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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第4章 中学入学編Ⅰ
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第51話 宣戦布告

すみません、今日の話は短めです。

それではどうぞ。

 炎は消えた。

 一瞬の静寂ののち、上戸先輩が口火を切った。

「えっと。最後の場面を解説しますと、副会長が放った技は攻撃技の最上級技〝ドラゴンフレア〟です。この技には手術ポイント30ptが必要で、使うとすべての腕を抜くことができ、防がれなければほぼ勝利できます。」

『なるほど、〝雷魔切り〟と同じ特殊勝利系の技ですか。』

 ノーデがいつもの調子で納得している。それに勝負が終わって一年のざわつきも大きくなる。興奮冷めやらぬといった感じだが俺は……。

「正直、期待していたほどではなかったわね。」

 万倉先輩の辛辣な言葉。

 最近、ノーデ以外に敗北してなかったから感覚が麻痺していたのかもしれないけど。万倉先輩の特性が何かすらわからなかった。これが十指選の壁。

 不思議と悔しさがない。あの時ああしていればとか後悔する以前に何をされたかがわからないからだろうか。

『落ち込んでいるのですか。』

 ああ、そうだ。俺は少し調子に乗ってたんだ。

『でも、勝負自体はいいところまで行きましたよ。』

 本当にそうか。お前だけだろ、そういってくれるのは。

『一誠って一つうまくいかないところがあるとすぐ躓きますよね。でも耳を澄ましてみれば聞こえるはずですよ。』

 何が……。

 パチパチパチ。手をたたく音。

『あなたの健闘を評価する音ですよ。』

 壇上から見えた、手を動かすナユユ。それにつられるようにもう一つ、二つ、三つと増えていく。

「ナユユ、それにカナデ、大数君、千草さん。」

 少しだけ元気が戻った。でもそれと同時にこの拍手に見合うだけの勝負ができていたんだろうかという気持ちもある。

「まあ、所詮は1年。1人の実力にも限度があるわ。でもあなたたちには伸び代がある。そしてその機会も準備しているわ。」

「ということで、生徒会から告知でぇす。一週間後に一年生全員が参加する1泊2日のオリエンテーション、一般的には林間合宿と呼ばれているものがあります。その際にこの〝イセノ〟を使ったゲームで競ってもらう企画をしています。後日しおりと一部の技板が配布されると思いますのでお楽しみにしておいてください。優勝者には特別なプレゼントもありますよ。」

 一年のざわつきが最高潮に達した。それだけみんなの期待が膨らんでいる証拠だ。

「これで技の説明は以上。まあ今登場しなかった技もあるけどそれは自分なりにやって知っていく。これが一番。オリエンで優勝目指しながらルールや技を覚えて覚えていってちょうだい。さて、言うべきことは言ったから次はカナデさん、あなたの番よ。といっても時間が。」

 直後ちょうどチャイムが鳴り、同時に梶田会長が口を開く。

「時間だ。終わるぞ。」

「じゃあ、一言だけ。カナデさん、あなたとは後日また勝負するわ。十指選の座をかけて。」

「十指選の序列をかけてってこと?」

 カナデが少し大きな声で即座に反応した。

「いや、十指選そのものの座をかけて。負けたらその地位を捨てるのよ。」

 万倉先輩が堂々と言ってるが、これすごいことだぞ。もしかしてこれが、空席ができるっていうことにつながっているのか。

「それって拒否はできないもの?」

「あらぁ、勝負に逃げるの? 私に一度勝ってそのまま。」

「万倉さん、大会の予選で私に負けたのがそんなに悔しかった?」

 万倉先輩の顔が一瞬ゆがむ。この2人、何か因縁でもあるのだろうか。バチバチしてる。

「別に、私は器がひろいもの。それにあなたの実力に懐疑的な目があるのも確かよ。だって、あなたは去年ぽっと出で世界3位までなった。裏を返せば、それだけ。まぐれの可能性もあるでしょ。」

「それは違う。」

 カナデの顔も真剣になった。戦った俺ならわかる。まぐれなんてそんなもんじゃない。

「でもこれはあなた以外の十指選全員の認可があって成立した提案。つまりみんなそう思ってるってことかもね。」

「万倉、一言が長い。」

 梶田会長が万倉先輩をにらみつける。

「うっ、すみません。とにかく、後日この学校の生徒全員の前でケリをつけましょう。時間、場所はあとで伝えるわ。」

「これにて生徒集会はお開きです。九山君もありがとうございました。続けて部活紹介がありますので一年生の皆さんはこれから十分間休憩とします。十分後に今と同じ形で集合してください。」

 上戸先輩がその場をしめてこの集会は終わった。トイレに立つもの、友達と話しに行くもの、一年の皆は離散する。俺も役目は終わったみたいだし、とりあえず壇上を降りよう。

「よかったわね、負かされたのが私で。」

 万倉先輩が俺に声をかけた。

「でも十指選以外で負ければ、次はない。そしてそこで、あなたが十指選には入るっていう夢も潰える。今日私が勝ったことであなたは自分の実力を痛感し、私は上への挑戦権を得た。」

 そういう考え方もできる。俺が挑戦するのは最低でも万倉先輩以上ってことだから。

「でも士義さんは強いですよ。それにカナデだって。あなたが負けたら十指選の座を捨てるなんて、そんな自滅行為。」

「自分の進退をかける覚悟がないと、上に上がるなんてできない。私はこの中じゃ弱いからね。」

 万倉先輩そうやって横を見る。視線の先は片づけをしている生徒会メンバー、そして梶田会長。

 なんだろう、この人は自分の負けを認められずにカナデに当たってる、プライドの高い人だと勝手に思っていたけれど違った。ちゃんと自分の実力を自覚している気がする。

「まあ、その実力のままでいなさい。弱いままでいてくれた方が私としては助かるわ。」

 言葉にとげがあるのは鋭人を思い出すが。

「ありがとうございました。俺も頑張ります。」

 とりあえずそう言って壇上を降りた。その際にすれ違いざまに一人の男が上がった。俺は彼を知ってる。確か同じクラスの、落合君。

 彼は一直線に万倉先輩の方に向かう。そして一言、彼女を指さしながら言った。


「万倉先輩、アンタに勝負を申し込む。」


最近忙しく書く時間がとりにくくて、ちょっと短くなりました。

取り合えず入学編が終わるまでは週一ペースを維持したい(先はまだ長そうだが)。

ということで次回は11/18までに更新頑張ります。よろしくお願いします。

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