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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第6章 オリエンテーション編Ⅰ
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第90話 逆風

かれこれ90話。今回は少し短めです。

それではどうぞ。

「「オーエス、オーエス。」」

 各チームの掛け声が湖にこだまし、2隻のボートが進み始める。

 水の流れがなくても、パドルを漕ぐのは想像していた以上に重い。今はまだいけるが、後半持つかどうか。

「若干、向い風があるな。」

「むむ、だが、やるしかない。」

 そう言いつつ、パドル2本を扱っている落合君と千草さんは素直に尊敬する。

 俺たちが目指すのはここから300mくらい先のポール。上空から見ると俺たちはこの縦に長い湖を横断している形になるだろう。今、C4チームの方が一歩先を行かれているが、体力自慢の落合君と千草さんが健闘し、食らいつく。

「もっと筋肉、筋肉を動かせぇ。」

 そんな熱いエールを送りながら、アヒルさんボートで並走する木戸先生、英二さん、マークスリーさん。マッチョな2人に挟まれて、英二さん気まずそう。

 さて、先を行くC4チームはというと。

『一誠たちは漕ぐのに必死ですが、C4チームは会話する余裕はあるみたいですね。』

 水が目に入りかけて目を閉じた瞬間、ノーデが言っていた。確かに掛け声に交じって会話しているみたいだが、何をしゃべっているかまでは聞き取れない。

 でも待てよ、ノーデなら内容わかったりしないかな。

『一誠がずっとC4チームの方を見ていただければ、できますよ。』

 さすがノーデだな。

「じゃあ、頼む。」

 と瞬き合間にお願いし、ノーデが映像を分析。C4チームの会話内容が明らかになる。

「意外とD2チームと差が開いてない!」

「男子、もっとパドル早く動かせないの?」

「こっちもやってるよ。やっぱ、2本はきついわ。」

 C4チームのパドルの配分は高君、八幡君がパドル2本、吉田さん、西見さんが1本である。

「あ~、優勝しなくても楽しめりゃそれでいいのに、なんで俺たち必死にボート漕いでるんだろうな。」

「それな。それに女子から言われるし。ああ、いっそ叱られるなら万倉パイセンの方がいい。」

「今、なんか言った?」

「いやいや何も。西見さん。」

 と否定はしているものの、割とやる気がありそうな吉田さん、西見さんに対し、高君、八幡君は不満を口にしている。

 では四苑君はというと。

「姉ちゃん、いいですよね。」

「おい、四苑。お前漕がないからって、何相手側のボート見てるんだ。」

「四苑君はいいのよ、かわいいんだから。」

 どうやら西見さんは四苑君を気に入ってるらしい。何もしなければ、かわいい5歳児に見えるからな。

「こいつがかあ?」

 八幡君、その意見には同感だ。 

「相手の動向をみるのも大切な役目です。ところで高さんは姉ちゃんのこと、どう思ってます?」

「お前の姉の三香さんのことか? どうって、そうだな。まあ見た目は割とタイプだが、話したことないしな。」

「八幡さんは?」

「関西弁で、ちょっと気の強そうなイメージだな。」

「皆さんまだまだですね、人生損してますよ。姉ちゃんはああ見えてコツコツ努力型、それにすべてを包み込む包容力があるんです。」

「意外な一面、だな。」

「包容力……。」

「これに勝ったら姉ちゃんのさらなる秘密に秘蔵写真、お二人にプレゼントしますよ。」

 先頭の男子二人は息をのむ。

「秘密……。」

「秘蔵ってまさか。」

「そのまさか、です。」

「四苑。話が分かるじゃねえか。やる気出てきた。」

 やり方は邪道だが、チームのやる気を出させるのはオリエン参加者で最年少の子供。間違いなくC4チームを引っ張っているのは四苑君だろう。

「聞こえとるで。はあ、はあ、うちを売るな、四苑!」

 尾関山さんが息を切らしながらも叫ぶ。地獄耳は尾関山家の固有スキルか。

「やる気を出してもらうには、仕方ないんです。」

 四苑君、そういって泣き顔で答えているが、策士だな。

 まもなく俺たちのボートはポール、旋回ポイントへ。C4チームは先に到達し、旋回を試みている。

「ここがカギだぞ。」

 落合君が叫ぶ。

 直線コースでは運動部が多いC4チームにはかなわない。だからここで差を縮める。ボートに乗る前に決めた作戦だ。

 まず減速、ポールに並んだらボートの左を抑えめに、右を全力でこいで急旋回。小さい半径で回りきる。

 対してC4チームは勢いを殺せず、ターンに苦戦。ポールを時間をかけ、大回りで旋回。

『これに関しては筋肉ではなく頭脳プレイですね。』

 ノーデが先生の言葉を皮肉っている瞬間に。

 並んだ!

「ここが正念場だ、やるぞ。」

 ナユユに代わり落合君が声を荒げる。

「ここで抜かされたら相手のペースです。漕いで漕いで漕ぎまくりましょう。」

 四苑君も声を上げ、並走、皆ギアを上げてパドルを漕ぐ。

 五分五分、ここで勝負を決めるのは意外にも。

「にしても計算外です。D2チーム、なんていうゴリラ力。」

 四苑君の些細なつぶやき、しかしこれが、C4チームの悪手であった。

「四苑、今ゴリラ力って。はあ、はあ、誰の事指しとるんやろうな。」

「「ゴリラ……。」」

 四苑君のつぶやきを尾関山さんが拾い上げ、その言葉に千草さんと落合君が反応する。あ、これ……。

「はあ、はあ、あの生意気な子供に分からせてやらねばならぬようだな。」

「俺も同じこと、思ったぜ。」

 二人のスイッチが入ったようだ。

「うぉおおおおおお。」

「おりゃあああああ。」

 D2チームのボートはペースアップ。C4チームの船を一気に追い抜かす。さっきまで逆風だった風も旋回した今となっては追い風だ。

「筋肉、やはり筋肉がすべて。」

 興奮した口調の木戸先生。だがこれはたぶん気持ちの問題だと思うが。

「もう少しです。頑張りましょう。」

 ナユユも気分が悪そうでも声を上げる。

 ついに、投影装置で水面に移されているGOALの文字がはっきりと見えてきた。C4チームはまだ背後にぴったりとついているが。

 よし、いける!

「駄目だ、間に合わない。」

「お前がいらないこと言うからだぞ、四苑。」

「なんとかしろよ。」

 一転、男子二人に責められる四苑君。しかし彼には何か手があるようで。

「この手だけは使いたくなかったですが、やむ負えません。英二兄、お願いします!」

 ゴール目前だった。四苑君の声が湖中に反響して。

「GOALの文字が、消えた。」

 俺たちの動揺をよそに、四苑君は宣戦布告する。


「D2チームさん! レースの勝敗、〝イセノ〟で決着つけましょう!」


勝負は第2ラウンドへ?

次回は9/28までに更新予定です。よろしくお願いします。

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