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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第6章 オリエンテーション編Ⅰ
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第89話 C4 VS D2

前回の続きです、いきなり読むと何の話となるのでご注意ください。

それでは早速、本編です。

「今回使うのはそこにある手漕ぎボート、そのボートにチームごとに乗員してもらう。そしてここから反対側、湖の中央に浮いているポールで旋回し、ここに先に戻ってきたチームが勝ち、超豪華賞品の寿司を食べることができる。なお、パドルは6つ。すべて使っても使わないパドルがあってもいいが、使わない場合は船に置いておくように、フェアにならないからな。」

 なるほど体力勝負だな。あと先生の説明だと、チーム5人に対してパドルは6本。すべて使おうとすると一人だけパドル2本でこぐことになる。

 さて各々の反応は。この場にいる中で一番背の低い四苑君は自分のチームと俺たちD2チームのメンバーを一通り見まわして。特に女子は何度も見返して。

「勝った。」

 いや何が。

「四苑今、胸のあたり見とったやろ。」

「そ、そんなことはないよ、姉ちゃん。」

 姉の指摘に動揺の色が隠せない四苑君。こいつ、意外とそういう目線でも見てるのか。

「姉ちゃんには悪いけど、戦う前から勝負はついています。全体の体重的に見れば僕たちC4チームが圧倒的有利。」

「体重……。」

 ああ、確かにナユユやC4チームの女子はすらっとしているが、尾関山さんはまあこの中では胸があるし、千草さんは割と筋肉がある。一方の男子は両チームそこまで体型に差がないし、四苑君自身は軽そうだから、そういう観点でものを見ることもできるな。

『一誠も人のことは言えませんね。』

 ノーデ、うるさいぞ。あの流れだと見ちゃうだろ。その点、デリケートなところも堂々と言えるのが子供のいいところだな。

『私から見れば一誠も子供ですよ。』

 それはごもっとも。

「ボート、レース、ボート、レース……。」

 そしてさっきから青ざめたまま同じ言葉を繰り返すナユユ。元気づけようと尾関山さんはナユユの肩に手を置き、声をかける。

「そんな心配せんでも、うち船自体乗るんは初めてやから、楽しみな反面不安もあるし。このチームで、ボートとか経験者おる?」

「俺は自分でこぐ船は初めて。」

 船全般で考えても、乗ったことがあるのは島同士をつなぐ連絡船くらいだな。

「俺はパドルでこぐ船はないな。あっちのアヒルの形のボートならあるが。」

 落合君の視線の先。停泊している普通の手漕ぎボート5隻の横に、足で漕ぐタイプのアヒルさんボートがある。

「拙者はもっと何百人と乗れる大きな船には何度か乗っているが、実際にこいだことはない。」

 千草さんは事実だけを言っているのだろうが、ナチュラルに自慢に聞こえる。

「で、なゆちゃんは……。」

「ボート、レース……。」

 これ……。

「もしかして、酔っちゃう?」

 俺の疑問にナユユはコクリとうなずき答えた。

「湖、ミニゲーム、嫌な予感がしたんです。私、乗り物酔いしやすいので。朝も酔い止めを飲んできたんですけど、そろそろ効果切れますし……。肝心の薬も宿泊施設の方に置いてきてしまって……。」

 そうか、この湖に来る前から抱えていた彼女の不安の正体は船酔いだったんだ。

「筋肉でどうにかならんか?」

「きどせんせ……、それはパワハラと……。」

 先生の発言に黄色いロン毛の人がぼそぼそと指摘する。肩に生徒会の腕章、背が高いから高等部の生徒会役員だろう。

「な、なるほどな。それはその、気の毒やな。そしてどうしよう。うちも、船、初めてやから不安や。」

「大丈夫だよ、姉ちゃんは車も飛行機もジェットコースターもけろっとした表情で乗るじゃん。」

 不安をうち消すように四苑君は姉のフォローに入る。

「ありがとうな四苑、敵やけど、うちはいい弟を持ったわ。」

「酔い止めなら……。」

 ふと、黄色いロン毛の人が口を開き、胸ポケットから錠剤を取り出した。

「え、えっと、もらっていいんですか?」

「うん……そういう……。」

 この人、文の後半は何て言っているのか、聞き取れないな。

「そういう事態にも対応するのが生徒会の役目だ、って言ってます。」

 四苑君がすらすらと翻訳。

「え、えっとありがとうございます。」

 ナユユは何度もお辞儀しながら薬を受け取る。そして尾関山さんはあきれた表情。

「英二兄、もう少しはっきりしゃべりぃや。」

「英二兄、恥ずかしがり屋ですからね。」

「俺、一応……。」

「一応、生徒会って聞きとれるやつうちらくらいやろ。」

 俺含め、ほぼ全員うなづいている。にしても、尾関山さんや四苑君が兄? 

「兄弟なんですか?」

「そう、うちの兄、確か、『生徒会メカニック担当、高1の尾関山(おせきやま)(えい)()です。よろしく。』って自己紹介もしとったんやけど、聞こえんかったよな。」

「それ、いつ言ってた?」

「奈湯ちゃんがボートレースって繰り返してた時やな。」

 そんな時に小さな声で言われても気づかないよ。そしてたぶん生徒会にメカニック担当という役職があるのは後にも先にもこの学校だけな気がする。

「おっほん。まだ説明は終わってないぞ。」

 木戸先生が咳払いして俺たちの会話を強制終了させ、説明を続ける。

「このボートレースはただで参加というわけではない。現在チームで保有している技板のうち、一番レベルの高い1枚をかけてもらう。」

 なるほど、普通に〝イセノ〟で勝負する以外にもこういうミニゲームで技板を奪い合うってことか。

「木戸先生、質問だ。技板が1枚もない場合はどうなる?」

 挙手して落合君が質問する。彼が心配しているのはB2チームだな。

「まあその時は担当する教師の判断になるが、まさかお前ら1枚も持ってないのか?」

「いや、俺らはあるが、ないチームもあってな。あいつら大変そうだな。」

「拙者からも質問だ。チームメンバー以外はボートに乗ってはいけないのか?」

 今度は千草さんが質問する。でも、その意図がわからない。

「?? 誰かほかにいるのか。」

「ワタシダ。」

 ドアを開けて千草さんの護衛、マークスリーさんが登場。そういわれたら、この人いたな。あのガタイなのに今まで存在感なかったのはさすがプロ? なのか。

「いい筋肉だ。」

 そして初見の感想それか、木戸先生。

「オジョウサマノミニナニカアッタライケナイ。ワタシモノセテクレ。」

「とはいってもボートの定員は5人、あなたが乗ると沈むぞ。」

「ノー、ソコヲナントカ。オカアサマニシカラレル。」

 スリーさんの同行したい理由が子供っぽいな。

「はあ、仕方ない。私たちも生徒に何かあった時のためにスワンボートに乗る。同じ筋肉を持つよしみとして、それに一緒に乗ることを許可する。」

「カタジケナイ。」

 いや何、同じ筋肉って。互いに握手して、まるで通じ合ったかのようだ。

「他質問、ないな。では、今から5分後、ライフジャケットを着て船着き場に集合だ。」


 そして5分後、船着き場。

「なるほど、お互いの差し出す技板は確認させてもらった。」

 そういって先生が俺たちの集めた珠玉の1枚を返却する。ちなみに俺たちが持つ一番レベルの高い1枚はB2チームとの戦いで手に入った、レベル9の〝ゴッドウォール〟だ。

「互いのチームの自己紹介、まだだったな。船に乗る前にしておけよ。」

「親睦……。」

「親睦深めるのもこの行事の目的なので、だそうです。」

 外に出るとますます英二さんの声、聞こえないな。よく四苑君聞きとれるよ。

高陽一(たかよういち)、陸上部だ。」

「同じく陸上部、八幡(やわた)陰二(いんじ)。」

尾関山(おせきやま)四苑(しおん)、5歳です。全力で頑張ります!」

吉田(よしだ)百合(ゆり)、卓球部。よろしくお願いします。」

西見(にしみ)早八香(さやか)、バレー部です。よろしく。」

 先にC4チームが名乗っていく。高君、八幡君はどっかで見た気がしてたが、万倉先輩の追っかけしてた人たちだな。

 そしてC4チームは全員髪が短く、それ相応の体つきだから予感はしていたが、四苑君以外全員スポーツの部活か。これは確かにこっちの分が悪い。ちなみに指担当は高君が親指、八幡君が人差し指といった感じで、紹介してくれた順番らしい。

 次に俺たちの自己紹介だが、B2チーム戦の時とほぼ同じなので以下省略。

 互いのチームがボートに、そして先生たちがアヒルさんボートに搭乗。

「やっぱりまだ気持ち悪いです。」

「無理しなくてええで。うちらに任しとき。」

「はい。」

 ナユユは残念ながらボートは漕げないと判断し、俺と尾関山さんが1本、落合君と千草さんが2本、パドルをもっている。

「位置について、よーい。」

 木戸先生の言葉で、ナユユ以外が皆パドルを握りしめる。そしてレースが

「ドン!」

 始まる。

あれ、〝イセノ〟で戦わないの?

と思ってる方もいらっしゃるでしょうが安心してください。作者も思ってます。

次回は9/21までに更新予定です。よろしくお願いします。

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