第82話 オリエン開始
サブタイトル通り、始まります。
それでは本編です。
「では、班分けを発表します。」
山道を走るバスの中、俺を含めはしゃぐD組メンバーの声に負けじと、担任の八田先生がこちらを向いて、声を大にする。
「D組は各5人ずつ、計4チームです。まず、D1チーム。伊原、神杉、東城、三好、本庄。D2チーム、尾関山、落合、九山、塩町、近田。D3チーム……。」
俺はD2チームか。メンバーも尾関山さん以外とは割と話す方だし。落合君はまだちょっと気軽に話せる仲とまではいってないけど、大丈夫だと信じる。
そういえば尾関山さん、皆が席に着き、バスが出発する直前に話題になっていた。
「尾関山、あなたの荷物の中で一つ変なものが混じっていましたよ。」
「変なもん? ギターのことですか? このオリエンで披露しようと、事前に申請もしたんやけど……。」
関西弁のイントネーションでしゃべる尾関山さん。確か、自分のことを知ってもらうための企画として自己アピールの品を1つ持ってきてもいいってことになっていたけど。尾関山さん、まさか楽器を持ち込むとはな。
でも、問題はそこじゃなくて。
「そのギターケースに入っていたのは――。」
八田先生の視線の先、バスの扉のステップから姿を現したのは、人。尾関山さんと同じ黄色のショートカットの子。見たところ、小学生、いや園児か。
「ごめん姉ちゃん、見つかっちった。」
「四苑、なんであんたが……。」
「えっとですね、ギターケースに入っていた彼をそこのボディガードさんが見つけてですね。」
と、八田先生が目をやったのが、千草さん、の隣に座っているスーツ姿の屈強な大男。
「アヤシイヤツハ、ノガサナイ。」
マークスリーさん、ちゃんと仕事してるな。
「えっと、まず尾関山の弟さん、であってますよね。」
「尾関山四苑、5歳です!」
大きな声ではきはきとしゃべる四苑君。恥ずかしさを知らないのか、堂々としてるな。
「れっきとしたうちの弟です。あんたはもう、何やってんねん。」
「その、このオリエンって割と有名で、ちょうごうかしょうひん? っていうのもあるから気になって。」
超豪華賞品、初耳なんだけど。俺も気になってきた。
「ちょい待って、じゃあ、私のギターは?」
「ごめん、姉ちゃんが家出る直前に入れ替わったんだけどその、邪魔だったから。置いてきちゃった。」
「どおりでちょっと重いなと思ったんよ。確認しときゃよかった。」
申し訳なさもちょっぴり交えた笑顔で言う四苑君、対して尾関山さんは悔しさをにじませる。
「それでどうします? 通例ならこのまま置いていくんですが……。」
「そうやな、母さんや幼稚園の方にも連絡せんとあかんし。」
「お姉ちゃん……。」
八田先生や尾関山さんに対し、涙と純粋な瞳で訴える四苑君。
「そんな顔するなや。」
と尾関山さんが言っても続ける四苑君。
「しゃーないなあ。先生、どうにか一緒に行くことできませんか?」
「……仕方ないですね。」
「ありがとう、姉ちゃん、先生。」
と、目を輝かせながらお礼を言う四苑君。しかし、ノーデは一瞬の表情の変化を見逃さなかった。
『なかなか、狡猾ですね。』
あとで、俺も脳内空間で自分の視界映像を見返すと、ほんの数秒、してやったりという顔をしていた。こいつ、なかなか侮れない5歳児。
「まあ、ちょうどC組の落合真奈さんが欠席ということですから、人数合わせでそちらのチームに入ってもらいましょう。」
「え~、お姉ちゃんと一緒がいい。」
「駄目です。」
「どうしても?」
「駄目です。」
八田先生は、小さい子供でも妥協しないところは妥協しないらしい。
「ついたら、しおりの日程通り、駐車場の一角で整列して開校式になります。そのあと、イベントについては先に現地で準備している生徒会の皆さんからの説明がありますからよく聞いといてください。」
イベントは気になってた。オリエンのしおりには日が落ちてからの予定は食事、入浴、睡眠etcと細かく記載があるのに、肝心の日中の時間帯はイベントの4文字だけ。
「どんなこと、するんだろうね。」
「さあね。」
気軽に話しかけたつもりが。隣に座っている大数君の顔はちょっと曇っていた。
「ではオリエン全体のルール説明、これから皆さんには最後の1チームになるまで戦ってもらいます。」
開校式の後、生徒会メンバーが勢ぞろいの中、万倉先輩がいった初っ端の一言。なんかデスゲームっぽい。
「やることはざっくりいうと宝探しですねぇ。ただ皆さんに探してもらうのはこれです。」
そういって、上戸先輩が見せるのは、小さい透明な板、技板か。ただ端の方にシールが貼ってあるな。
「こちらが用意した、この近芽台生徒会のシール付き技板、これを集めてもらいます。この技板はもちろん、〝イセノ〟の勝負で使えるものです。というか、今回のオリエンではこの技板しか使えません。」
つまり、せっかく自前で持ってきた俺の技板は使えないのか。ちょっとショックだが、自己アピール用と思うことにしよう。
「技板はこの施設内のいたるところに散らばっている。今回は明日のイベント終了時まで、集めた技板すべての技のレベルを合計した数値が最も高かったものが優勝となる。」
梶田会長もいるのか。中学の行事というのに、ちゃんと高等部の会長までいるということは、相当力の入っている行事なのだろう。
「そして、優勝賞品は、なんとこれですぅ。」
と、上戸先輩はこの開校式開始前から意味深に置かれている小ケースのマントを取り去る。中身は、
「腕輪……。」
「そう、特性付きの腕輪ですぅ。本来なら十指選のみしか授与されない特性、これをゲットするチャンスですよぉ。」
たしかに、これは四苑君の言う通り、超豪華賞品だな。
「続いて〝イセノ〟のルール説明。このオリエンで〝イセノ〟をする際は、十指五人というルールで行います。」
「十指五人、なんだそれ?」
落合君の疑問に答えるかのように、万倉先輩たちが答える。
「簡単に言うと、十本の指を親指役、人差し指役、中指役、薬指役、小指役と分けてそれぞれ一人2本分担当して動かすということね。」
「チームワークが試されますよぉ。」
チームワークか。少なくとも、班の中でコミュニケーションをとって足並みならぬ手並みをそろえないとだな。
「オリエン仕様技板のサンプルとして皆さんのチームには〝手術〟の技板を配布します。もちろんこれを勝負に使ってもOKです。」
「裏事情を言うと、〝手術〟はレベル0、つまり誰も集めたがらないから先に配布しちゃいます。ついでにマップデータと詳細なルールのファイルも皆さんの腕輪に転送しますね。」
上戸先輩は自分の腕輪を操作し、数秒後、着信音が一斉に鳴り響く。同時に生徒会役員たちが各チーム1枚ずつオリエン用の技板を配布。
「あとのルールですがぁ、一回の勝負で使えるのは公式ルール通り、ターン数込みでレベルの合計が100までですぅ。勝負は技板のトレードや略奪をかけてよし。そしてこのイベント中、いつ仕掛けても構いませんが、一度勝負をしますと勝負したチーム同士の対戦はこのイベント中は行えませんので注意してください。期限は明日15時までです。それでは、位置についてぇ。」
銃らしきものを上に掲げる梶田会長。えっ、待って、もう始まるの。
「よぉぉい!」
直後、パンッ、と銃声。
心の準備が整わないうちに始まった。
周りには、「やるぞ!」と叫ぶ人、俺のように戸惑う人、さっそく作戦を立てる人、いろいろな人がいる。ただ、この銃声を合図に、全員が一斉にその場から動き出していた。
ギターケースに子供一人入れる隙間はあるのか、作者はあると信じます。
次回は8/3までに更新予定です。よろしくお願いします。




