第78話 四度目
今回は若干ミステリーチック。
それでは本編、どうぞ。
「すごい、また当てた。」
観客も騒ぎ出している。
九山はもうスポーツ選手でいうゾーンに突入したように、数あてを外さない。これで5連続、はっきり言って怖いくらいだ。
だが、それも無意味。
〝究極化〟が発動中の今、どんな手段を講じたところで抜けられるわけがない。
「ひやひやさせるようなこといいやがって。」
三度目の正直、そして〝究極化〟の弱点を見抜いたような口調だったが、やはりハッタリだったようだな。
俺の背後の仏は座禅を組み、常に微笑んでいる。逆にここまで来たんだ、微笑んでくれなければ困る。
「何回当てようが、現状を変えられてない時点で詰みなんだよ。」
俺はあの後〝手術〟を2回して10pt。お前の指をすべて固めるこの技を打てるぞ。
「【るせーどーで〝サンシャイン〟】」
Turn 47
Tasku 10→0pt Node 0pt
【〝sun shine〟Lv.5(U)】
R●●●●● R○○○○○
L○○○○○ L○○○○○
眩い太陽の光が、ノーデの両手をすっぽり飲み込み、焼き尽くす。
「ついについにぃ、九山君の指は全滅っ!」
「さすがにもうだめか。」
解説からも、再び聞こえるあきらめの声。
「いい加減、負けを認めろ。」
『それはできません。それより弼さん、〝サンシャイン〟をその手の形で放ってよかったのですか?』
「……何の話だ?」
『あなた、さっきから動かさなくてもいい指を上げ下げしていますよね。』
それは俺も何となく思ってたけど……。
「それが、何だっていうんだ?」
『違和感を覚えたのは27ターン目の〝雨〟。弼さん、あの時自分で自分の指を固めに行きました。私は最初〝ツインパワー〟狙い、もしくは先ほどまでしていた〝手術〟でポイントをためるためと考えていました。』
ノーデのこの口ぶり。
わかったんだな、三度目の正直、そして〝究極化〟の弱点が。
『しかし、それなら〝究極化〟で私の攻撃、数あてが効かないとわかっていて尚、指を上げ下げする理由はありません。それに今までのプレイング、例えば掛け声のフェイク、〝オーロラ〟による〝ツインパワー〟、〝スーンシールド〟からの速攻〝究極化〟、そして私が指を回復させてもすぐに別の手で固めにかかる切り替えの早さ。これらすべて思い付きでするのも無理があります。このことからもあなたは相当な準備を整えてそれを冷静に実行している、そんな人が調子に乗って指を動かすだけというのも考えにくいのです。』
ノーデはまるで探偵のように、謎ときを披露する。
「何が言いたい?」
対する落合君は強気で応じるが、ノーデは核心をついた言葉で返す。
『あなたがそれでも指を動かそうとする理由。それは〝ツインパワー〟を起こしたくないから、でしょう?』
ノーデの言葉を聞いた観客の視線は落合君に集まっていく。そして当の本人は目を見開いて顔色を変え、無言になる。
「な、なんとぉ! これは?」
「潮時かな。」
上戸先輩は府中先輩の目の色をうかがい、府中先輩は話す時だと決めたようだ。
「〝究極化〟、この技はそもそも使える人も少ないから永遠に無敵と思っている人も多いんだけど、実は解除条件もあるんだ。それが、〝ツインパワー〟の発生。一度でも起こると〝究極化〟は終わる。」
そうか、言われてみれば。点と点がつながっていく。
落合君は〝究極化〟発動直後から〝ツインパワー〟を避けるために指を動かしていたんだ。今の〝サンシャイン〟だって、落合君自身が上げた状態で放てば確実に〝ツインパワー〟だったけど、それをやってしまうと〝究極化〟がなくなるから、やらなかった。
「まあ、完璧なものなんてないってことね。大事なのは弱点をどう補うか、でしょう。」
万倉先輩が言うと、なんかしっくりくる。
「たとえ……。」
落合君は必死に言葉をひねり出す。
「たとえそれに気づいたとしても、今かかった〝サンシャイン〟の箇所を俺が下げ続ければいいことだ。」
『そうですね、お互いの指の上げ下げを完全に一致させなければ、〝ツインパワー〟とはなりませんからね。』
「確かにそうっすよね。九山っちはどうやって〝ツインパワー〟を起こすつもりなんっすか?」
本庄君、実は俺もどうやって起こすのかわからない。
いやでも待てよ。あとやれることといえば。
昨日聞いたやつ、できるのか……。
『【いっせいのーで〝11〟】』
Turn 48
Tasku 0pt Node 0pt
【〝11〟】
R●●●●● R○○○○○
L●●●●● L○○○○○
「外した!」
「おっとぉ、九山君、ついに集中力も切れてしまったか。」
「さっきの特性の謎解きをしたときはおっとおもったけど。やっぱりだめか。」
私の宣言に驚く声、心配する声、落胆する声。
「はは、ははははは。ついに運も尽きたか。」
弼さんは調子を取り戻しましたね。
「俺は先に抜けさせてもらうぜ。【るせーどーで〝10〟】」
弼さんは数をあて、右手を抜きます。そしてここが、最後のチャンス。
「えっ、どうしたの九山君。こんな時間に。」
「いやその、すみません。本庄君と一緒に昨日見れなかった部も見学してて、この時間になっちゃいました。」
昨日の放課後、イセノ部部室にて。下校時間直前、府中さんと一誠の2人きり。
「いいよいいよ。連絡くれてたし、後輩の頼みだからね。それで何? 聞きたいことって。っていっても僕の特性教えてとかはさすがに無理だよ。」
「いやその、友達が〝イセノ〟のルールで、これやっていいのかなって気になっていることがありまして。府中先輩なら知っているかなと。」
「ほう。でもそれって明日九山君との試合を控えている僕に聞いていいこと?」
「まあ、たぶん明日は使うことはないと思いますし……。あくまで、友達の話なので。」
まあ、友達というのは私、ノーデのことなのですが。そう断って一誠は質問内容を話します。
「面白いこと、考えるね。」
「それで、どうですか?」
「結論から言うと、それはアリだ。」
「即答、ですね。」
「だって小学生のとき、俺がそれをやられて孤空さんに負けたからね。ただ一つだけ条件があるんだ。」
「条件? それは?」
「必ず掛け声をつけること。」
聞いといてよかったですね。
『【いっせいのーで〝タイムスリップ〟】』
Turn 50
Tasku 0pt Node 0→5pt
【〝time slip〟Lv.3】(T.P)
L●●●●● L●●●●●
「……。」
言葉を失う落合君。
「〝ツイン」
「パワー〟だ。」
逆に道上先輩と本庄君は息ぴったりに叫ぶ。
「昨日質問を受けたんだ。〝手術〟以外の回復効果のときに〝ツインパワー〟を起こせるんですかって。でもまさかこんな形で起こすとは。」
「さっき落合君が数あてを成功させて片手のみになったとき、かたや九山君は両手ですから、いよいよ〝ツインパワー〟は起こらないって確信したんですが、ものの数秒でひっくり返されましたねぇ。」
「そしてこれで……。」
解説の先輩たちも、観客も巨大な仏像に目を向ける。
『仏の顔も三度まで。』
ノーデの言葉に、落合君は咄嗟に後ろを振り返る。
『四度目はない。』
崩れ去っていく三度目の正直、そして徐々にオーラの勢いが弱まっていく〝究極化〟の衣。ものの十秒足らずで跡形もなくなった。
落合君はその様子を呆然と見つめる。そして手の力が抜けたのか、ダランと垂らす。
『弼さん、まだ勝負は終わっていませんよ。』
ノーデの言葉に落合君は我に返る。
「言われなくても。【〝トリック〟】」
『【〝シールド〟】』
これでノーデがさっきの〝ツインパワー〟で得たポイントもなくなった。お互い0pt、〝究極化〟は消え、片手。1回でも当てた方の勝ちだ。
「【るせーどーで〝2〟】」
落合君の数あては、外れた。
『やっと来た、最初で最後のチャンスです。当てさせてもらいます。』
ノーデは宣言する。
『【いっせいのーで〝0〟】』
何気に今まで書いてきた試合中で最長ターン数となりました。
果たしてノーデの宣言は当たるのか。
この続きは6/22までに更新予定、よろしくお願いします。




