第45話 入学式中編
前回からの続きです。前みたいにサブタイトルはあえて区切らないようにしています。
それでは本編です。
俺たちは入学式の会場、体育館についた。正門からここまで5分くらい歩いたが、誰一人として声をかけない。むしろ、俺たち4人と距離を置いている。
「近寄りがたい雰囲気、醸し出してるよな。」
「特に母は社長だ。学生が声をかけようとしても親に止められていたりもする。皆様子見しているのだ。」
確かに、そういう人も何人か見かけた。このままじゃ中学で友達が増えないことになるかも。特に千草さんはそういうのを気にしてそうだったしな。どうしたものか。
『一誠……。』
一瞬目をつむっている間にノーデが手招きして、助言を与える。
「そういえば、千里さんってその保護者の席の方に座るの? なんかイメージできないけど。」
「そうだ、母上。母上は来賓代表としてもこの学校に来たのであるな。」
「そうだけど。」
「なら、校長や学校の関係者、他の来賓方に事前に挨拶しておく必要があるだろう?」
「え~。せっかく千草の親としても参加するのだから~いいじゃない~。それに一緒に居ないと不安じゃない~?」
「私にはマーク・スリーもいるし心配には及ばない。大丈夫だ。」
そういわれたらリムジンを運転していたのも、今も後ろでこそこそついてきている黒スーツの執事、スリーさんだ。
「千里、挨拶なら私もついていくわ。子供たちで積もる話もあるのよ。」
そういいながら俺たちの方にウインクする母さん。俺も思わず小さくサムズアップ。
「~わかったわよ~。」
千里さんも渋々了承。2人は先に体育館の中に入っていった。
「ナイス。」
『いえいえ。』
ノーデは本当、他人の心情をわかっているよな。
さて、俺たちは体育館の前で待機。というのも中に入れば、先生たちに場所を案内されるため、その前に話したい人が何人かいる。
と思っていたらいきなり人が押し寄せてきた。主に千草さんの方に。
「すごいね、リムジン登校なんて初めて見た。」
「お金持ち、憧れるなあ。友達になろうよ。」
「惚れました、付き合ってください。」
理由はピンからキリまでだけど。
「ヤマシイリユウデ、オジョウサマニチカヅクンジャナイ。」
とスリーさんがうまく間引きしていたが。
対して俺に対しては意外に人が寄ってこず。
「九山君、おはようございます。」
一番初めに声をかけてくれたのは水色の三つ編み髪、そしてこの声は。
「ナユユ、おはよう。眼鏡してないから一瞬わからなかった。イメチェン?」
「はい……。中学生になるし、コンタクトにも慣れとこうかなって。ところで、そちらの方とはどういう関係で?」
ん? ナユユ、さっきは嬉しそうだったのに、千草さんの方を見てちょっと警戒してる?
「ああ、友達だよ。お互いの親が知り合いで。」
「塩町千草と申す。以後お見知りおきを。」
「え、塩町ってあの……。それはその、すみません。えっと、どう接したらいいのかわからなくて。」
「いや、いいのだ。普通の友達として接してくれれば。ナユユ殿、でよろしいか?」
「は、はい。」
ナユユは内向的な性格だから心配だったけど、2人は打ち解けたようだ。
「おはよう、九山君は早速、友達増やしてるね。」
この声、振り返れば黒髪マッシュの男子が立っている。
「大数君。」
「今日から一緒の学園生活、よろしくね。お二人さんも。」
そして、もう一人。金色の長い髪の女子。
「おはよう、一誠。」
「カナデ、おはよう。」
「へえ、入学前なのにもうこんなに友達が。羨ましいねえ。」
カナデはきょろきょろ俺の周囲を見回していった。
「いやあ、いろいろあって。でもカナデならすぐ友達出来るよ。十指選の指輪、今日はつけていないんだね。」
「学校に指輪はね……。あと、私のポジション、つける指的に誤解されたくないなって思って。」
そういってカナデは視線を自分の左手の薬指に向けた。なんとなく察する。
「それにしても再開して秒でよく気付いたね、そんなこと。」
「えっ、ああ最近観察力がちょっとずつ身についてきてるのかなあ。」
主にノーデの影響だろうけど。
「カナデ……。そうか、この人が一誠殿の……。」
「カナデさん、やっとお会いできました。いろいろ話をしたくて。」
千草さんやナユユはそうつぶやいて話たげだったのだが。
「まあ、時間もあるし、まずは中に入りますか。」
大数君の一声で、それは中断された。俺は手元のリングで時刻を確認。8時55分。式の開始は9時から。
「入ろう。」
いざ、体育館の中へ。新入生に在校生,教師陣に保護者とざっと1000人はいる。俺たちはそれぞれ自分の名前を入り口で待機していた先生たちに伝えると、それぞれの列に案内された。おそらくこの列がクラス単位ということなのだろう。幸い俺たち5人は同じ列、俺の前は大数君だ。
入学式自体はそこまで長くはなかった。前半は開会の言葉、国歌斉唱と数分で終わる。ただ、その中で一番時間を占めたのはやはり校長の話。
『要約すると、中高一貫校であることを生かしたカリキュラム、塩町グループとの提携による最新の設備を備えた学び舎だから勉学には最適、ぜひ励んでくださいということですね。』
ノーデは、10分くらいあった校長の話を10秒くらいでまとめてしまう。
そのあと担任紹介。俺たちの担任は白髪の七三分け、しわが出ているもの優しそうな人物。
「この列は1年D組です。担任は私、八田です。よろしくお願いします。」
挨拶はその一言だけだった。
ちなみにクラスはA~Dの4クラス。一クラス20人だから1年全体で計80人ということになる。
「続いて祝辞、来賓代表、塩町千里。」
「は~い。」
式の荘厳な空気を打ち壊す返事。千里さんってマイペースだよな。
「みなさ~ん。この学校はうちが出資しているので、すご~い設備がたくさんあります。特に~。」
千里さんはそう言ってリングを身に着けた左手を上げる。すると、体育館の中ががらりと変わる。天井はより高く、縦長の窓がいくつもつき、ところどころにステンドグラスの装飾にシャンデリア。まるでラノベでよくあるファンタジー世界の学校って感じだ。
みんながざわつく中、千里さんは説明を続ける。
「と~えい装置、これが最たる例で~す。今回は~、魔法学校をイメージしてみました~。この装置はこの学校のいたる場所についていて~、皆さんのリングと連動させることもできちゃいま~す。ぜひ~、勉学や部活などいろいろなことに役立ててもらえればと思いま~す。」
ものすごくインパクトを残しつつ、千里さんのスピーチは終わった。それとともに投影も終了し、現実に引き戻される。
「いやすごかったね。」
「うん。」
「次に歓迎の言葉です。在校生代表、梶田君。」
「はい。」
大数君とのひそひそ話は中断。次に壇上に上がるのはオレンジ髪の高校生。見覚えがある顔、確か、十指選の集まりに居た。
「近芽台中学校、高等学校生徒会長の梶田です。うちの学校の特徴は校長先生のお話にあったので割愛し、俺は一言だけ。皆さん、新しい生活が始まりいろいろと不安でしょうが、生徒会や先輩方が手厚くサポートしていきますので安心して勉学、部活等に励んでいただければと思います。詳しい説明は午後の生徒集会で連絡します。以上です。」
それだけ言うと一礼して降壇、一番短いスピーチだった。
その後、A組の秋津さんが新入生代表挨拶を行い、校歌斉唱、閉会となった。
親は解散、俺たちは自分たちの教室に移動する。でもその前に、ある人に会って聞きたいことがある。
女性陣にはほかのクラスのみんなと先に教室に行くよう伝えた。今頃、入学式前の話の続きでもしているだろう。一方、俺は大数君に案内してもらって一人のスーツの男性の前まで来た。
「士義さん、お話があります。ノーデの件です。」
大数君に今日保護者としてきていることを聞いていた。話すのは、去年の年末以来になる。
「来たか。大数、悪いが一誠君と2人だけにしてくれないか。」
士義さんも俺が何を話すのか大体察しているみたい。大数君と別れた俺と士義さんは体育館の隅の方へ移動した。
俺がどうしても聞きたかったことは。
「ノーデを助ける計画というのは進んでいるんでしょうか?」
言葉足らずなところもあるかもしれないですが、温かい目で見守っていただけると幸いです。
とりあえず、次のバトルの内容自体は決まってるのであとはそこまで書くだけ。頑張るしかない。
次回は10/7までに更新します。よろしくお願いします。




