第62話 違う何か
バトル回の内容、今まで手書きで作ってきたのですが、最近Excelで書いた方が楽じゃないかとおもってやってみたら案の定そうでした。
それでは本編です。
「えっ、でも俺っち初心者っすよ。技板もろくに持ってないっすし。」
道上先輩に便乗した俺に対し、本庄君は否定的な意見。そう、勝負に持ち込めば技板も経験も豊富な俺が有利。勝利はほぼ確実……。
「大丈夫だ。本庄君にはこのオレの技板セットを貸して進ぜよう。そして俺の献身的なサポート付きでな。」
「えっ、なんかそれだと俺が不利な気が……。」
「九山君、君はもうイセノ部の一員。なら一部員としての自覚を持ってほしいのさ。これは先輩として君に与える試練、分かってくれなのさ。」
「そうっすよ、九山っち。」
自分が有利と踏んだとたん、強気な姿勢になる本庄君。
「お前はどう思うよ、ノーデ。」
『面白い展開ですね。』
瞬き合間に共感を求めたのに、なんでお前も乗り気なんだ。俺の主張の賛同者はこの場にはいないみたいだ。
「わかりましたよ。それで受けて立ちますよ。」
「悪いね。その代わり先攻は九山君でいいから。」
道上先輩がそう言い、お互いに準備を始めた。購買部の休憩スペースの設置されている投影装置、そこに俺と本庄君のリングをリンクさせて、技板を通して一度瞬き。
『もちろん、勝負はこの私がするのですよね。』
えっ。
『一誠、何をきょとんとした顔をしているのです。約束したはずですよ、オリエンテーションまでの一週間は私が勝負をすると。』
少し不機嫌そうな顔でノーデが詰め寄る。そういわれたら生徒集会終わりにそんな約束していたな。だからさっきも乗り気だったのか。
「どうしても?」
『約束は守るものでしょう。』
やりたいんだな、仕方ない。
「わかったよ。でもやるからには勝てよ。」
『もちろんです。一誠の方こそ、しっかり見て学ぶのですよ。』
ノーデ、自分よりも俺の心配かよ。
「あとは掛け声登録っすね。ここはオリジナリティを付けて……ってどうしたんっすか? 片目閉じちゃって。それになんか、雰囲気も違うっすね。」
『ああ、特に気になさらず。集中力を高める儀式のようなものですよ。』
本庄君が不思議がるのはそのはず。憑依のオペレーションコードを唱えた今、体を動かしているのはノーデだ。俺はその様子を自分の頭の中で見守っているに過ぎない。
「わかるぞ九山君。隻眼、それは男であればだれもが憧れる道だ。」
道上先輩、その言い草だと多分自分もその道を通っているんだろうな。
「ああ、なるほどっす。」
本庄君も納得したようで、ノーデも反論しなかった。が、誤解しないでほしい。俺はまだその段階までは行っていない。
「そういえば、九山っちは掛け声を変えないんっすか? 〝いっせいのーで〟って割とスタンダードな掛け声っすよね? こういうのは個性が出て大事っすよ。」
本庄君がノーデに質問する。俺は特に掛け声にこだわっている方じゃないし、昔からの掛け声をそのまま使っているだけ。この際変えてもいいかもな。
『変えませんよ。名前が入っていますし、結構気に入っているのですよ。』
「そういわれたら確かに、九山っちは下の名前が一誠っすしね。」
今の受け答え、名前に入っているのは〝のーで〟の方なんだけどな。でも、ノーデがそういうなら、俺もしばらくは掛け声変えないでおこう。
「なるほど、じゃあ俺っちは誠の一文字だけっすから、掛け声はそうっすね。音読みして〝せい〟っすかね。これで登録っと。」
「うーん、やっぱり最低3音は必要だから〝せいっす〟で登録されちゃっているね。」
「〝せいっす〟、まあ悪くないっすね。それでいくっす。」
「そうだ、あと一つルールを追加していいかな。今回は休憩の時間も限られているし、できるだけ早く決着させるために30秒ルールで行きたいんだ。」
『30秒ルール、それはどういったものでしょうか?』
道上先輩の提案にノーデが質問する。
「自分の1ターンの持ち時間が最大30秒ってこと、よく大会とかでも採用されているよ。」
『なるほど、いいでしょう。』
「ならこのリングの表示のクイックモードってアイコンをタップしてもらえないかな。」
『これですね。』
ノーデがタップすると、ノーデと本庄君、それぞれの横の方に持ち時間が空中投影される。今の持ち時間は30秒。
「持ち時間は相手プレイヤーの宣言終了からカウントが開始されて、いま表示されている秒数が0になる前に自分の宣言を開始しないとその時点で負けになる。」
これ、自分の次の手で迷ったときに焦るやつだな。しかもその秒数は相手から丸見えだし。
そして準備は整った。
『では始めましょうか。』
やや間があってノーデの宣言が開始される。
『【いっせいのーで〝1〟】』
始まった。ノーデはどこの指も上げず、本庄君は左右の上から3本ずつ上げている。つまり6で外れ。そして宣言終了と同時に本庄君の秒数カウントが開始される。
「えっと、まずは。」
「相手の指を固めるのが定石だ。〝雨〟か〝晴れ〟か、まずは使ってみよう。」
道上先輩が本庄君にアドバイスしている。だけどこちらにもその声は聞こえているから、ある程度やってくることは想像がつく。
「【せいっす〝晴れ〟】」
この攻撃にかかったのは、ノーデの親指2本のみ。
「いやあ、見てるのとやってみるのとでは違うもんっすね。太陽の光が相手の指を焼けさせるんっすから。」
本庄君は初めての喜びをかみしめているんだろう。俺も気持ちはわかる。だが、ノーデはその時間をあまり与えさせてはくれない。
『【いっせいのーで〝雨〟】』
Turn 3
Node 0pt Makoto 0pt
【〝rainy〟Lv.1(S1)】
R○○○○○ R○○○●●
L○○○○○ L○○○●●
本庄さんは4ターン目、6ターン目と連続で〝雨〟、対する私は5ターン目、7ターン目と連続で〝手術〟。しばらくは、指が新たに固まらない状況が続きました。はじめこそ残り10秒時点で宣言した本庄さんですが、その後は私と同じように残り20秒前後で宣言するようになっていました。
ですが、ここにきて再び時間をかけます。道上さんが何やら耳打ちしていますし、7ターン目終了時に私の方の指は全回復しているので何か仕掛けてくるでしょう。
「【せいっす〝晴れ〟】」
この攻撃、互いに1本ずつかかります。これで本庄さんは5本の指が固まっている状態、間違いなく次に治してポイントをためる。それなら。
「【いっせいのーで〝晴れ〟】」
Turn 9
Node 2pt Makoto 0pt
【〝sunny〟Lv.1(S1)】
R●○●●● R●●●●●
L●●●●● L○○○●●
新たに本庄君の指が2本かかった。
「【〝最高の手術〟】っす。」
それでも本庄君は迷いなく宣言、左手が全回復する。
なんかノーデ、いつもと違って慎重だな。脳内空間では数あてやフェイク、攻撃と万々使ってくるのに。現実世界でノーデ単独でやるのは士義さんと以来、あの時は負けちゃってるからか。
『【いっせいのーで〝2〟】』
と思っていたら数あて。まあ本庄君は回復したての左指すべてを上げているから外れだけど。
「【せいっす〝晴れ〟】」
本庄君の間の置かない攻撃でノーデは右手4本が追加でかかったけど、これはたぶんわざとだな。
『【〝最高の手術〟】』
Turn 13
Node 2→7pt Makoto 5pt
【〝max operation〟Lv.3】
R●●●●● R○○○●●
L●●●●● L○○○○○
「〝ツインパワー〟に注意!」
「ハイっす。」
道上さんの助言もあり、私が〝最高の手術〟で指を下ろす前に本庄さんは現状動かせる指をすべて上げていました。
『さすがにそう、うまくはいきませんか。』
「ちっちっちっ。そううまくいかせないっすよ。【せいっす〝雨〟】」
この攻撃は私が指をすべて上げて回避。
「九山っち、よけるのうまいっすね。」
『それ相応にはやっていますから。』
おそらく本庄さんは私の指をどうにかして固めたいのでしょう。しかし、彼にはわかりやすい癖があります。
さて、そろそろ仕掛けますか。
『【いっせいのーで〝3〟】』
15ターン目の私の数あては。
「当たった。」
前書きの続き
手書きより早いし修正が楽。感動とともになぜ今まで手書きだったんだと後悔。まあ手書きの面倒さを知っているから便利さを実感しているのもある。
次回は2/17までに更新予定です。よろしくお願いします。




