第73話 一筋の光
皆さん、GW休めましたでしょうか。作者は普段の仕事疲れはリフレッシュできたと思います。ただ、このお話の方はですね、実は今回の話も書けたのぎりぎりで。
それでは本編です。
「勝負しに来たって……。」
この場の皆、呆気にとられている。かくいう俺もそう。俺、いやノーデの相手は府中先輩のはずだ。
「アンタのつけてるその腕輪……。」
「これか、府中先輩のものだぜ。」
万倉先輩の問いに、落合君は腕輪を見せつけながらはっきりと回答した。つまり、ノーデの対戦相手は。
『弼さんということになりますね。』
「これは真奈殿を救うため、拙者の母と相談して決めたことだ。」
落合君の後ろから、大きな声が響き渡る。入ってきたのは落合君だけじゃないようで、その声の主は。
「千草さん!」
思い返せば、カナデと万倉先輩の勝負のときも見かけなかったな。
「今までどこにいたの?」
「カナデ殿、応援できずすまなかった。つい先ほどまで母と話していたのだ。」
「えっ、千里さんも学校に来てるの?」
「ちょうど学校関係の用事もあったらしくてな。今まさにあそこから母も見ている、これから始まる勝負の行く末を。」
千草さんは3号館の上を指さす。校長室のあたり、ちょうど窓に一人の女性が立ってこちらを見つめている。
「それで、さっき言っていたのはどういうことかしら?」
万倉先輩は千草さんに質問をぶつける。敵意をむき出しにして。だけど、千草さんは物怖じする様子もなく答える。
「弼殿の妹、真奈殿の手術はあと3日以内に行わないと厳しいという話は覚えておるか。」
「そんな話、あったわね。」
「医者は奈湯殿の父のつてでめどがついたのだが、手術費用が高くてな。拙者は我が塩町グループで補填するしかないと考えたが、拙者の一存で決めるにも額が額で、社長である母の許可が必要だったのだ。しかし、母は知らない人間の手術費用を全額負担するほどお人よしではなく、認めてくれなかった。」
「だから、僕が合間に入って提案したんだ。」
もう一人、サブグラウンドの中に。その人は本来の対戦相手。
「本町!」
「投資をするからにはそれ相応の価値を示さなければ金も人も動かない。そして僕たち学生がてっとり早く価値を示す方法はただ一つ、〝イセノ〟に勝ち、十指選になるだけだ。」
「何言っているのよ? 本来この場はアンタと九山君の対決でしょう。さっさと腕輪を取り返して勝負……。」
「万倉、ごめんね。せっかくこの場を用意してくれたのに。でも、落合兄妹の事情を聞いてると僕よりも彼の事情を優先すべきと思ったんだ。」
「だから譲ってあげたいと? でも本当にそれでいいの、本町君? 正式に十指選の座が空いた今、九山君に一番乗りで挑めるまたとないチャンスなんだよ。」
上戸さんも府中先輩に確認を取る。
「もともとルール改定という一つの目標を達成して、燃え尽きてスランプ気味だった俺よりも、弼君、真奈さんのような未来ある若者にチャンスをあげる方がよっぽどいいよ。」
「いや、アンタも未来ある若者でしょう。」
「まあ、そうだけど。今回は僕じゃない、彼の番だよ。」
府中先輩はまっすぐ万倉先輩をみつめる。迷いのない目、その目に当てられた万倉先輩は短い髪をわしゃわしゃ触りながら言った。
「ああ、もうわかったわよ。今回はそれでいいわ。」
「私も副会長に同意ですぅ。本町君がちゃんと考えて決めたみたいなので。」
「ただ、落合君、負けたら許さないわよ。」
「はなから負けるつもりはないぜ。それに先輩のおかげで、技も強化されたし、特性も使えるしな。」
万倉先輩に指をさされた落合君は自信ありげ、そしてさっきの言葉が事実なら、強敵だ。
『むしろ、燃えますよ。』
そしてノーデの闘志にも火がついている。
「ああ、そうだ。九山、わざと負けるとかはなしだぞ。俺の価値を示せないからな。」
「う、うん。」
とはいったものの、正直俺が勝負していたならやりにくいと思う。落合君は妹を助けたい。でも俺が負けたら、士義さんがいった夏の手術の件は白紙、ノーデを助けるのも難しくなる。結局、俺も落合君も誰かを助けたいという根っこの部分は同じなんだ。
『私は手を抜くつもりはありません。しかし一誠はどうですか。もし一誠が望むなら、程よく手を抜き、負けることも考えますが。』
脳内空間、ノーデも俺に確認をとる。入れ替わり前の、最後の確認。俺はちょっと悩んで決めた。この決断が本当に正しいかどうかはわからないけど、今の正直な気持ちは。
「これはお前を助ける手術もかかってる。落合君の気持ちもわかるところはあるけど、ノーデと落合君の妹さん、どっちがいいかって言われると……。お前とのこれからに不安があった俺からすると、この試合、ノーデに勝ってほしい。俺はこの先もずっとお前といたいんだ。」
これが今の、俺の答えだ。
『それはうれしい言葉ですね。なんだかそんなまっすぐ見つめられるとプロポーズされている気分ですね。』
「こんなときに、何言ってんだよ。」
『顔を赤らめて、かわいいところもありますね。』
そういってノーデは俺の頭をなでてくる。
「なでるなよ。」
『一誠の気持ちはわかりました。ならその気持ちに全力で答えるのが私の役目です。じゃあそろそろ、変わりますか。』
俺の頭に置いた手を放すノーデ。こいつの表情も自信ありげ、なんだかちょっと安心する。
「ああ。」
俺はそこから、ノーデに託すことにした。自分の体と、未来を。
「府中先輩、アンタには感謝してる。これでやっと、妹を助ける希望の光が見えてきた。」
「いくら技や特性で強化されたとしても油断は禁物だよ。九山君は強いから。」
『弼さん。』
府中さんと弼さんの会話の後、私は本日、現実世界で第一声を発しました。
「なんだ、急に呼び方変えて。」
『同情はしますが、こちらも負けられない事情がありまして。勝たせてもらいますよ。』
「望むところだ。」
薄暗いサブグラウンド、スポットライトが私と弼さんを照らします。装着した腕輪に技板を通して準備完了。
「さあて、それでは先攻後攻は先ほどの試合同様、コイントスで決めますよぉ。」
復活した上戸さんの解説。そして先の試合と同様、コインが投影され宙に舞います。表が弼さん、裏が私。水平になったコインの上面は、表。
「先攻はもらう。」
『どうぞ。』
「それでは試合、はじめぇぇえ。」
「【るせーどーで」
上戸さんの開始宣言直後、弼さんは人差し指を私の方に向け構えをとります。そして指を鳴らしながら宣言。
「〝ビーム〟】」
今回は途中から一誠→ノーデに視点が変わっています。一応体の主導権が移動したのでそれでわかるかなと。
さて次回は、勝負内容が詰めれてないけど間に合うのか。一応、5/18までに更新できるよう努力します。(ダメだったらめったに使わない活動報告で現状報告します。)よろしくお願いします。




