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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第5章 中学入学編Ⅱ
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第59話 元十指選

今回は前回の続き、バトル回です。

バトル回は基本、一誠とノーデの視点が〝イセノ〟表記を境に交互に入れ替わります。

それでは本編です。

 〝蜃気楼〟、厄介な技だ。

「【い、せいので〝雨〟】」

 ナユユの〝雨〟の水滴は府中先輩の左小指をとらえた。しかしまたしても、〝蜃気楼〟発生ゾーンに到達するやいなや、右人差し指に配置換えされる。

 間違いない、この技は。

「〝ツインパワー〟を狙うための技だね。」

 大数君も同じ考えか。

「【〝手術〟】」

 その配置換えされた右人差し指を上げて宣言する府中先輩。


 Turn 12

 Nayu 3pt  Honmachi 5→6pt 

             【〝Operation〟Lv.0】

 R○()()()()         R●()()()()

 L●●●●●         L●●●●●


「うーん、避けられちゃったか。」

 ちょっと残念そうな府中さん。ナユユさんが自分の右親指を上げて、〝ツインパワー〟を回避したからです。

「それは、よくパパにやられたので。」

 どうやらマスターに一通りは教え込まれたようですね。

 続く13ターン目、ナユユさんの攻撃は〝雨〟。この攻撃も初めに攻撃で固まるはずだった位置から配置換えされ、府中さんは右手5本が下げて固まった状態に。

「また、〝蜃気楼〟で位置が……。」

「でも、この技はあくまで配置換え。攻撃を防いでいるわけじゃない。」

 大数さんの冷静な私的はまさにその通り。この技は指の固まる本数が多いほど、意味がなくなります。

「にしてもまた〝雨〟っすね。」

「ナユユ、狙ってるな。」

「【ゼッサン〝7〟】」

 ここで府中さんが、この試合初めての数あて。これはナユユさんのあげた指が1本だけだったので外れます。

「特性発動、白衣の天使(ラファエル)

 15ターン目開始直後、ナユユさんの宣言とともに、背後に天使が降臨。その天使が白い翼を広げ、手を合わせるのと同時に技名を宣言。

「【〝最高の手術〟】」


 Turn 15

 Nayu 3→13pt  Honmachi 6pt 

【〝max operation〟Lv.3】(T.P)

 R●()()()()         R()()()()()

 L●●●●●         L●●●●●


 ナユユ自身の指だけじゃなく、府中先輩の指も巻き込んでの〝最高の手術〟。そしてこの試合2回目の〝ツインパワー〟。これで一気にナユユにポイントが入った。

 にしてもさっきから、イセノ部の部員2人は茫然としている。そうさっき特性のエフェクトが出た時から。 

「それは、無限の巫女さんが使っていた。」

「は、はい。その、ママの形見みたいなもので……。」

 ナユユの返答に二人は興奮気味に。

「えっと、無限の巫女が近田さんのお母さん! 部長、これは逸材です。」

「いやでも、無限の巫女って神杉家の人じゃ……」

 府中先輩は大数君に視線を移し、確認を取ろうとする。

「その、僕のいとこにあたります。」

 二人のまなざしに耐えられなかったのか、目線をそらしながら大数君は答えた。

「そうなんだ。いや、本当にすごい巡りあわせだな。」

「その、俺っちは何のことだかさっぱりなんすけど。有名な巫女さんなんっすか。」

 状況が吞み込めない本庄君がそういうと、上戸先輩が興奮冷めやらぬまま解説開始。

「いや、この〝イセノ〟の界隈、特にオレらの世代じゃあ超有名さ。今のトップは十指選だけど、それもここ5、6年の話。それまでは無限の巫女の一強時代だったのさ。そもそも十指選復活もそんな一強に対抗するために復活させようって話だったしね。」

「この際だから覚えておくといいよ。千年近い歴史を誇るこのゲームの中でも語り継がれているのは主に3人。このゲームの始祖にして数あての神、神杉(かみすぎ)有弦(ゆうげん)。戦後このゲームを復活させ30年間第一線で活躍した三好(みよし)孤空(こくう)。そして21世紀に入って20年間、生涯無敗だった無限の巫女、神杉(かみすぎ)由多(ゆた)。もうこれは伝説なんだよ。」

 と、府中先輩も今までの落ち着いた雰囲気とは打って変わり、オタク知識を披露する。ちなみに俺は無限の巫女しか知らなかった。

『一誠もまだまだですね。私は知っていましたよ。』

 瞬き合間に見下す目で見るノーデ。しかもわざわざ俺より上に浮いてからその一言を発している。単なる知識マウントじゃないなと冷静に考え直してみればこいつ、無限の巫女さんの生まれ変わりみたいなものだったな。

「へ、へえ。すごいんすね。」

 本庄君は若干引き気味。

「そ、その。別に私はそんなにすごくないっていうか。まだ始めてちょっとしか経ってないですし……。」

「いや、十分戦えているよ。そこは自信を持っていい。」

「……ありがとうございます。」

 府中先輩の励ましに答えたナユユ。今度のありがとうは言葉に少し力がこもっている。

「いやぁ、たびたび脱線してごめんね。つい熱くなっちゃって。」

「部長も内に秘めた熱き思いがありますからね。」

「次は僕の番だね、〝手術〟だ。」

 上戸先輩の言葉は華麗にスルーされ、府中先輩の右親指が治る。

「部長さん、その、一つ質問いいですか。」

「いいよ。」

「今部長さんが発動している〝蜃気楼〟っていう技は、指を全部固める技を使った場合、どうなるんでしょうか。」

「その場合、配置換えできる場所はないから全部固まったままになる。」

「わかりました。なら行きます。」

 ナユユ、仕掛ける気だな。

「【〝雪崩(なだれ)〟】」


 Turn 17

 Nayu 13→3pt  Honmachi 7pt 

【〝avalanche〟Lv.5(S2)】

 R●()●●()         R(・・)(・・)(・・)(・・)(・・)

 L●●●●●         L(・・)(・・)(・・)(・・)(・・)


 宣言とともに、ナユユさん、いや、この部屋の向こうにまで覆いかぶさるように雪の斜面が出現し、大量の雪が麓に当たる府中先輩の方に流れ込みます。それはまるでナユユさんの背後にいる天使が雪を流し込んでいるようです。

「甘んじて受け入れよう。」

「府中先輩は防がないんだね。」

「もろ直撃っす。」

 雪は府中さんの両手、すべての指に覆いかぶさります。

「よし、これで普通の〝手術〟では治せない。」

 〝サンシャイン〟と対をなす技、〝雪崩〟。コスト10ptで放てるこの技はすべての指を下げて固め、1か所治すのに通常の〝手術〟が2回が必要です。

 しかし。

「【〝大手術〟】」

 府中さんの宣言とともに左薬指が治ります。

「2回〝手術〟しないと治らないはず……。」

「この技は普通の〝手術〟とは違う。1つの指に2回分の〝手術〟を施し、ポイントも2ptを得る。デメリットとして、そのあと自分のターンで数えて3ターン、この技は使えないけれどね。」

 府中さんは自分の使った技をこう解説していました。

「でも、動くのは1か所だけ、チャンスだ。」

 一誠の言うのも一理あります。一理あるのですが……。

『妙ですね。』

「ノーデ、何が妙なんだ?」

 おっと、いつの間にか瞬きが入りこの脳内空間に一誠が。さっきの小言も聞かれた様子。

『薬指を治したということですよ。〝ツインパワー〟を狙うなら、ナユユさんの上げて固まっている人差し指に合わせて、府中先輩も人差し指を〝手術〟するはずです。』

「確かに言われてみれば。〝蜃気楼〟を使った時もすぐにノーデの言う方法で〝ツインパワー〟を狙いに行っていたよな。でも、同じ手は通用しないと踏んで違うところにしたのかも。」

『そうだとしても上げにくい薬指を治すでしょうか。』

「【い、せいので〝2〟】」

 ここで一誠がこの空間から退出。ナユユさんの宣言が聞こえてきて慌てて目を開けたようです。私が目の前の映像に視線を戻すと〝大手術〟した1か所だけが上がっています。

「当たったね。うーん、いいよ。抜いてもらって。」

 府中さんはこの数あても防がない様子。ナユユさんは右手を抜きます。

「これでもう一度数を当てれば勝ち、しかも府中先輩は1か所しか動かせない。」

 一誠、確かにその通りなんですが、その言葉は私にはフラグにしか聞こえない。

「【〝電気ショック〟】」


 Turn 20

 Nayu 3pt  Honmachi 9pt 

          【〝electroshock〟Lv.4】

                R○○○○○

 L●●●●●         L○○○○○


「府中先輩の指が……。」

「全回復している。」

「どういうことっすか。」

 俺たち一年の驚きをよそに府中先輩はこういった。


「腐っても元十指選左薬、そう簡単に負けてあげるわけにはいかないな。」



結構癖のある〝イセノ〟の表記、だけど一番指ゲームを伝えるのに適した表記はこれしかないと信じて書き続けています。そしてどうせ5、6行とるのならいっそのことそこで視点も変えてしまおうと考えて2人の視点を交互に入れ替える方式にしました。勝負を一人の視点で続けるのにはやはり限界があるためです。

次回は1/27までに更新予定。よろしくお願いします。

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