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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第5章 中学入学編Ⅱ
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第60話 入部

誰にでも思い通りにいかない経験はあると思います。

作者からすると、バトル回はなかなか思うように書けないです。結局、当初考えていたのとは別のものを渋々登場させたりしてうまく帳尻をあわせたりするものです。

それでは本編です。

「〝電気ショック〟は9ターン経過しないと使えない、1度きりの大技。でも、薬指のみが動く状態なら、固まった指をすべて治すことができる。」

 府中先輩がまた自分の使った技を解説。なるほど、条件は〝雷魔切り〟と似ている。同じ雷の系列だからかな。

「ただ、〝電気ショック〟は現実でもそうだけど、すでに死んでいる指を治すことはできない。もし〝ブラックホール〟をされていたら、僕は〝シールド〟で防ぐしかなかった。」

「なるほど、奈湯っちの選択ミスっすかね。」

 本庄君はうなづいているけど、ナユユの特性、白衣の天使(ラファエル)と相性がいいのは〝手術〟で治せない〝ブラックホール〟よりも2倍固めで〝手術〟で治すことのできる〝雪崩〟だからな。難しいところだ。

 〝蜃気楼〟は消え、次は21ターン目。ナユユの番。

「【〝トリック〟】」

「【〝トリック〟】」

 ボール形状に可視化された手術ポイントの奪い合い。お互いに指が全部動くと必然的にこうなる。

「【〝シールド〟】」

 ナユユが折れる。これでお互い5pt以下、防ぐ手立てはないだろう。

「【ゼッサン〝1〟】」

 府中先輩はあてに行くが。

「また外れか……。」

 片手を抜くことができず、頭を抱える府中先輩。そういわれたら前の数あても外していたな。

「もしかして、府中先輩のスランプって……。」

「気づいたみたいだね。そう、数を当てられないことさ。」

「【い、せいので〝雨〟】」


 Turn 25

 Nayu 4pt  Honmachi 3pt 

【〝rainy〟Lv.1(S1)】

               R○○○○○

 L○○○○()        L○○○○○


「5回目……。」

 府中さんはボソッとつぶやきます。恐らく彼はこう考えているでしょう。


 近田さんのこの攻撃、狙いは2つ考えられる。

 1つは次のターン、もしくはそれ以降でポイントを確保すること。あわよくばこの攻撃で僕の指を固めてポイントを増やそうという算段だったんだろうけどそれはうまく回避できた。でもそれも見越した保険として、自分で1か所指を固めたのだろう。

 もう1つは〝大雨〟の使用条件を満たすこと。近田さんのポイントが少なく、僕の指10本がすべて動く状況は圧倒的に僕が有利。その打開策として、当たればそう簡単に治せない〝大雨〟はうってつけだ。

 そうすると、次のターンも指で固める技が来る。〝大雨〟でそのまま来るか、そう見せかけて逆の〝晴れ〟か。

 いずれにしろ今の内にあてに行った方がいいな。今度こそ……。

「【ゼッサン〝2〟】」

 1か、外れた。

「【い、せいので〝5〟】」


 Turn 27

 Nayu 4pt  Honmachi 3pt 

【〝5〟】

               R●●●●●

 L●●●●()        L○○○○○


「あ。」

「あちゃあ。」

 イセノ部員二人は言葉を失う。

「当たった……。」

 そして当てた本人も驚きを隠せない表情だ。

「ナユユが勝った。」

「そうっすね……。」

 俺と本庄君も驚いてそんな声を上げた。大数君は黙ったままだった。俺の頭の中のノーデはというと、そんなに驚いていない様子。

「予想してたのか?」

『あくまで可能性の一つとしてですが。いつか一誠にいいましたね、数あては相手が予期していない時にするものです。』

「お見事だったよ、近田さん。指を固める技が来ると思っていたから、普通に当てられる可能性を考えていなかったな。しかも特性、使えずに終了って本当に僕はいいところなしだ。」

 府中先輩は分析しながら、落ち込んでいた。

「部長、こういうときもありますよ。」

「そ、そうですよ。私もなんとなくこうかなって思ってまぐれで、たまたま当たっただけです。気にしないでください。」

 府中先輩を慰める道上先輩とナユユ。

『使わずに終了ではなく、使えずに終了ですか。なるほど。』

 そしてこういうときも俺の頭の中で冷静に分析するノーデ。そこはちょっとAIらしい。

「何がなるほどなんだ?」

『使えないということは条件を満たさなかったということ。つまり私たちが今まで見てきた特性はすべて使用者が任意のタイミングで発動できるものでしたが、おそらく一定の条件で発動できるものもあるということです。』

「確かに。」

 ナユユの使った〝白衣の天使(ラファエル)〟も千草さんが使っていた〝自由の女神(リベルタス)〟もカナデの〝晴れの神(アマテラス)〟も全部、その使用者が好きなタイミングで発動させていた。でも府中先輩はたぶん条件発動型。となると、万倉先輩はどっちだろうか。

「おめでとう。近田さんはこれで実力が十分あることも証明された。最後にきこう。このイセノ部に入部する意思はあるかい?」

「部長、そんなわかりきったこと……。」

「いいや。近田さんがこの部屋の扉を開けた時に道上、『入部希望者かい?』って言って勝手にこの部の説明を始めただろう。一応近田さんもうなづいていたけれど、近田さん自身の口からまだ聞いてないよ。」

 新入生にも気遣いできる府中先輩、いい人だな。道上先輩が慕う理由もわかる。

 そして、二人の視線がナユユに注がれ、彼女ははっきりと口にする。

「はい。」

「なら、入部決定だ。歓迎するよ。はいみんな拍手。」

 道上先輩につられて、この部屋全員が手をたたく。そしてひと段落して先輩は俺たちの方をギョロリとみる。

「さて、今度は君たちの番かな。まずは……。」

 道上先輩がロックオンしたのはこの中で一番背の低い……。

「えっ、俺っちすか。俺っちはこのゲーム、見たことはあってもやったことはなくて。まだ入部することも決めてないんっす。」

「むしろ初心者大歓迎、それにお試しでやってみるというのもありさ。」

「そうっすね。二人はどうっすか?」

 本庄君は俺と大数君を交互に見る。

「僕はその、考えさせてもらっていいですか?」

 大数君が先に声を上げる。なにか、難しそうな表情だ。府中先輩も何か察したようで。

「家の事情もあるんだろうし、今すぐじゃなくてもいいよ。あとは九山君かな。」

 と、俺の方に視線を移す。

 これはまたとないチャンスだ。府中先輩は元十指選。万倉先輩には負けたけど、自分が強くなるにはこういう人と戦って経験を積んでおかないと。

「俺もこの部に入部してみたいと思っています。だから、府中先輩、勝負してくれませんか?」

「そう言ってもらえて何よりだ。だけど、九山君との勝負は明後日でいいかな。」

「明後日?」

「そう、万倉と三好さんが戦った後。」

「えっと、どうしてですか?」

「うーん、時間的に。」

「時間?」

「生徒の皆さん、完全下校時刻となりました。速やかに荷物をまとめて下校してください。」

 俺が腕輪の時刻表示をみるよりも早く、スピーカーからアナウンスが学校中に流れる。

「いけない、活動はまた今度。今は早く片付けて撤収、撤収。」

 道上先輩が慌てた様子で投影装置の電源を切る。

「まあもう一つちゃんとした理由があってね。万倉なりの配慮なんだけど、今はあんまり言えないんだ。当日、勝負する前までには教えるよ。」

「わかりました。」

「あ、でも入部自体は受け付けるよ。万倉との試合、いい線言ってたと思うし。僕と勝負するまでは仮って感じになるかな。」

 ということで俺も一応、仮入部ということになった。

「じゃあ、一年生のみんなはもう帰ろうか。学校の規則は守らないと……。」

 そういって府中先輩がこの部屋の扉の方に目をやった時だ。いきなりその扉が一人の人物によって開けられる。

「梶田会長!」

「下校時刻だぞ。」

 バッグを背負い、帰る気満々な恰好の会長。やる気のなさそうな声だが、一応、声をかけてはくれるんだな。

「すみません、すぐに帰りますので。片づけは僕らでするから一年生たちは先に退出しといてね。」

 府中先輩が返答し、俺たち一年はこの物置部屋から廊下に出る。そして、ちょうどナユユが出たときだ。

「その腕輪、無限の巫女の。」

 梶田会長のつぶやき。一瞬ナユユの学生服の袖から見えたんだろう。

「こ、これは……。」

「そ、そうかな。似てるだけなんじゃないかな。」

 ナユユの声をかき消すかのように自分の荷物をまとめている道上先輩が言った。

「えっ、何言ってるんですか。ナユユのお母さんは無限の巫女の……。」

 そこまで俺は言いかけて府中先輩が必死に口の前に人差し指を立ててシーっのポーズをしていることで悟る。たぶんこれ、知られたらまずいやつだ。

「奈湯っちは部長さんにも勝っちゃったすからね。」

 そう思った矢先に本庄君、それを言ってはまずいんだ。

「なるほどな、それは逸材だ。名前は?」

「ち、近田、奈湯です。」

「そうか、近田さん。」

 梶田会長は不敵な笑みを浮かべながら言った。


「生徒会に入らないか。」



ということで通算10試合目となる勝負(ちゃんと過程を一通り書いたもの)もなんとか決着。

次回は2/3までに更新予定。よろしくお願いします。

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