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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第4章 中学入学編Ⅰ
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第48話 生徒集会

今週は予定があるので早めの投稿です。

4月以降,土曜か水曜投稿だったのでたまには別の曜日に更新で。

それでは本編、どうぞ。

 午後、体育館。パイプ椅子や飾りなど午前の入学式の面影はもうない。おそらく体育館本来の姿ともいえるその空間に再び一年生が勢ぞろいする。

 壇上には8人の在校生が立っていて、そのうちマイク付きヘッドセットを装着した茶髪のツインテール女子がしゃべりだす。

「これから生徒集会を始めます。本日の司会を務めますのは私、いつもニコニコ、生徒会唯一無二の中3、上戸(うえと)二子(にこ)です。今皆さんの前にいるメンバーは全員生徒会で、これから学校生活においてのルールを説明します。あと、言い忘れそうなんで初めに言っときますが、生徒会は絶賛メンバー募集中でぇす。興味があったら、部活届に必ず生徒会の3文字を書くのですよ。」

 上戸先輩、途中からだんだんテンションが上がってきたのか、大げさなジェスチャーや甲高い声にそれが出始めている。

「うちの部活は中高合同で、生徒会は壇上の8人で活動していますぅ。では早速、他のメンバーも紹介しましょう。まずはこの学校の頂点に君臨する絶対王者、我らが生徒会長、高2のかじたぁ、まさむねえええ。」

「初めから張り切りすぎだ。」

「ぐへっ。」

 会長に脳天チョップを食らう上戸先輩。あとよく見たら、梶田先輩は右中指あたりに指輪をしている。

「入学式でも挨拶はしたが生徒会長の梶田だ。ああ、最初に言っておくが俺は暴力的な人間じゃない。この行為もこいつの趣味だ。ちゃんと契約書まで作って押印もある。」

 わざわざ紙の契約書を見せる梶田会長。今時珍しい紙媒体、押印ありの契約書。かなり念入りだ。

『学校でもコンプライアンスは厳しいですからね。』

「コンプライアンス?」

『法令遵守、企業などが法令を守ることですね。』

「俺の知らない横文字使うなよ。」

『常に知識は最新にアップデートするものですよ、一誠も勉強になるでしょう。』

 ノーデも母さんと同じこというなあ。

 さて、会長に注意された上戸先輩だが、笑みとよだれをこぼしながら言った。

「会長、そう否定せずに。私はいつでも会長の手刀をこの身で受け……。」

「キモい、あと時間の無駄。早く進めろ。」

 会長の冷たい視線にも動じる様子はなく、むしろ喜んでる? あの人はMなのか。

「はいはい、そしてその会長を補佐する副会長、中2のまくらぁ、みろくううう。」

 その紹介とともに腕組みをした紫髪のショートカットの女子が口を開く。

「副会長、そして十指選、左小(さしょう)万倉(まくら)よ。よろしく。」

 淡々とした口ぶり、そして左小指には確かに十指選の証である指輪がはまってる。

 あの人は鮮明に覚えている。去年の年末にカナデが十指選になると決まった時、抗議していた人だ。

「あとその他、生徒会メンバーの皆さんです。」

 上戸先輩は急にテンションが下がり棒読みに。紹介された人たちは「さらっと流すな。」と口を合わせて抗議したが、「面白みに欠ける人なんで。」と一蹴されていた。

「ではまず会長の学校生活について説明から。」

 すると梶田会長は自分の技板を腕輪にかざす。同時にスクリーンも何もない上空に先輩の経歴一覧が映し出された。たぶん立体投影装置で映し出しているんだろう。会長はそのまま縦にスクロールして、規則の書いてある場所で止める。

「基本、学校の規則は学生証を読み取れば開く、このデータベースにすべて乗っている。暴力や犯罪に手を染めることがない限り、普通に授業を受けて、普通に部活しておけば、普通に卒業できる。」

「会長、説明雑ですよ。」

「省略できるところは省略、要領よくいった方がいいだろ。それに今日のメインはここから、そっちに時間を割く方がいい。」

「まあ、それもそうですね。」

 上戸先輩の指摘もそうやって言いくるめられた。なんというか、会長って効率廚なのかな。てっとり早く済ませようとするところとか。

「ただこの学校で1つだけ特有のルールがある。それはこの地方の古きしきたりにのっとり、生徒間のもめごとはすべて〝イセノ〟の勝敗で決めるというルール、これは覚えておいてほしい。俺からは以上だ。」

 〝イセノ〟の勝敗で……。

「会長、ありがとうございました。捕捉しますと、自分の主張を通すには〝イセノ〟の強さがものをいうということです。とはいっても、〝イセノ〟をやったことがない、もしくはルールをなんとなく知っているだけなんて人も多いでしょう。でも、ご安心あれ。今回の集会では〝イセノ〟についてちょーわかりやすく解説しますので。」

 上戸先輩はそういって投影の方に目をやると、ネットのページに切り替わった。

「では〝イセノ〟とは、ネットで調べますとこんな記事が出てきます。この福ノ山市一体を起源とした、主に2人で行う指遊び。プレイヤーはそれぞれ自分の指10本を自由に動かせ、先攻後攻決めた後、1ターンごとに技か数あてを宣言する。数あてで宣言した数字がお互いに上がっている指の数と一致した場合、左右どちらか片方の手を抜く。両方の手を抜ければ勝ち、と。これが基本的なルールです。」

 ここまでは俺が大体知ってる内容だ。

「そしてこの〝イセノ〟はその名前の通り、〝いっせいのーで〟という掛け声を省略したものです。技や数を宣言する際にはほぼほぼこの掛け声を前に付けます。逆に掛け声がないと。」

 投影が名前も紹介されなかった生徒会の人たちの手元に移る。


「3! よし当たった。」

「おいおい、どのタイミングで宣言するのかわからなかった。今のはずるいぞ。」


「なんてことが起きかねませんからね。」

 すごい、棒読み演技だな。

「公式ルール上では最低限、指の上げ下げに関わる数あておよび技には必ずつけることと明記されていますが、初めはわかりにくいので全部につけとくのをお勧めします。掛け声は基本〝いっせいのーで〟なんですけど、自分なりにアレンジしている人も多いです。最終的にこの腕輪に登録して認識されさえすればいいので、自分だけの掛け声にして個性を出すのもありです。ただしちゃんと勝負をする際には相手とも確認をとりましょう。」

 今までそんな確認したことないな。基本〝いっせいのーで〟がベースにあるから大体わかるし。ああでも、大会とかだと変な掛け声の人とかもいるのかな。

「さて、技については勝負をする際それぞれの技に対して技板が必要になります。しかし、その種類はかなり膨大。指を固める技、攻撃や数あてを防げる技、宣言した時点で特殊な勝ち方ができる技など様々。正直全部を把握している人はいないので、技はこれから代表的なものを紹介していこうと思います。じゃあ、これで私からのざっくりとした概要は以上です。」

 上戸先輩は一歩引いて、代わりに一歩前に出たのは万倉先輩。

「では、続いて技の説明を行うわ。まずは一番代表的な技〝晴れ〟を例に説明する。」

 そうすると、万倉先輩は技板のうちの一枚をポケットから取り出す。

「まずこれが技板、透明な板ね。この状態だと正直何もわからないけど技名を宣言する、もしくはこうすると」

 先輩が自分の腕輪に通すと、その情報が投影された。

「何の技かわかるわけ。技にはレベル、種別、系統、効果が必ずあって、ものによって発動条件や制約がつく。〝晴れ〟の場合レベルは1、種別は攻撃技、系統は天候系、効果は自分および相手が上げている指を固めるというもの。」

「学生証と同じだね。」

 大数君が小声で俺の方につぶやいた。学生証も色つきとはいえ疑似技板だから扱い方は同じなんだろう。俺の持ってるゲームの疑似技板も腕輪に通すことで起動するしな。

「とこんな感じで一つ一つ説明しててもらちが明かないから、今から一年の誰か一名に私と見本の試合をしてもらうわ。さて、誰にやってもらおうかしら。」

 万倉先輩は俺たち一年をぐるりと見渡す。唐突な展開に、大半の一年は静かにその様子を見守る。ただ一人を除いて。

「なら、私と勝負してもらえませんか。」

 真っ先に手を上げたのはカナデだった。勇気ある行動だ。

「三好カナデさんだっけ。」

「名前覚えてくれているんだ。そうね、大会の予選以来?」

 カナデはうれしそうだが、万倉先輩の顔色が若干ゆがむ。

「一応ここでは先輩と後輩、言葉遣いには注意しなさい。」

「ああごめんなさい。まあまあ会ったことある仲なんでつい。それで勝負の方は?」

「あなたとやると長くなりそうだからあとでゆっくりやりましょう。今は。」

 万倉先輩はほかの一年生を見渡して、そして俺のいる方で視線を止めた。

「九山一誠君。前に出てきてちょうだい。」

 えっ、俺!

 いきなり指名されたのは驚いた。というか俺は先輩のこと知らないのにあっちはもう俺の名前を知ってるのか。とりあえず呼ばれた以上、返事して前に行かないと。

「頑張ってね。」

「うん。」

 大数君と一言だけ交わして、俺は列の間をすり抜け壇上に上がった。

「あの、どうして俺の名前を?」

「新入生のリストは一回見てるし、一発でわかったわ。あなたの髪型、目立つもの。」

 どうやら、俺の1のくせ毛で特定されたようだ。

「でも、なんで俺を指名したんです?」

「あら、話はいってるでしょ。私はあなたを倒せば上に挑戦できる、あなたはわたしを倒さないと十指選に入れない。お互いに戦いたい理由があるならやるしかないでしょ。」

「なるほど。」

「それに九山君。私、少し気になってたのよね。あの士義さんがあそこまで言うんだもの、楽しませてくれるのよね。」

 十指選、左小指の万倉先輩。遅かれ早かれ、俺も戦わないといけない相手だ。

「受けて立ちます。やるからには負けません。ああ、俺が勝ったらその証としてその指輪をもらいますよ。」

「ああこれね。いいわ。」

 先輩はまるで指切りでもするかのように左小指だけを上げて俺に見せる。

「ただし勝てたらね。でも残念、万に一つも、その可能性はないわ。」

 見本の試合と題した、俺の挑戦が火ぶたを切る。


ということで導入が長かったですが次回からバトル回です。間が空きますが、10/28までに更新予定です。よろしくお願いします。

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