第46話 入学式後編
皆さんは文章を書いてるうちに筆が乗ってきて、話が長くなるってことあるでしょうか。
今回の入学式の話、まさにそれです。
ということで後編です、どうぞ。
士義さんの俺の質問に対する返答はこの一言から始まった。
「まず確認だ。これからもノーデと一緒に居たいか。」
「はい。」
そこは自信もって即答できる。
「俺にできることがあったら、何でも言ってほしいんです。」
「なら、夏ごろに手術を受ける気はあるか。」
「手術。」
「そうだ、今君の頭からノーデのチップを摘出する手術ができないかという方向で進んでいる。まだいくつか問題があって詳細は伏せるが、まずは君の意思を聞きたい。」
「それはその、受けられたら受けたいですけど。」
手術、それは気軽に受けられるものじゃない。それは一度手術を受けて入院した俺なら痛いほどわかる。
「まあ、そうだよな。ならここからは受けることを前提に話す。もし受けるとなった場合、問題になってくるのが3点ある。」
士義さんは3本の指を立て、すぐにそのうちの2つの指を折る。
「1つ目は安全面。何しろ、一誠君の頭の中が今どんな状態なのかがわからない。退院後、検診に行ったりはしたか?」
「その、受験も控えていたので。実は手術の後はついこないだ行ったんです。そこで担当の医者がいうには、ノーデのチップと俺の神経は密接に結びついていて、そう簡単に摘出できるものじゃないって。」
「担当医は不可志だろ。そこにいる。」
士義さんの指さす方には近田先生がいる。あえて伏せておいたけど。
「私もあいつからその件は聞いた。」
「士義、人を指さすんじゃない。」
近田先生も気づいて絡んできた。なんかこの2人、お互いを見つめあって、バチバチしてる。
『由多さんや私の件がありますからね。』
ノーデの言う通りだろうな。
「難しい手術になる。いくら現代医療が発達したからと言っても、成功するかは保証できない。それと仮に一誠君が助かったとしてもノーデのチップが無事かどうかはわからない。」
「まあ、失敗はしないと思うがな。」
「それは神杉家お得意の予知か?」
「さあ、どうだろうな。」
この二人の会話をそばで聞いていると気まずくなる。
「だが問題はそれだけじゃない。2つ目の問題はお金だ。今回の手術は相当な金額になる。でも、君のおうちにはおそらくそれを支払えるだけのお金はないだろう。」
そりゃそうだ。半年前に大手術をして割と余裕はないって母さんも言ってたし。
「そして3つ目、これが一番面倒。政治的な話だ。ノーデは政府公認ではない。法律に触れる。だから、手術は別の建前で実施しなければならないし、政治的にも問題にならぬような調整が必要になる。」
「と、手術を受けるにしてもハードルが高いわけだが、手術自体は私が何とかしよう。それ以外の問題点は一気に解決する方法が1つだけあるんだよな。」
そういって近田先生が士義さんに目配せする。
「それは一体……。」
「君が十指選になればいい。それが君にできることだ。」
「俺が……。」
十指選、〝イセノ〟トップの10人に入る――。
「十指選になれば、最新鋭の設備で手術を行えるし、塩町グループからの財政的援助も受けられる。そして政治面でも梶田さんのとこでコネがあるしな。それに普通は年末年始に十指選が決まり、それは1年間変わることはないが、今回は異例で、席が一つ空きそうなのだ。そこに、君が入ればいい。」
「でも、俺を倒せばほかの人が十指選になれるとも聞きました。」
「それはどこで聞いた?」
「千草さん、今日スピーチしてた千里さんの子からです。」
「あの女、十指選以外は口外するなといったのに。」
あの女って千里さんのことだな。
「一度整理して話すか、年末の時は勢いで言った部分もあるし。」
『やはり勝負に勝って内心ウッキウキだったんですね。』
ノーデ、そんなこと言っていたな。まあ、確かに唐突だったしテンションが上がっていたのかも。
「十指選、そして一誠君以外の人は一誠君を一番に倒した人が新しく十指選になる。現在の十指選メンバーは君を倒せば私への挑戦権を得る。そして一誠君、君は十指選の左手に当たる5人を倒せ、その際に十指選の証である指輪を回収すること。それが5つそろえばその時点で君を正式に十指選と認めよう。ただしそれまでにほかの誰にも負けないことだな。タイムリミットは君が事故にあって手術を受けた日、9月13日までだ。」
「聞いた感じ、俺だけ条件厳しくないですか。」
「ノーデ、疑似的な無限の巫女の力もあるんだ。それくらいじゃないと釣り合わない。それともおじけづいたかい?」
「士義、あんまり人の神経を逆なでするんじゃない。」
「焚きつけているんだよ。道は鮮明になった、あとは君の意思次第、手術、そしてそのための試練をやってみる気はあるか?」
『一誠、どうしますか。』
現実でも、脳内空間でも、俺の意思が問われる。普通の人だったら、現実的に無理だと思うかもしれない。でも。
「俺、去年の年末にノーデと新しい目標を立てたんです。カナデやあなたたち十指選に並ぶくらい強くなるって。」
そしてカナデと最高の勝負をして、勝つ。
ノーデと決めた目標、それが具体的になっただけだ。つまり、俺のやることは変わらない。
「望むところです。」
「決まりだな。ついでだが、年末の時に言っていたように君が十指選になったとき、私への挑戦権を与える。そこで勝てば、私が知っていることをすべて話そう。」
「はい。それで、十指選の席が1つあくってのはいつなんです。この話はそれがあってからですよね。」
「それは今日中にでもわかるだろう。心配ない、割とすぐだ。それよりも大丈夫かい、時間。」
「あっ。」
リングのデジタル表示を見ると、もう11時になりかけだ。確か11時から教室で説明があるんだった。
「いろいろとありがとうございました。じゃあこれで、失礼します。」
俺は2人にそういって一礼すると、一目散に教室に向かった。途中でチャイムが鳴り、遅刻と悟る。教室のドアを開けると、教壇に立った八田先生が俺をにらみつけていった。
「九山、遅いですよ。」
「すみません。」
式の優しそうな感じとは似ても似つかない。怒らせると怖いタイプかな。
「すぐ着席しなさい。一つ席が空いているでしょう。」
俺は急いで一番後ろの席に着席した。八田先生は咳払いし、全員に向けて話始める。
「さて、全員そろったことですし、まずは自己紹介とでもいきましょう。」
余談ですが、作者は25話あたりをノリで書いてました。あのときもっと一誠の目標を鮮明にしてあげればよかったかなと思いつつ、まあでもキャラクターも人間だからそういうこともあるだろうと思いこの話を書きました。
次回は10/14までに更新します。
よろしくお願いします。




