第88話 特別イベント
水曜更新頑張ったけど、結局土曜に戻ってきました。
それでは本編です。
特別イベント?
「イベント中に特別イベント?」
「おいおい、イベントってこの技板争奪戦のことだよなァ。」
B2チームもこのリアクション、俺の言いたいことを先に口に出してくれる。そして上戸先輩のアナウンスは続く。
「唐突ですがぁ、皆さん、お腹すいていませんか?」
指摘されたら思い出したかのように腹が鳴った。腕輪で確認するともう12時か。
「しおりにはイベントとしか記載がなく、昼ごはんどうするんだぁ? と思った人もいるでしょう。事前に何人かから質問も受けましたが、もちろん、準備しておりますよぉ。それもこの施設を運営しておられる塩町グループ協力のもと、学生身分ではとてもとても食べられない超豪華料理をな、なんと8種類も!」
どこかの通販の宣伝のように上ずっていく先輩のアナウンス。
「具体的には高級肉のハンバーグやステーキ、新鮮な魚介を使った寿司や海鮮丼、超有名店のラーメンや中華、本場の人もうならせる絶品パスタ、ピザとなりますぅ。」
「やばい、想像するだけでよだれが……。」
「うわ、汚なっ。ちゃんと拭きなさい!」
三河君、やっぱり食い意地が張っているな。隣にいる安田さんが引いている。
「聞くだけでもおいしそう!」
「ですね。」
「寿司、やはり日本人たるもの寿司であるな。」
なんか俺たちD2チーム女子でも盛り上がっている。
でも、8種類? 全チーム合わせて16チームあるのに。1種類で2チーム分準備されているのかな。
「今、オリエン参加は16チームなのに料理はその半分の8種類でおかしくないかぁ? なんて思ったそこのあなた、察しがいい。そう、この超豪華料理は8チーム分しか用意されていません。残りのチームは全員、購買部で売れ残った消費期限すれすれの不人気パンをSDGsの観点からぁ、食べてもらいますぅ。」
俺の疑問を見透かしたように上戸先輩が答えてくれた。
「不人気パン? ああ1個、すごいまずい味があったな。」
落合君が連想しているのは、俺も購買に行ったとき見かけたことのあるパン。確か……。
「げろ味のパンだろ、あれはとてもこの世のものとは思えないパンだった。興味本位で食べるもんじゃねえな。」
「河佐、お前食ったのか?」
俺も落合君と同じ感想、相当まずいと一年の間で噂があったのを聞いていたから。
「ああ、でもなぜあんなパンがあるんだと思っていたがまさか、このためだったとは。」
「いや、それは違うと思いたいが……。」
真実は誰にもわからない。
「これは超豪華料理一択だな。」
落合君だけじゃない、たぶん誰もがそう思う。だが。
「もちろん、働かざる者食うべからず。食べるためには試練を受けてもらいますぅ。」
やっぱり、そう簡単に食べさせてもらえないよな。
「今から皆さんにメールで8か所の料理の食べられる場所を提示します。皆さんは今から30分後、12時30分までにそのどこか1か所に集合してください。そしてそれぞれの箇所でミニゲームを行い、クリアすれば食べられますぅ。同じ場所に2チーム、3チームと集った場合はそのミニゲームの勝敗で料理を食べられるチームを選びます。逆に1チームも来なかった場合は、先生方と我々生徒会で、ありがたぁくいただきますぅ。よぉく考えて動くように、以上ですぅ。」
こうして園内放送は終了し、同時にメールの着信音が響く。メールにはマップに加え、それぞれの料理の写真までご丁寧につけてくれている。
「ヤバイ、写真見ると余計に食べとうなるで。」
「それで、皆さん、何か食べたいものありますか?」
ナユユがチーム内の意見を聞いた。
「真っ先に相談することが飯のこととはな。俺は何でもいい。」
「拙者は寿司が希望だ。」
「寿司はええな、写真もおいしそうやし、うちもそれ希望。」
寿司、人気だな。俺はうーん……。
「俺は正直、ハンバーグも気になってるけど、寿司も悪くないと思うから。寿司で。」
『一誠、人の意見に流されてますよ。』
ノーデよ、せめて協調性があるといってくれ。
「皆さん寿司ですか……。」
「奈湯ちゃん、寿司食べたくないん?」
「えっ、いえ寿司は大好きですけど。」
「何か不安でもあるの?」
不安、か。もしかしてナユユが考えているのは。
「これって、できるだけ希望の被りそうにないところに行った方がいいんじゃないかな。被っちゃうと競うチームが多くなって料理食べれなくなっちゃうかもだし。ナユユの不安ってそのことかな。」
「えっ、ええ。そうですね。」
あー、この反応。
『違ったようですね。』
言わなくてもわかってるよ、ノーデ。
「じゃあ、希望者も多いので寿司で行きましょう。でも、できる限り技板も回収しなきゃなので、この邪薔薇湖を目指しながら、マップの通り道に表示されている技板は回収しましょう。」
俺たちはチームとしてそう決めて、B2チームと別れてキャンプ場から邪薔薇湖を目指した。再び森の小道を歩くこと20分、途中2枚の技板を回収し、ついに視界が開けてきて。
「見えました、あれが邪薔薇湖ですか。」
「広い!」
「今までずっと草木しか見てこなかったから、水を見るとちょっとテンション上がるな。」
邪薔薇湖、その名の通り湖の周りにバラが咲いており、少し不吉な名前に反して水は透き通っている。
『この湖はその昔、湖の主という巨大な魚が漁師の船を何隻も沈めたことから不吉な名前が付けられたようですね。今は逆に魚の養殖が行われるほど平和なようですが。』
ノーデの豆知識、なんか久々に聞いたな。昔は大変だったんだろうが、今は新鮮な寿司ネタを提供してくれているんだろう。
そして俺たちは薔薇を横目に歩き、湖に隣接する建屋の前にたどり着く。
「釣りやボート、ゴルフもできるみたいだな。こういうイベント以外の日も普通に来てみたいものだ。」
千草さんが建屋の前に張られているポスターを見てつぶやく。
「だけど、学生には高いな。」
「千草さんなら、そのグループの力でいろいろと優遇されそうだね。」
「何を言う、私はそこまで金にものを言わせはせぬ。」
いや、俺の隣の家を確保したり、リムジン登校したり、腕輪や投影装置など結構言わしている気がするが……全部千里さんのせいか?
「中に休憩スペースがあるね、話声聞こえるし。」
「ああ。でも声の人数からして、ここに来たのは俺たちのチームだけではないようだ。」
バトルは避けられなさそうだな。
「とにかく入りましょう。」
ナユユを先頭に建屋の中へ。そして落合君の言う通り、もう1チームすでに待機している。そのチームは――。
「四苑!」
「おお、姉ちゃん!」
尾関山さんが驚きのあまり声を上げた。そう、彼女の弟、四苑君のいるC4チームだったから。
「時間だ。集まったのは2チームか。さて、始めよう!」
先生側で待機していたのは確か体育の木戸先生。服からはじけんばかりの筋肉を持っている角刈りの先生だ。
「お前たちは今、成長期だ。だからこそ、体づくりは大切。特に筋肉、筋肉こそ至高!」
この先生の授業は1回受けたが、相変わらず見た目だけでなく、頭の中も筋肉のことでいっぱいのようだ。
そして先生からミニゲームの種目が発表される。
「ということで、今からお前たちは、ボートレースで競ってもらう。」
2024年現在、騒がれているSDGsって言葉は作中の2031年にはあるんだろうか。そんな細かいことが気になる作者です。
次回は9/14までに更新予定です。よろしくお願いします。




