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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第6章 オリエンテーション編Ⅰ
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第83話 因縁

祝、累計5000pv突破。数字としてはまだまだかもしれませんが着々と増えてきている。

とりあえずここまで読んでくれた皆様に感謝です。

それでは本編、どうぞ。


「いきなり、スタートとかびっくりしましけど。」

「まずは荷物置いて、作戦会議だな。」

 俺たちD2チームはオリエン開始後、真っ先に施設内の建屋に向かって通路を歩いている。この建屋の中には、自分たちの泊まる部屋、大浴場に食堂、さらに体育館や集まって話し合いのできるラウンジなどがある。そして入り口にピアノや有名画家の絵が飾ってあったりと意外と豪華な施設らしい。

「正直、不安もあったんですけど、九山君や千草さんみたいに知っている人が多くてよかったです。落合君や尾関山さんも、よろしくお願いします。」

「よろしくやで。」

「まあ、せいぜい足を引っ張るなよ。」

 ぺこりと一礼してあいさつするナユユに二人はそう返す。尾関山さんは友好的だが、落合君は言葉にとげがあるな。

「まあ、まずはどこ回るか考えないとだな。荷物を置いたらあそこのラウンジに集合しよう。」

 そうやって、男女別に分かれて部屋に向かう。俺は落合君と2人部屋。

「九山、なんでお前が仕切ってんだ。リーダー面かよ。」

「落合君、いやそんなつもりじゃないんだけど。リーダーは決めなきゃだよね。」

 落合君、なんかいつもピリピリしてるイメージなんだよな。焼肉会でもそこまで距離は縮まらなかったし、俺はうまくやっていけるんだろうか。

「落合君はこのイベント、すごくやる気みたいだね。」

「当たり前だ。妹の分まで楽しみ、そして腕輪は必ず持ち帰る。妹の退院祝いに。」

 だから落合君やる気なのか。確か妹の真奈さんは、4月末には退院のめどが立ったって焼肉会の時しゃべってたな。それと、彼に対する俺の苦手意識の理由もわかった。

『鋭人さんと似ているからですね。特に口調が好戦的なところと、シスコンなところが。』

 やっぱりノーデには見透かされているな。

 さて、チーム全員がラウンジに集合。同じことを考えたチームが3、4チームはいた。その中には。

「一誠!」

 そう声をかけたのはカナデ。つまりD1チームもこの場にいる。

「あれが優勝候補筆頭か。」

「とくに三好さん、副会長に負けたとはいえ、〝イセノ〟の実力はトップレベル。油断できないぞ。」

 ほかのチームからそうささやかれる声が聞こえてくる。しかしそれを気に留める様子もなく、カナデは俺に近づいていった。

「言い忘れたことがあって。」

「なに? カナデ。」

「いつか必ず取り戻しに行く、あなたに預けた十指選の指輪。だからそれまで、負けるな。」

 カナデは俺に拳を突き出していう。カナデなりの決意表明だな。

 そしてもう一人、声をかけたのは大数君。

『十指選右人、士義さんの子で、無限の巫女と同じ神杉家。まだ〝イセノ〟で戦う機会はなかったですが、確実に強いでしょう。要注意です。』

 ノーデもチーム分けが発表されたとき、真っ先にマークしていた。バスの中では、何か考えごとをしているように見えたけど、今は吹っ切れたみたいにまっすぐ俺を見つめている。

「九山君、僕は今日神杉家の名前に恥じないように、優勝してこいって言われてる。今はまだ、勝負しないけど、このイベント中には必ず勝負しよう。」

「そして私たちが勝つ。」

「そうっすね。」

「うんうん。」

「いいね、盛り上がってきたって感じ。」

 D1チームの本庄君、東城さん、伊原君も反応する。

「負けないよ。ほかのチームにも、カナデのチームにも。」

「そうだ、いつまでも負けてばかりだと思うなよ。」

 落合君もカナデのチームににらみを利かして言う。そういえば先週までカナデに散々勝負を挑んではやられていたから、恨みでもたまってるのかな。

「私も、負けません。」

「拙者も、やるからには全力だ。」

「うちも、初心者やけどやったるで。」

 ナユユ、千草さん、尾関山さんも。

『着々と因縁ができていますね。』

 そしてその様子を脳内空間から見守るノーデ、そしてラウンジの端で陰ながら見守るマークスリーさん。

 ちなみにこのオリエンでのノーデのスタンスは。

『私はよほどのことがない限り、このオリエン期間中は介入しません。本当は勝負したい気持ちもありますが、約束ですし――。実に残念です。』

 ということだ。でも、十指選の左手勢に勝つには、俺自身も強くならないといけないということはノーデも理解している。これは俺自身の実力を試す機会、ある意味一つの特訓だ。そして目指すは優勝、誰にも負けない。

 さて、作戦会議。まずはルール、マップ確認。

「むむむ、特性は使えぬのか。せっかくもう一度借りたというのに。」

 そういわれたら千草さんの腕輪、俺の家で戦った時の奴だ。

「公平性を担保するためには仕方ないですよ。」

 ナユユが慰める。まあ、確かに特性アリだと、特性もちが2人もいる俺たちのチームはかなり有利だからな。

「〝イセノ〟での勝負での勝ちとオリエンのイベントでの勝ちは微妙に違う。イベントを勝ち残るためには高レベルの技を多く集めるのが先決だ。でも、〝イセノ〟の勝負で使い勝手がいいのはレベル5以下の低級技、それもたくさんの種類を集めた方がいい。」

 落合君の指摘は的を射ている。高レベルの技はどれも使用条件が厳しいから1試合でそう何度も使えない。

「でも、同じ技は何枚でも集めていいんだね。」

「そやな。それなら高レベル技を何枚も集めたら、イベント自体は勝てるんちゃうか。」

「だがこれは予想になるが、そう簡単にレベルの高い技を見つけられるとは思えん。勝負で相手から頂戴した方が手っ取り早いのではなかろうか。」

「でもその、勝負を仕掛けるタイミングも考えないとですね。今回は相手チームに1回ずつしか勝負はできないので、早いうちに対戦してしまうと終盤になって、もう私たちのチームと対戦済みのチームが技板を多く持っていたとき、こっちは何もできませんから。」

 議論は加速するが、まとまる気配はない。

「とにかくまずは技板集めだね。マップ、確認しようか。」

「いや、さっきも言ったがなんで九山が仕切ってんだ。お前リーダーじゃないだろ。」

 俺もそこは気にしてたけど、このまま話し合いに時間を使うのもよくない。いつの間にか、ラウンジに残っているのは俺たちのチームだけ。明らかに出遅れている。

「それについてはじゃんけんで決めよう。ついでに、勝った順に指の担当も決めよう。」

「そういえば、十指五人ルールでしたね。」

「マップのことなんやけど、実はマップデータ先にみとったら、実はこの施設内にも1枚あってな、それ見つけたんや。」

 尾関山さんがそういっておもむろにポケットから透明な板を取り出した。

「尾関山さん、ナイス! ちょっと借りていい?」

 俺は腕輪に通して読み取らせる。この技板は、〝ルーレット〟。その名の通り、博打技だ。

「ちなみにどこにあったんですか?」

「その、入り口にピアノあったやん。そこの鍵盤の上にあった。」

 そんな堂々と置いてあったのか。いや、透明だから気付きにくいんだな。

「むむむ? マップに表示されている技板、思ったより少ないな。このオリエン全体で16チームあるというのに、表示されているのは10枚程度か。」

「たぶんこれ、チームごとに表示されてる技板が違うと思う。とりあえず近場から探そう。」

「だから仕切るな。話がまとまったのならリーダー決めてさっさと行くぞ。」

 落合君、俺にあたり強いな、なんか対抗意識でもあるんだろうか。まあ、ここは友好的に。

「じゃあ、じゃんけんしようか。」



 そしてじゃんけんの結果。

「わ、私がリーダー……。その、自信がありません。」

 親指担当ナユユ(リーダー)、人差し指担当が落合君、中指担当が尾関山さん、薬指担当が俺で、小指担当が千草さんとなった。

「なら、もう一度やり直すか。」

「落合君、決まったことにケチをつけるのはよくないよ。ナユユはちゃんとやれる。」

「そうだ、みっともないぞ。」

「九山君、千草さん……。」

 と会話しながら、施設内を出た後、俺たちD2チームはナユユを先頭に、森の小道を歩いていた。葉が風に揺れてかさかさと音を立てる。

 ふいにマップ担当となっている尾関山さんが足を止める。

「ストップ、ここらへんなんやけど。」

「え、ここ? 見渡す限り木しかないけど。」

「むむ、あそこに怪しい木箱があるぞ。」

 千草さんがある1つの木を指さした。その言葉に落合君が瞬時に反応し、木箱の近くまでいくが。

「ちょっと高いところにあるね。」

「これくらい。」

 そういって落合君はするすると木を登り、木箱ごと持ち帰ってきた。

「さすが、得意科目体育いうてるだけはあるな。」

「わ、私にはああいう木登りできないです。すごいです。」

「今更見直したか?」

 そういって俺にたいしてはドヤって顔をする落合君。これ、間違いなく俺に対抗意識燃やしてるな。

「拙者もあれくらいのことはできる。」

 そして千草さん、落合君に対してあたり強くないか。

 まあ、それはそうと。

「これ、いやらしいね。木箱の中に1枚入っているのはそうなんだけど、まさか、木箱の裏の木と接しているところにも1枚あるなんて。木箱ごと持って降りるのは正解だったよ。」

「じゃあ、さっそく何の技板か確認してみるか。」

 と、落合君が腕輪に通して何の技板か確認しようとした時だった。

「おうおう、ちょうどこんなところに。九山一誠、俺を覚えているか?」

 俺たちの進行方向反対側から、別チームがやってくる。その中のリーダーと思しき坊主頭の人物が声を荒げながら言った。

 というか、俺を名指し。なんとなく顔に見覚えある気するけど。

「ごめん、誰だっけ?」

「おいおい、昨日、それと3日前の2回も〝イセノ〟で戦ったのに顔も覚えてないのかよ。」

 あ~、これたぶんノーデと戦った人だな。たくさんいたからな。

「名前がちょっと思い出せなくて。」

河佐(かわさ)京弥(きょうや)さんですね。確か、B2チームでしたよ。』

 ノーデ、俺に言わせた後で言うのはずるいだろ。

「なら、忘れられないようにしてやるよ。」

 河佐君は俺たちを指さし宣言する。


「勝負しようぜ、D2チーム。」


文章量長めになりました。この章は書くことが多いので仕方ない。

そして、テンポよくいこうとしてどうしても言葉足らずになってしまいがちになるかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです。

次回8/10までに更新予定、よろしくお願いします。

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