第49話 見本試合
今日からバトルです。サブタイトル通り、皆さんがこのゲームをするときの見本となればと思います。
2章の終わりに乗せたルール参照で、●が指の下げている個所,○が指のあげている個所です。(覚え方は天気記号、●の部分は〝雨〟で下げている個所が固まるし、○も一応〝快晴〟を使えば固まる。いやそこ〝晴れ〟じゃないんかいってツッコミたくなるけど。)
それでは本編です。
技板を腕輪に取り付け、お互い向かい合った俺と万倉先輩。
「先攻は一年の九山君から。それでは準備はよろしいですか。」
その間、ステージ壁側に立った上戸先輩が俺たちを交互に見る。そしてお互いうなづいたことを確認して、高らかに宣言。
「では、はじめぇぇぇ!」
「【いっせいのーで〝晴れ〟】」
俺の頭上に出現した小さな太陽。そこから放たれた光が万倉先輩の左右の下6か所の指を焼けさせ、固める。
「今九山君が宣言した技は〝晴れ〟、自分および相手の上げた指を固める技です。固まった指は何も対処しなければ動かせなくなりまぁす。」
上戸先輩の気合の入った解説が入る。
「【〝手術〟】」
その宣言とともに万倉先輩は右中指を下げる。
Turn 2
Issei 0pt Miroku 0→1pt
【〝operation〟Lv.0】
R○○○●● R●●●○○
L●●●●● L●●○○○
「固まった指を治す技の代表格、それが〝手術〟でぇす。〝手術〟は無条件で自分の指1か所のを治すことができ、1ポイントが貯まりまぁす。このポイント、多くためればそれだけ強力な技を使う条件を満たせまぁす。」
技を使うと上戸先輩の解説が逐一入るようだ。
「へえ、相手の〝手術〟でも指を上げるのね。」
「ああ、こういう攻撃を受けてないときでも〝ツインパワー〟を起こされたことがあるので。じゃあ、次行きます。【いっせいのーで〝晴れ〟】」
「おっと、これはぁぁぁ。」
宣言したのは同じ技、ただ驚きの光景。
「副会長の指がすべて上がっている! つまり10本すべての指がかたまってしまったぁぁぁ。」
実況は白熱するが、万倉先輩は落ち着いている。
「【〝手術〟】」
今先輩が動くのは、今治した右の親指ただ一つ。これはチャンス。
俺は自分のすべての指を上げて宣言する。
「【いっせいのーで〝19〟】」
Turn 5
Issei 0→5pt Miroku 2pt
【〝19〟】(T.P)
R○○○○○ R○○○○○
L○○○○○ L○○○○○
「数あては外れましたが、〝ツインパァワー〟、つまりお互いの指の形が左右同じとなりましたぁ。この状態を起こしたプレイヤーには5Ptが加算されます。つまり今回の場合、一誠君が0から5Ptに。このポイントは多くためればより強力な技を放つことができまぁす。」
ヘッドホンのマイクを口に近づけて上戸さんは解説します。
「まあ、これはこのゲームでよく起こる現象の一つ。私のように全滅したプレイヤーは通常の〝手術〟を使うと1か所しか動かないから、選択肢はこの指を上げるか下げるかの2択。今の場合、上げればツインパワーになるから下げる場合を数あてで宣言すれば相手方、一誠君にとっては損がないってことね。」
全滅した本人、万倉さんが補足を入れます。勝つことに頓着がないのか、それともまだ余裕があるのか。いずれにしろ、まだ慌てる様子はありません。
「【〝最高の手術〟】」
これにより万倉さんの右手は全回復、そして左親指も回復。
「〝最高の手術〟は一気に5か所を治せる技、ただしこのゲーム中に1回しか使えません。これで副会長のポイントは5pt追加され、7ptにぃ。」
「【〝トリック〟】」
一誠が親指と人差し指を180度回転させて宣言。この宣言とともに、互いのプレイヤーのポイントは小さいボールとして可視化され宙に浮きます。そして一誠の方に第3の腕が出現し、一誠のもつ5つのボールをつかみ取り、万倉さんの方に向かって伸びていきます。
「【〝スーンシールド〟】」
しかしその手は即座に光の壁でシャットアウトされ、消滅。
Turn 7
Issei 5pt(stay) Miroku 7→0pt
【〝trick〟Lv.2(S1)】 【〝soon shild〟Lv.3(S1)】
R○○●●● R○○○○○
L●●●●● L●○○○○
「九山君は〝トリック〟によるポイント交換を狙いましたが、副会長の〝スーンシールド〟により阻まれました。ちなみに〝スーンシールド〟は通常の〝シールド〟とは違い、相手のターンに防御できる技。つまり次は。」
「私の番よ、【〝手術〟】。」
万倉先輩は左人差し指を下ろす。最初からずっと攻めてこないな。昔のノーデと出会う前の俺に似てる。ポイントをためて何かを狙っているのかもしれない。
「【いっせいのーで〝雨〟】」
この攻撃に先輩は右の中指から下3か所がかかった。
「【いぃせいのーで」
万倉先輩が初めて掛け声を発した。攻めてくる。
「〝雨〟】」
Turn 10
Issei 5pt Miroku 1pt
【〝rainy〟Lv.1(S1)】
R○○○○○ R○○●●●
L○○●●● L○○○○○
一誠は3か所を下げています。そこに向かって雨の水滴がまとわりつきます。
「さあて、九山君が副会長の攻撃に3か所かかりましたあ。」
上戸さんは左手の指を3本上げて、嬉しそうに言います。
「ちなみに今九山君と副課長の手の形が左右反転して同じですが、これは〝ツインパァワー〟ではありませんのでご注意を。」
「初心者はよく間違えるわ。私がそうだった。」
さっきから万倉さんは上戸先輩の解説が一区切りつくたびに補足しています。息ぴったりですね。
「万倉先輩と上戸先輩、仲いいんですね。」
同じことを一誠も感じ取ったのでしょう。
「お、いいところに気づきましたねぇ九山君。学年は1つ違いですけど幼稚園、小中と私と副会長は同じなんですよ。ああ、今〝イセノ〟部にいる本町君も含めた3人で今でもよく話しますし。解説しましょうか。」
「そうね、腐れ縁に違いはないわ。だけどその解説は今いらない。勝負に戻りましょう。」
「はい。」
そのあとの勝負は11ターン目、一誠の〝晴れ〟に新しくかかった指はなく、続く12ターン目、万倉さんは右中指を〝手術〟で治します。そして13ターン目、一誠は〝雨〟を宣言。ここでも万倉さんに新しくかかった指はありませんが。
一誠は自ら指2本を新たに固め、右手5か所すべてに水滴がまとわりつきます。
「自分でために行く気かしら。」
万倉さんの言う通り、〝最高の手術〟のフラグっぽくもありますね。万倉さんは先にその技を使ってしまっているので、ポイント差をつけに行くととらえることもできます。
「先輩がポイントをためるのを黙って待つわけにもいきませんしね。」
「そう、まあ確かにこのまま私が通常の〝手術〟をしていくとした場合、あなたが次のターンで一気にためて10ポイントに到達、〝ブラックホール〟などの技を使えば、私に防ぐ手立てはない、かもしれないわね。」
現在のポイントは一誠が5pt、万倉さんが2pt。一誠が〝最高の手術〟のあと即座に〝ブラックホール〟を使ったとすれば万倉さんが〝シールド〟の5pt分を用意するよりも早く仕掛けられるため、そのまま万倉さんの指を全滅させることができるでしょう。
「でも、【〝手術〟】。」
万倉さんは右薬指をそういって下ろします。明らかに誘導していますね。さて、一誠は。
「【いっせいのーで〝6〟】」
Turn 15
Issei 5pt Miroku 3pt
【〝6〟】
R●●●●● R○●●●●
L●●●●● L○○○○○
ために行くと見せかけての、数あて。それに万倉先輩は最初から〝手術〟を多用していた、おそらく前のターンで5回目、たぶん次のターンで〝幸運の手術〟を使えると思う。だから、さっき万倉先輩が言っていたようにはならない。
そして今、お互いの上がっている指のトータルの本数は6本。よし、当たった。
「やるじゃない。」
万倉先輩も驚いている。不意を衝けたみたい。
「でも……。」
俺は左手を抜こうとする。だけど、おかしい。
「片手が……、抜けない!」
今回初登場の「スーンシールド」、もともとは「相手のターンにシールド」というそのまんまな名前だったんですが、さすがに変えました。実は名前だけ作中に先出ししてます。そしてこの技が使えたとすると、37話の試合の結末をある種決定づけてしまうのですが。
次回は11/4までに更新予定です。よろしくお願いします。




