。

それではどうぞ。

「今さら、ナシだろ! そんなの。」

「そや、四苑。レースはうちらの勝ちやろ。」

 落合君や尾関山さんは憤っている。それもそのはず、あのままボートがゴールしていれば間違いなく、俺たちD2チームの勝利だった。

「技板の関わる勝負なら〝イセノ〟で勝負を挑んでもオリエンのルール上問題はないと、英二兄に事前に確認済みです。」

「というか、お前の兄もグルだったんだな。」

「いいえ、これは僕が最悪の場合も考えて頼んでおいただけです。」

「で、どうなんだ? 生徒会さんよ。」

 落合君は発言してる四苑君ではなく、英二さん本人に確認をとろうとする。が、肝心の彼の声が聞こえず。

「ええい、それでも生徒会か、尾関山兄よ。もうちょっとはっきり話せ!」

 木戸先生が叱る。すると

「四苑からお願いされていた。」

 今度ははっきりと声が聞こえてみんなちょっと驚いた。よくよく聞くと意外にイケボ、そしてどうやらアヒルさんボートにスピーカーが内蔵されているようだ。

「もしもC4チームが負けそうになった時は、投影装置を停止させ、〝イセノ〟の勝負に移行できるようにって。だがこれはD2チームも同じことをやろうと思えばできたこと。オリエンのルールでも、技板をかけた勝負なら各チーム、他のチームそれぞれに対して1回ずつ挑戦権を行使できるから、それを使うことはルール違反じゃない。」

「でも、それならボートレースは何だった? ってなりませんか。」

 ナユユが疑問を投げつける。乗りたくなかった気持ち、素直にぶつけてるな。

「筋肉を動かす、それだけで十分だろ。」

 木戸先生、論点はそこじゃない。

「百歩譲って技板をかけた勝負ってのはわかります。でも、その高級寿司の方は?」

「正直、寿司に関しては譲りますといいたいのですが、チームとしてはみんな食べたいという希望が多いので……。」

 俺の疑問にチームの様子をうかがいながら答える四苑君。

「技板と寿司をかける代わりに2つ提案があります。1つはボートレースでは負けた以上、先攻後攻の決定権はそちらに譲ります。もう1つは〝イセノ〟の勝負、1番レベルの高い技板に加えて、2番目にレベルの高い技板もかけましょう。それでどうですか。」

 俺たちのチームで2番目にレベルの高い技板、それは道中でゲットした、レベル7の〝雷魔切り〟。現実でもかなりレアな技板、それをかけてか……。

「いや、技板総賭けだ。」

「さすがに、それはかわいそうやろ。レースの結果そのままで、ええ話やと思うけど。」

「むむむ、寿司……。技板だけ賭けての勝負でいいのではなかろうか。」

 D2チーム内でも意見が割れている。俺は――。

「俺は条件を飲んでもいいと思う。」

「何だ九山、勝てる自信でもあるのか?」

「自信ってほどじゃないけど、今俺たちは勝負で使えそうな技板は一通りそろってるわけだし。それに相手は俺たちよりも、持っている技板の数は少ない。」

「なんで相手チームのこと、わかるんだ?」

「えっ、それはその。ボートで話している声が聞こえてきて……。」

 とても、ボートレース中にちらっと言ってそうだったことを、口の動きを分析したノーデが特定したなんて言えないな。

「そういえばちらっとゆうてたな、技板12枚しかないって。」

 尾関山さん、さすがの耳だ。

「むむむ、使える技の多いこちらの方が勝負でも有利なはず、というわけだな。」

「そういうこと、千草さん。」

「ただ、気ぃつけたほうがええで。四苑、確か〝イセノ〟強いんや。うち、あんまりやってこなかったから今まですごさがわからんかったんやけど、保育園の行事とかでは1番になったって前言うてたな。」

 尾関山さんが不安を述べる。確かに四苑君、一筋縄じゃ行かなそうだしな。

「保育園、かわいいもんだな。所詮、ガキだろ。」

「それ言うと俺たちもだから。十指選や世界と比べるとね。でも、侮っちゃいけないよ。」

「まあ、そこは九山に同意だな。で、リーダーの意見は?」

「正直、不安もありますが、攻められるときには攻めるべきだと思います。なので、皆さん、いいですか?」

 チーム一同うなづき、リーダーのナユユは決断する。

「条件をのみましょう。」

「決まりですね。」

「だが、ここで〝イセノ〟って。やりづらくないか。俺たちは指の担当順に並んでいるけど、D2チームはどうかわからないし。何より、風の影響で常に同じ向きを向いているの難しいぞ。」

 C4チームの高君から、さっそく勝負について不安の声が上がる。

「それについては私から提案だ!」

 木戸先生の声がスピーカーから。鼓膜が破れるかと思った。

「やはり筋肉を動かすことが大事。そこでパドルを指に見立て、水面から上げ切れば指が上げた扱い、逆に少しでも水面についていれば指を下げている扱いとするのはどうだ。」

 先生、今度は声量を調整してしゃべる。

「面白そうだな。」

「まだボート、乗るんですか。」

 とD2チーム内では真っ二つに意見が割れる。ちなみに俺は否定派である。

「いいですね。それ!」

「ええ、結構疲れそう。」

 C4チームでも意見が分かれる。肯定派の意見(代表四苑君)はこうだ。

「せっかくボートに乗ってるんです。いつもとは一味違う〝イセノ〟、してみたいです。」

 否定派の意見(代表俺)は

「1本でも疲れるのに。それに、パドルは6つしかないけど、6本でやるんですか。」

「いや、そこは問題ない。」

 スピーカーから英二さんの声。同時にアヒルさんの目が光り、4本のパドルが手元に出現。

「残り4本はこの投影されたもので代用しよう。左右の手の動きを腕輪が読み取り、それをそのままパドルの動きに反映してくれる。」

 あのボートには投影装置も搭載されているようだ。さすが英二さん、メカニック担当は伊達じゃない。ゴールを投影してた建屋にある装置じゃ、まずこんな投影はできないだろう。

「確かに、見た感じ本物そっくりや。」

「これなら私にも動かせそうです。」

「さすがだな。尾関山兄。」

 木戸先生も思わず感心するほど。

「投影されたのはそれだけではないようだ。」

 千草さんが見つめているのは、空。いや。

「巨大な手が、2つ。」

 各チームのボートの上に出現する手。俺の手の10倍のサイズはあるだろう。

「これで多少離れていてもお互いの指の状態は一目瞭然。これで不安は多少なくなっただろう。では多数決を取ろう。賛成の者は?」

 挙手したのは6人、反対は4人。結果、ボート上で〝イセノ〟をすることに。

「では両者1分、話し合いタイムののち、試合開始するぞ。」

 そう言って先生は一度話を切り上げる。

「ってことになったけれど、ナユユ、体調は大丈夫?」

「だいぶ薬が効いてきたみたいで。今はいけます。」

 確かに声が少し元気そうな声に戻ってて、一安心だ。

「みんな先攻、後攻どうする?」

「先攻だろ。このゲームは先に責めた方が有利だからな。というか、九山、リーダーが不調だからって何しきってるんだ?」

 落合君、俺の意見に突っかかってくるなぁ。でももう一つ、勝負前に確認することが。

「尾関山さん、どれくらい相手チームの声、聞こえる?」

 今D2チームとC4チームのボートは見た感じ2、3メートルは距離がある。

「普通の会話なら聞き取れるで。でも耳元でこそこそ話されたら聞こえんやろうな。」

「じゃあ、たぶん四苑君も同じだな。」

 合図とか決めていなかったけれど、この状況なら小声でしゃべれば聞こえないはず。

「できる限り小声でやり取りしましょう。相手チームに聞かれると厄介ですし。」

 ナユユがチームの方針を決めて。

「話し合いは終わったようだな。それでは、先攻はD2チームから。試合開始!」

 始まる。

「【い、せいので〝雨〟】」

 ナユユの宣言とともに、雲から雨が降り注ぎ、上空で投影されているC4チームの指6か所に着弾、水が指を覆う。そして雨の水滴は、湖の水面まで到達し、波紋を広げる。

「高さん、ここは治しましょう。どこでもいいです。」

 C4チーム、指示を出すのはやはり四苑君。

「じゃあ、八幡の右のほう【〝手術〟】」

「へいへい。」

 八幡君はパドルを上げる。同時に上空の右人差し指も上がり青い光に包まれて、水が蒸発。

「【るせーどーで〝晴れ〟】」


 Turn 3

 D2 team 0pt  C4 team 1pt 

【〝sunny〟Lv.1(S)】

 R●●●●●        R●●●()()

 L●●●●●        L●()()()()


 弼さんの攻撃で、C4チームの左中指は強烈な日差しにより変色。四苑さんの左のパドル、つまり上空に投影された左中指だけ新規で固まります。

「治した方が賢明だな、【〝手術〟】。」

 八幡さんの宣言、C4チームもD2チームと同じように技の宣言は分担制のようですね。2連続〝手術〟はポイントをために行く戦法、とも取れますが判断するのは早計でしょう。

「【せーので〝雨〟】」

 三香さんのこの攻撃は、C4チームの既に水滴に覆われている指のみに追加で降り注いだだけです。

「【いっすんのーで〝晴れ〟】」


 Turn 6

 D2 team 0pt  C4 team 2pt 

            【〝sunny〟Lv.1(S)】

 R()●●()()        R●●●()()

 L()()●●()        L●●()()()


 四苑君の宣言、C4チームが攻めてきた。日差しは俺たちの指6か所を焦げさせる。

 俺の宣言の番、ここは攻めるか、治すか。

「むむむ……。」

 後ろから千草さんの声。パドルを上げているのきつそうだな。四苑君もさっき〝晴れ〟にかかっているがあれは投影されていたパドル。対して千草さんの持っているのは2本ともリアルのパドル。ボートレースも頑張ってくれていたし、2つとも上げ続けるのはきついはず。

「【〝手術〟】、千草さんの右のパドル。」

「すまぬ。」

 千草さんはパドル1つを下ろし、同時に上空の右小指が元の肌色に戻る。この勝負、〝晴れ〟がカギになるかもしれない。

「「【〝最高の手術〟】」」

 お互いのチーム、指を治しに行く。手術ポイントはD2チームが6pt、C4チームが7ptでほぼ同じ。そんな中。

「少し、勝負に出ますよ、西見さん。」

「OKOK。いっくよぉ。」

 彼女は意外な技を宣言する。


「【〝タイムカプセル〟】」


〝タイムカプセル〟、その効果とは?

そしてどのパドルがどこの指に対応しているのかわかりにくいかもしれませんがご容赦を。

おさらいのため一応ここで指担当を記載しておきますと

D2チーム

親指:ナユユ、人差し指:落合、中指:尾関山(三香)、薬指:一誠、小指:千草

C4チーム

親指:高、人差し指:八幡、中指:尾関山(四苑)、薬指:吉田、小指:西見

です。

次回10/5までに更新予定。よろしくお願いします。

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