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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第4章 中学入学編Ⅰ
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第40話 来訪者

この作品、オリジナリティは突き抜けてると思ってます。

それが受け入れてもらえるかは別として。

では本編です。

 頭の中を調べる……。

「それってどういう意味だ?」

 まさかこいつもノーデのことを知っているのか、そう勘繰る気持ちは彼女の次の一言で見事に打ち砕かれた。

「聞いておらぬのか。一誠殿は私の婿候補なのだ。」

 ――え。

 えええええええ。

「は、初耳なんだけど。」

「拙者の母はそう言っていた。母は塩町グループの社長で忙しいのだが、この件だけやたら話してきてだな。正直親の敷いたレールになど乗っかるつもりはないが、同じ学校となった以上、どんな人物か確認してみたくなったのだ。」

 塩町グループ。思い出した、それだ。この地方では一番大きい企業だよな。たぶん千草さんはその会社の社長の娘。何となくだけど、いいとこのお嬢さんという感じはしていた。着物自体、たぶん相応の値段はするだろうし、携帯用の投影装置なんて一般人は持てないし。

『それに現十指選の右薬に当たる人物の苗字もたしか塩町でしたね。』

 ノーデのつぶやきでさらに思い出す。あの高そうな服を着ていたおっとり口調の人か。

「もしかして君のお母さんって、こうおっとり口調の。」

「ああ、母の名は塩町千里だ。」

 やっぱりか。

「なんか、塩町さんって、親子でイメージ違うね。」

「千草で構わぬぞ。あと母はゆとり世代なのだ。私はそういう風になりたくない。」

 うん、反抗期かな。

「その母が一誠殿の母君とは面識があって、ここを紹介された。」

 そうか、母親同士で面識があったのか。やっとつながった。

「なんか失礼しました。でも、俺なんて恐れ多い。こんな一般人では君とは釣り合わないと思うよ。」

「そう畏まるでない。私は偏見を持たぬ。それにそれは戦ってみて判断することだ。」

 自分で偏見は持たないって言いきっちゃうんだ。

「でもなんで今日なの、事前登校日とかチャンスはあったでしょ。」

「母に4月に入ってからの方がいいといわれたのだ。いろいろ忙しいだろうからと。それと今日から約束も履行されるしな。そうすれば、晴れて私も十指選だ。」

「待ってくれ、どういうことだ。」

「むむ、これも知らぬのか。」

 千草さんは首を傾げ、俺は全力で首を縦に振る。その様子を見た彼女はやれやれといった感じで刀を一旦鞘に納めて話し始めた。

「では順を追って説明しよう。本日4月1日より、君を倒せば十指選の座をいただけるという約束が履行されたのはご存じか?」

 そういわれたら去年の終わりごろ、神杉神社でそんな話をしていたっけ。いやでもちょっと内容は違ったぞ。十指選限定じゃなかったけ。それに。

「えっと、なんかそんなこと言ってた気がするけど。それって士義さんを倒してだよな。」

「それが少々、条件が変わったらしくてな。もうすぐ十指選の座が一つ空き、君を倒すだけで十指選になれるという事態になろうとしているらしい。要は早い者勝ちだ。」

「それって、今から千草さんみたいな人がここにどんどん押し寄せてくるってこと?」

「いや、まだ正式に十指選の座が空いているわけではない。知っているのも十指選の面々と、その親族くらいだろう。私のように。だが、いずれそうなるかもしれぬ。」

 何それ、迷惑な話だな。俺がいくら〝イセノ〟が好きとはいっても次々と勝負を挑まれて。負ければそれで終わりかもだけど、俺は負けたくはないし。かといって俺の実力も世界で戦ったカナデに一勝できるくらいはあるからな。

『それは自己評価がすぎますね。実際、カナデさんと神社で会って再戦したときはすべて負けていたではなかったですか。』

 あくまで一勝だよ。

 最悪の場合、だんだん嫌になってきて、疲れ切って最後は、俺が鋭人に負けたときのように事故にあって――。

『こほん、さすがに想像が過ぎますかね。先を心配するのは構いませんが、あんまりマイナス思考になってはだめですよ。』

 ノーデはこうやってメンタルケアという本来の役目を全うする。

 なんかごめん、ノーデ。

『まあ、まずは何人くらい十指選の座に興味があるのかは知りたいですね。そんなに十指選って、なりたいものなんですか?』

 ノーデのその疑問はもっともだ。

 確かに〝イセノ〟の上を目指すものとしてはなりたい称号だろうが、普通の人がそこまでなりたいと思うだろうか? 特に目の前の彼女にとっては何でも手に入る環境だろうに。俺はノーデの言葉をそのまま口にした。

「十指選は単に〝イセノ〟の強さの称号であるだけではない。この福ノ山市指定の店やサービスでは割引を受けられるほか、特定の施設を使うことができる権限も与えられる。バックにはうちの塩町グループもいるし、政治家にもコネがある。つまり、この町のトップ10といっても差し支えないだろう。」

 という答えが返ってきてびっくりした。そんなにすごい称号だったのか。

「私も無論、なりたいものだ。母を納得させるには。」

 そしてなにか、彼女もかかえてるものがありそう。

 さて、一回俺の頭を整理しよう。つまり目の前にいる彼女の目的は。

『一誠の品定めと、十指選の座を取るため、〝イセノ〟の勝負を仕掛けてきたということですね。』

 ノーデ、簡潔にまとめてくれてありがとう。

「となると、俺はたくさんの人に狙われることになるのか。」

「問題ない。言ったであろう、早い者勝ちであると。私は勝ちに来た。」

 彼女は言い切った。実力者なのかもしれない。

「事情は一通り話したのだし、今度こそ尋常に、勝負。」

 そういって千草さんは抜刀する。

「待って。まだ、心の準備が……。」

 俺の静止を聞かず、彼女は刀を頭上に掲げた。が……。

「むむ、どうしたのだ。これで起動するはず。」

 塩町さんは掲げていた刀を下ろし、違う掲げ方をいろいろ試すも何も起こる様子がない。

「ちょっと、見ていいかな。」

「構わぬぞ。」

 塩町さんから刀を受け取った瞬間、ずしりと重さを感じた。目の前の彼女はよくこれ軽々と振り回せたな。

 さて。俺もぐるっと見回すが、スイッチらしきものはない。ただ刀の鍔が若干光ってる。

『起動はしているようですが、信号を受信していないようですね。』

 信号――。そっか、腕輪とつながってないから映し出す映像のデータが送られてないんだ。

「えっと、電源はついてるけど、腕輪と繋げないとその、〝イセノ〟はできないんじゃないかな。」

「むむ、すぐに映像が映し出せるわけじゃないのか。腕輪は持ってきているが、設定の仕方はわからぬぞ。」

 そういって千草さんの浴衣のすそからフューチャーリングが露わになる。古風な、木目調の見た目のそれは値段も結構しそうだ。

「俺もできるかな、これ。」

『私ならおそらくできます。投影装置の基本構造は理解していますから。』

 というか、ノーデ、いつそんなの学習したんだ。

『一誠の腕輪のWEB取説を見たときに、投影装置との接続方法も一通り確認しているので。一度見たものは大体頭の中に入りますし。ただ10分はかかるかもしれませんが。』

 ノーデ、お前凄いな。でも、10分か……。ここで作業ってのもなんだし、仕方ないな。


「あのさ、立ち話もなんだし、うちの中に入ろうか。」



家の中には入るけど、勝負にはまだ入れない……。

話の進み遅いと思ってる読者の方にはすみません。

次回8/26までに更新予定です。よろしくお願いします。

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