第68話
今回は前回からのバトルの続きです。
サブタイトルがない、と思った方。大丈夫、わざとです。作者からのお願いですが、できれば今回は最初から読んでいただき、最後の方を最初に見るということはしないことを推奨します。
それでは本編どうぞ。
万倉さんの宣言とともに、腕輪に垂れ下がる技板の1枚が赤くきらめいて、左の上がっている指先から出現する赤い炎。
「さあて、どの指にしましょうか。」
彼女はカナデさんの指の状態を確認し、狙いを定めます。
「決めた。三好さんの左親指へ向けて、発射。」
躊躇なく放たれる炎。
「万倉副会長の〝烈火〟が三好さんに向かう。しかし三好さんは〝ハーフゴッドウォール〟が発動中、しかもこのターンは防御があるターン、並みの攻撃は効かないはずですが……。」
道上さんの解説通り、金色の壁は依然カナデさんの前にそびえたっています。しかし炎は止まりません。炎と壁はぶつかり、重なり、すり抜けます。
「〝ハーフゴッド〟を、貫通した!」
一誠を含め、何人かは驚きの声を上げます。カナデさんも表情を見るに、想定通りではなさそうです。
「この技はS2の上げて固める技、防御力S1なら防げない。」
「なら! 晴れの神発動!」
カナデさんの言葉とともに、背後に出現する晴れの神。神々しい姿の彼女は手を広げて念じ、炎を止めようと試みます。
「三好さんは自分の特性を発動させました。どうだ!」
「これなら。晴れの神の効果で上げて固める技はすべて無効だ。」
そんな道上さんや一誠の発言をあざ笑うかのように万倉さんは発言。
「でもそれは、天候系に限った話。」
無情にも炎はその勢いを損なわずに、狙い通り着弾するのです。
Turn 15
Miroku 5→0pt Kanade 3pt
【〝rasing fire〟Lv.3(S2)】
R●●●●● R●●●●●
L○○○○● L○●●●●
「さあて、昔話が中断となると、出番ですかね。道上君、交代です。」
「は、はい。」
上戸先輩はベンチから立ち、道上さんがいたポジションに移動。マイク付きのヘッドホンを装着して解説し始めた。
「解説は上戸に戻りまぁす。副会長の放った〝烈火〟は手術ポイント5pt消費して放てる技。相手の指1本を指定し、上げた状態で3倍で固めます。そして何よりこの技の系統は自然系。三好さんの特性の効果対象外となる技ですぅ。」
解説を聞き、カナデは自分の左親指を見つめる。火は徐々に収まり、大やけどの跡が残る。
「私の知る限り、あなたは〝大手術〟や〝電気ショック〟みたいな2倍、3倍固めの箇所を1発で治せる技はもってない。だってあなたは攻撃を防ぐ防御技がメイン、回復技は必要ないものね。」
〝イセノ〟で入れられる技はターン数込みでレベルの合計が100まで。カナデは防御技に振っている分、他の技が少ないのは事実だろう。
『それに特性、晴れの神もあります。ですからたいていの攻撃は防ぎきれてしまい、回復までさせる必要がないのでしょうね。』
ノーデが俺の心(脳内空間)の声に補足を入れる。
「よく研究してるのね。」
「勝つには相手のことを徹底的に調べないとね。これで少なくともあなたのターンで数えて3ターンは私のポイントをとれないわよ。」
「万倉さん、今あなたのポイントは0、とる必要すらない。それにちょうどいい。」
「何が?」
「【いっせいなで〝5〟】」
カナデがいきなり宣言。
両者ともにさっきのターンと同じ指のあげ方だ。本来、当たっているはず。だけど、カナデは片手を抜けられていない。俺との勝負の時みたいに、数あてが無効になっている。
「人が話しているときに……。」
「別にルール上問題ないでしょ。」
万倉先輩は唇をかみしめる。
「あなたの特性の謎、明かしてみせましょう。ちゃんと数当てで当ててね。」
「【いぃせーので〝晴れ〟】」
Turn 17
Miroku 0pt Kanade 3pt
【〝sunny〟Lv.1(S1)】
R○○○○● R●●●●●
L○○○○● L○●●●●
「副会長、なんと自分で自分の指を、8か所も固めたぁ!」
「やれるもんならやってみなさいよ。」
熱が入る上戸さんの解説、そしてカナデさんの挑発に乗る万倉さん。
「しかも今の攻撃、このターン〝ハーフゴッド〟の防御はないのに〝晴れ〟を使った。カナデに効かないことを計算して。」
「自分だけが、ポイントを貯められるように……。」
「よほど自信があるのさ、数あてが当たらないっていう自信が。」
一誠のボヤキにナユユさんと道上さんと現在ここにいるイセノ部メンバーが反応しています。
「【いっせいなで〝23〟】」
Turn 18
Miroku 0pt Kanade 3→8pt
【〝23〟】(T.P)
R○○○○○ R○○○○○
L○○○○○ L○○○○○
「血迷った? そんなあり得ない数字。」
万倉先輩の言う通りだ。23なんて、2人がすべての指を上げても出ない数字だ。
「さあ、どうでしょうね。」
でも、カナデは冷静な表情。まるでありえないとは思っていなさそうな。
まさか……。
「数あてこそ外しましたが、お互いすべての指を上げて〝ツインパワー〟発生。三好さんのポイントは8Ptにぃ。」
「【〝最高の手術〟】」
万倉先輩も負けじと、固まっている左手4か所に右手の薬指を治して、ポイントを増やしに来る。
「【いっせいなで〝雨〟】」
Turn 20
Miroku 5pt Kanade 8pt
【〝rainy〟Lv.1(S1)】
R○○○●● R○○○●●
L○○○○○ L○○○○○
「勘のいい人はこの状況を見れば、あなたがどういう特性なのか、気づくでしょうね。」
「なるほど、そういうことか。」
「やっぱりそうなのさ。」
「そういう特性、なんですね。」
「えっ、えっ。どういうことなんすか?」
カナデさんの言葉に察しがついたイセノ部のメンバーたちとわかっていない本庄さん。
「ポイントが増えてない……。」
この試合が始まって始めて大数さんがつぶやきます。
「くっ、【〝幸運の手術〟】」
万倉さんはカナデさんの言葉を無視し、技を宣言。2人のポイントはお互いに8ptで並びます。
「【いっせいなで〝19〟】」
万倉さんは20ターン目と同じ8か所を上げ、対するカナデさんは〝烈火〟にかかっている1か所のみを上げています。合計は9ですので、一見すると外れですが。
「こ、これは……。」
解説の上戸先輩も、勝負を見守るこの学校中の生徒も戸惑っている様子。その理由は明白です。
なぜなら、カナデさんが左手を抜いているから。
「これは三好さんの数あて成功で片手が抜けた。勝利に大きくリーチがかかる。しかしこれはどういうことだぁ。」
「上戸さん、そういうあなたもわかっているとは思うけど。まだわかっていない人もいるようだから解説しましょう。万倉さんもいい?」
「聞くだけ聞いてあげる……。」
そういう万倉さん、同様の色が隠せていません。
「なぜ私や生徒集会の時の一誠、弼君の数あてが無効化されたのか。それは簡単なこと。あなたは10本以上の指を持っている、そしてそれがあなたの特性の正体。前の私のターンで〝ツインパワー〟が発動しなかったのもそのため。」
その言葉を聞いた万倉さんは数秒無言になりますがすぐに反論。
「確かにそれなら数あてが無効なのも、〝ツインパワー〟が発動しないのもしごく当然だけど。でも肝心のその指はどこにあるというの? 私はこの通り10本しか指はないでしょう。」
「あるじゃない。あなたが試合をするときにいつも横にいた解説役の人の指が。」
「えっ、上戸先輩が……。」
一誠も、指名された上戸さんも驚きの表情。
「つまり実際の指の形は上戸さんの指を含めたもので、19というわけよ。」
つまり今回のターン、カナデさんが抜ける前の〝イセノ〟表記、上戸さんの右手をA、左手をBと表記することにして正しくはこうですね。
Turn 22
Miroku 8pt Kanade 8pt
【〝19〟】
R○○○●● R●●●●●
L○○○○○ L○●●●●
A○○○○○
B○○○○○
「副会長、どうやらバレちゃったようですねぇ。」
上戸先輩の言葉に何かの糸が切れたのか、万倉先輩は笑い出して、いった。
「見事ね。そう、私の特性は多手の王、多くの腕を持てる特性よ。」
第68話 多手の王でした。
ネタバレになるかと思い、最後に発表しました。漫画やアニメでもよくある最後にサブタイトルをドーンとみせるイメージです。
次回は4/6までに更新予定、よろしくお願いします。




