第50話 みろく的な試合(ゲーム)
今回もバトル回の続きです。表記がわからない方は2章終わりを参考にしてください。
それではどうぞ。
「おっと、これはどういうことだあああ。」
いや、本当にどういうことだ。先輩は〝シールド〟で防いだわけでもないのに……。
「確かに九山君の数あては当たったように見えましたが、〝雨〟にかかったエフェクトが解除されません。普通片手が抜ける際にはその手に対する投影も終了するはずですが。それが続いているということはこの数あては無効、ということだぁ。」
指先まで広げた両手をクロスさせ、バツ印を作る上戸先輩。彼女の言う通り、俺の左手は依然として〝雨〟で発生した水滴がまとわりついている。
「私の番、【〝幸運の手術〟】」
しまった。
「〝ツインパワー〟」
Turn 16
Issei 5pt Miroku 3→11pt
【〝lucky operation〟Lv.2】(T.P)
R●●●●● R●●●●●
L●●●●● L●●●●●
『一誠!』
思わず私、ノーデもそう叫んでいたのですが、瞬きを介さないとこの声は届きません。案の定、片手が抜けられなかったことに気を取られたようですね。
「ここで、〝幸運の手術〟、通常の〝手術〟5回で使える技で3か所が一気に治せます。そして本日2回目のぉ、〝ツインパァワー〟。副会長はこれで一気に3+3+5で11Ptだぁ。」
上戸さんの解説。その合間に一度だけ瞬きが入り、この脳内空間に一誠が現れます。
『もう少し早く来てほしかったですね、一応先ほどの〝ツインパワー〟の時に声をかけていたので気づけたかもしれません。』
「ごめん。さっきの〝ツインパワー〟は俺の落ち度だな。でも片手抜けができなかったのは腑に落ちない。先輩がそんな効果の技を使ってもいなかったし。」
『となると、考えられるのは彼女が十指選だから持つ、特別な力。』
「ノーデもそう思ったか。やっぱりそれしか考えられないよな。」
『そろそろ変わりましょうか?』
「いや、まだ俺がやる。」
一誠はそう言ってこの脳内空間から消えました。最近、一誠は自分ですることに固執してますね。おかげで私の出番が減ったような……。
「さっきの俺の数あてが無効になったのは、万倉先輩の特性ですか?」
現実で一誠は万倉さんに先ほどの疑問をストレートにぶつけます。
「さあね。」
「なるほど、先ほどの九山君が抜けられなかったのは副会長の特性によるものと、九山君は予想したわけですが、どうなんでしょうか?」
上戸さんは万倉さんの方を向いて確認を取ろうとしますが。
「秘密よ。」
「だ、そうなので。ここでは言えません。まあ、これも勝負の醍醐味ということで。」
ということで分からずじまいです。ただ、一誠は気づいていないかもしれませんが、万倉さんの背後が少し暗くなったような、本当に些細な変化はありました。
「【〝最高の手術〟】」
一誠は左手5本を回復させます。とりあえず万倉さんとのポイント差を埋めるためでしょう。
「【いぃせいのーで〝晴れ〟】」
万倉さんのこの攻撃に一誠は右人差し指より下の4本がかかります。
「【いっせいのーで〝雨〟】」
対して、一誠のこの攻撃は万倉さんの指を1つ固めただけ。
「【いぃせいのーで〝晴れ〟】」
そして一誠はさらに2か所を固められます。
「〝雨〟、〝晴れ〟と天候が目まぐるしく変わる打ち合い。これを制するのはどっちだぁぁ。」
上戸先輩の実況もボルテージが上がり、手だけではなく足まで動かしています。一年生の皆さんも固唾をのんで見守る中、先に勝負を仕掛けるのは。
「【〝狐雨〟】」
Turn 21
Issei 10pt Miroku 11pt
【〝sunny rain〟Lv.4(S1)】
R●○○○○ R○○○●●
L○○●●● L○○○●●
「これはああ、〝雨〟、〝晴れ〟を3回ずつ使うと使える技。効果は相手の指すべてを今の状態で強制的に固めます。さて、副会長はどうする?」
ここで指を全滅させたくはないはずだ。だから必ず防御してくる。普通の〝シールド〟でもそれ以外でも何でもいい。とにかくポイントを使ってくれさえすれば。
「ちょうどいい、そろそろ終わりにしようと思ってたところなのよね。」
「3、2、1、0。九山君の〝狐雨〟宣言時から10秒が経過しましたぁ。ルール上、もう〝狐雨〟に対して防御技を使用できません。」
防がないだと……。
代わりに万倉先輩が使ってきたのは。
「【〝火葬〟】」
その宣言とともに、先輩の指はすべてものすごい火力の炎に包まれ、黒く焦げ落ちた。
「自分で自分の指を全部死滅させる技?」
いや、それだけじゃない。
Turn 22
Issei 10pt Miroku 11→31pt
【〝cremation〟Lv.4】
R●○○○○ R×××××
L○○●●● L×××××
「手術ポイントが一気に31pt!」
「出た、副会長の切り札。自分の指を死滅させてポイントを得る技でぇす。ちなみにこの技板はレアなので、使える人も一握りで……。」
「それ以上は説明しなくていいわ。手の内を全部さらしたくないものね。」
上戸先輩の解説を万倉さんが制止しました。
万倉さんが死滅させているのは10本の指、そしてポイントはその倍の20Pt。それだけのポイントを一気にためるとなると、何かしら条件がつきそうですが。
私、ノーデがそう考えこんでいると突然、外界からの映像が途切れます。目の前には厳しい表情を浮かべた一誠が。
「どういう仕組みかはわからないけど、31ptもためられた。」
31ptもあれば、万倉さんはこちらでは対抗策しようのない技を使えてしまいます。いくら万倉さんの指がすべて下がったまま動かない状態といっても厳しいポイント差です。
『たとえ私と入れ替わったとしても。おそらくもう勝つ手段は。』
「わかってるよ。わかってるけど、俺はあがく。勝負は最後まで何が起こるかわからない。」
それでこそ、一誠ですね。
「【いっせいのーで〝6〟】」
Turn 23 end
Issei 10pt Miroku 31pt
【〝6〟】
R●○○○○ R×××××
L×××××
「抜けられる?」
左手の日焼けで変色した指は元の肌色に戻っている。つまり数あては有効。
「まあ、ここまでの健闘を称えるわ。でも、やっぱり私には勝てない。」
万倉先輩は右手を広げたまま振り上げて言う。
「一年生の皆も覚えておくといいわ、この〝イセノ〟においてはこんな勝ち方もあるということをね。こんなみろく的な勝ち方を。」
たぶん魅力的と先輩の名前をかけているんだろう。にしても何をしようとしている?
万倉先輩は振り上げた手を勢いよく振り下ろして宣言する。
「【〝ドラゴンフレア〟】」
その宣言とともに、あたりは一気に暗くなり、この体育館において一番強く輝いているのが、万倉先輩のつけている一枚の技板だけになる。
「あれは……。」
「なんだ?」
ざわつく同学年のギャラリーたち。皆、上を見上げている。俺も見上げると、それは体育館の天井を覆いつくす巨大な赤い竜。竜は俺と目があうとけたたましい鳴き声で威嚇する。
「竜!」
「すごい。」
「あれって映像だよな。」
みんな竜に驚いている。さっきの威嚇で気を失いかける人も。
でも、竜の向こうにまだ何か人影があるように見えたのは俺だけか。
「発射。」
万倉先輩の合図とともに竜は口を開け、中の炎が増していく。やがて外に漏れだすくらいまで膨らんだ次の瞬間、火の玉は竜の口を離れる。人一人を余裕で飲み込むくらい大きいそれは、一直線に俺のもとに。
「う、うわあああああ。」
『一誠、落ち着いてください。あれは映像です。』
そんなこと、頭ではわかっている。でも、思わず手で顔を覆うくらいの迫力があった。
着弾。
俺は炎に包まれ、ゴオオオオという爆発音が耳をつんざく。そこに小さく上戸先輩の声。
「け、決着! 勝者はわれらが副会長、万倉美六!」
俺は負けた。何が起きたのか、理解することもできずに。
ということで決着。
補足ですが今まで数あてで当てる際は当てて片手が抜ける前の表記にしてきたのですが、今回の23ターン目はすでに22ターン目で大体指の形がわかるので当てた後(end)の表記にしてます。
それにしても2話前に火ぶたを切るで始まり、ちゃんと火で終わる、いいね。(自画自賛)
次回は11/11までに更新予定。よろしくお願いします。




