第75話 2度あることは3度ある
この前書きもそうですが、初めの言葉って大事ですよね。
はじめで盛り上げれば流れにのって盛り上がっていけるし、逆にしくじるとその後の話にも影響する。
さて前回の続きですが、準備はいいですか。
それでは本編どうぞ。
2回目、ですか。
この試合、12ターン目までで2回起こっていることといえばやはり、〝ツインパワー〟。
「なんか、弼っち焦ってなさそうっすね。〝ツインパワー〟が起きてポイントが開いたっていうのに。」
「むしろ好都合だからね。」
うすうす私もそうだろうと思ってはいましたが。 道上さんの言い方は気になりますね。まるで
「先輩は知ってるんすか? 弼っちの特性。」
「元は部長のだし、当然知ってるさ。あの特性は……。」
「発動させたらほぼ無敵。だから――。」
「はあい、ストップ。それ以上はネタバレですぅ。」
万倉さんの横からの発言を、さらに横から上戸さんが遮りますが、その続きは容易に想像がつきます。
発動させたらほぼ無敵。だから発動を封じるしかない。
ではその発動条件とは。それをカナデさんが私と同じタイミングで考えていたようです。
「条件は〝ツインパワー〟でしょうね。」
その言葉に真っ先に反応したのはナユユさん。
「確かに私も、そう思いました。部長さんの使っていた〝蜃気楼〟だって〝ツインパワー〟と相性がいいし……。でも、私が部長さんと戦った時、〝ツインパワー〟は発動してましたけど、何も起きなかったのが引っかかります。」
「そのときの試合を見てるわけじゃないから断言できないけど、それはたぶん……。」
〝ツインパワー〟の回数が足りなかったのでしょう。
さっきの弼さんの表情、言葉から確信できました。弼さんの特性はある規定回数、〝ツインパワー〟が発生しないと起動しない。そしてその回数はナユユさんと府中さんの試合で発動しなかったこと、現在何も起きていないことから察することが可能です。2つに共通するのは〝ツインパワー〟が2回発動していること。このことから最低3回、もしくはそれ以上の発動で特性を起動できると推測できます。
要するに話をまとめると、これ以上、〝ツインパワー〟を起こしてはいけないということになります。私が起こさないのはもちろん、弼さんに起こさせてもダメです。
この場合、真っ先に警戒しなければいけないのは、万倉さんも使っていた強制的に〝ツインパワー〟を発生させる技、〝日食〟ですね。たしかあの技の使用条件は、消費コスト5ptに上げて固まっている指の本数が同じというもの。そして今まさに条件は整っています。
ここでやられて、特性の発動条件が3回であればかなり厳しいですが。
「【るせーどーで〝ビーム〟】」
相も変わらず、弼さんは私の左薬指に当ててきます。〝日食〟を使わないのは温存しているのか、それとも使えないのか。しかし、何らかの手で〝ツインパワー〟を狙ってくるでしょうから警戒しないといけません。
『【いっせいのーで〝雨〟】』
弼さんはさらに2か所かかり、計4か所下げて固まります。
「【るせーどーで〝雨〟】」
なるほどそう来ましたか。
Turn 15
Tasku 5pt Node 15pt
【〝rainy〟Lv.1(S1)】
R○○○○○ R●●●●●
L●●●○● L●●○○●
一気に8本固められた。さすがにこれはノーデといえど、防ぐしかない。
『【〝シールド〟】』
ノーデは迷いなく宣言し、〝雨〟の水滴を光の壁ではじき返す。
「こ、これはぁ。」
「毎回掛け声をつけている落合君だからこそできるテクニックだね。」
「その通りぃ。普通、指の上げ下げが関係しない技は掛け声を付ける必要はありまぁせん。しかし、彼は今までそういった技にもすべて、掛け声ありで使っていましたぁ。これはつまりどこで〝雨〟といった、指の上げ下げが関係する技を打ってくるかのタイミングが読みづらくなる、ということですぅ。」
「まして、今までのように〝ビーム〟や〝レーザー〟といった1か所しか固めない技を連発している状況なら、指を上げる本数は少ないだろうしね。」
上戸先輩、府中先輩が掛け合いながら解説する。
「【るせーどーで〝ビーム〟】」
今度の落合君の攻撃はノーデの右中指に着弾、これで今ノーデの指で〝ビーム〟を受けて固まっているのは左薬指と右中指。左右非対称とはいやらしい。
『【いっせいのーで〝晴れ〟】』
Turn 18
Tasku 5pt Node 10pt
【〝sunny〟Lv.1(S1)】
R○○○○○ R●●○●●
L●●●○● L●●●○●
『この指の形は。』
「おっと、今度は一転。落合君の方が薬指のみ動く状態にぃ。」
「九山っちも負けてないっす。」
「〝シールド〟を使う……?」
「いや。」
カナデさんの言葉を万倉さんは否定します。動くのが薬指、そしてこのタイミングならおそらく使うのは
「【るせーどーで〝電気ショック〟】」
その言葉とともに弼さんの指を電撃が覆い、固まっていた指は自由に動き出します。
「ここでぇ、〝電気ショック〟。薬指のみ動く状態、そして自分のターンで数えて9ターン経過しないと使えませんからぁ、えっとぉ、ちょうどジャストタイミングですねぇ。」
上戸さんはリングの機能で今までのログを確認しながら解説しています。
「ちなみにあれは僕の技板です。」
確かに府中さんはナユユさんと戦っていた時も使用していましたしね。そしてどうやら弼さんは、もらったばかりの技も使いこなしているようです。
「使えるものはすべて、使わしてもらうぜ。」
弼さんがそういうということは、それだけ必死ということでしょう。
さて、私の番。弼さんはすべての指が動くということは必ず〝ツインパワー〟を狙ってきます。でも当然それは私も警戒しており、そのことを弼さんも理解しているはずです。
つまり、指の形の、探り合いです。
『【いっせいのーで〝晴れ〟】』
Turn 20
Tasku 5pt Node 10pt
【〝sunny〟Lv.1(S1)】
R●●○●○ R○●○●●
L●●●○● L●●●○●
ノーデは右親指が追加でかかり、落合君は3か所かかっている。落合君は狙って上げたけど〝ツインパワー〟ならずといった感じか。
そしてノーデは今まで落合君の特性を警戒しつつも、着々と攻める準備を整えていた。そしてさっきのターンの〝晴れ〟で〝狐雨〟の条件は満たした。そして10ptあるから〝ブラックホール〟も打てる。対して落合君は5pt。〝シールド〟1枚しか張れない。次が攻め時だ。
『こういうときが一番危ないんですけどね。』
ノーデが一瞬目を閉じて、俺のつぶやきにコメント。俺も勝ちが見えた時、油断してしまう気持ちはわかる。落合君の特性だってわからないし、気を抜いてはいけない。
だけど、普段と違うことが起きた時、咄嗟に反応できない。
「【〝オーロラ〟】」
掛け声なし、だと。
Turn 21
Tasku 5→10pt Node 10pt
【〝aurora〟Lv.3(S1)】(T.P)
R○○○●○ R○○○●○
L●●○○● L●●○○●
赤、緑、青の光の3原色が織りなす、幻想的な光景。そしてそれぞれの色が強く出ている光が私の3か所の指を固めます。私が咄嗟に反応できた右人差し指も含めて。
「3回目、やっときた!」
弼さんが嬉しさをあらわにしている。十中八九、特性の条件を満たしたとみていいでしょう。
「まさか、これで反応してくるとはな。だが、ちょうど〝オーロラ〟で指定する指の位置で助かった。」
『右の人差し指だけしか、反応できませんでしたね……。』
〝シールド〟も判断が遅れました。いや正確には、宣言後の10秒間のうち、残り3秒でぎりぎり宣言はできたのでしょうが……。弼さんがここまでして使おうとしている特性を見たいという好奇心が勝ってしまったのもあります。
「〝オーロラぁ〟、〝ビーム〟3回で発動できぃ、相手の動く指を3本まで指定しぃ、上げた状態で固める技ですぅ。そしてまさかまさかぁ、こんな形で〝ツインパァワー〟を起こすなんてぇ!」
「〝オーロラ〟は3本まで確定で上げた状態にできるから〝ツインパワー〟を狙いやすい技だといえる。そしてこの技そのものに指の上げ下げは関係ない。今まで宣言していた掛け声を急になくして不意を突き、〝ツインパワー〟を狙ったのは見事だ。うちの部に入ってほしいくらい。」
「あのぉ、本音が漏れてますよ。」
盛り上がる解説、観客、そしてそんな中で高らかに宣言する弼さん。
「いくぜ、特性発動!」
この作品における、初めの言葉って掛け声ですよね。ということで前書きでああいう風に書きました。
今回の話はこれがキーなので。
次回は6/1までに更新予定です。よろしくお願いします。




