第39話 4月1日
さて,一応新章開幕です。
この話から入る人なんていないかもしれませんが言っておくと,この作品は小説としてみるより、何か違う読み物としてみるほうが抵抗は少ないと思います。(とくにバトル部分、今回はまだだけど。)
それでは本編です。
今日から4月。
父さんは会社で仕事、母さんはカナデの母、ルーシーさんと一緒に買い物に出かけ、俺は一人この家で留守番。
ちなみにカナデがもともと住んでいた家は別の人が買い取ったらしく、カナデは俺の家から2駅くらい離れたところに住むことになったらしい。離れてしまったのは残念だが、学校が始まればまた会える分、安心する。
そして今日の予定、一つは課題だ。近芽台は進学校、入学までにも提出しなければならない課題がある。要は春休みの宿題、小学校を卒業して今年はないと思っていた分ちょっとショックだがやるしかない。
まあ、それはそれで。やっぱり親がいないときにできることだってある。フーチャーリングを使いだして一か月くらい。こいつの使い方にも慣れてきた。
このリング、スマホのようにメールや通話もできるし、アプリを入れておけば、ICカードのようにお金を支払うことだってできる。また心拍数や体温の測定といった健康管理もできるし、PCや立体投影装置につなげて〝イセノ〟をすることだってできる。そしてもちろん、〝イセノ〟以外のゲームも……。
俺はとある技板を取り出した。まあ、正確には疑似技板という技板を模したもので、普通の技板と違い色がついている。フーチャーリングはスマホほど画面の幅がないため、アプリのアイコンを表示するには窮屈すぎる。その欠点を他のディバイスとの接続で補っていたりするのだが、別の対策でこういう物として発売もされている。
それで今、俺が取り出したのはゲームソフトの役割を担っているもので。この腕輪に通せば、そのゲームが起動するのだ。
『またゲームですか? 課題、まだ終わってないでしょう?』
「課題は終わりかけてるし、こういう時にしかやれないだろ。」
『〝イセノ〟一筋ではなかったんですね……。』
「まあ、俺はアニメとかも好きだし。こういうアニメをもとにしたゲームもあるんだなって知っちゃうとやりたくなっちゃうよな。」
そう、欲望は止められない。特に目の前にあると……。
『一誠の両親がその腕輪を小学生の時に持たせていない理由はわかりました。こうやってはまっちゃうんですね、一昔前はスマホ中毒とか言われてましたが……。』
「リング中毒ってか。まあ、あくまで息抜きだよ、息抜き。それに〝イセノ〟のアプリも実は入ってるんだ。」
『一誠……。』
「なんだ、ノーデ。」
『それ、私もやってみたいのですが。』
ノーデは目を輝かせていった。
「さっきとは真逆の意見では。」
『私も常に最新式にアップデートしておかなければいけませんので。』
便利な建前をお持ちで。
まあこいつがこういうのも仕方ない。ノーデは士義さんと勝負して以来、俺以外と勝負してみたいとしきりに言っている。今までは受験や俺の当初の目標であったカナデとの試合があったから我慢していたみたいだが、それが終わったからだろう。ほんと人間臭いAIだな。
「まあ、アプリ上ならいいか。今度ダウンロードして一緒にやってみよう。」
『今じゃないんですね……。』
ショックを受けているノーデ。
「また今度な。」
ピンポーン。
突然インターホンの音がうっすら聞こえてきた。この家の構造上、玄関を入るとすぐに階段があるから、俺以外誰もいないこういう状況だとインターホンの音が聞こえることがある。
「誰か来たのかな。」
俺はドアを開けて、階段を下る。その際、2回目のインターホンの音。間違いなく来客だ。
「誰だろう?」
俺は玄関の直前にあるインターホンのモニターを見た。栗色の髪、髪型は短くも長くもない、えっと……。
『おかっぱ頭、ボブといった方がいいですね。』
そうそれ。さらに色白の肌にきりっとした目、そして別に今日は特段特別な行事や祭りとかないはずなのに、着物を着た女性が映っている。
直後、扉をどんどんと叩く音。
「たのもー。たのもー。」
その人はここを道場だと勘違いでもしてるのか。表情一つ変えず、扉をノックしてそう連呼している。よく見れば刀らしきものを帯刀しているし。
「知らない人だな。」
そして、いきなりインターホンのカメラに向かって顔を近づけこう言った。
「九山一誠、九山一誠殿はおられぬか?」
驚いて俺は尻餅をついた。俺に要件があるようだが、なんだろう、何を考えてるのかわからない……。
「なんか、出るの怖い。」
『一誠がそう思うなら、出ない方がいいかもしれないですね。帰っていくまでここで様子を見ましょう。』
ノーデの助言もあり、しばらく観察することにした。
しかしこれが思ったよりも長かった。
最初は扉をたたく音と声がしなくなって、諦めたかと思ったがモニターには彼女の姿がまだ映っている。
「もしかして、帰ってくるまで待つつもりなのかな。」
やがてモニターが時間切れで消えた。仕方なく、玄関ののぞき穴から様子をうかがうと。
「まだいる。」
しかも彼女は玄関の前にしゃがみ込んで、道路の方を向いて正座した。まるでこの家の門番でもしているかのようだ。
そのまま10分が経過した。
「10分も玄関で微動だにしてない。さすがに出ないとかわいそうだよな。」
『見た感じ悪徳業者というわけではなさそうですし、たぶん年は一誠と近いですよ。』
それは俺も思った。
顔や体つきは中学生って感じだし、手提げかばん一つ以外、荷物らしい荷物も持ってない。スマホとかいじってる形跡も見られず、ただぼーっと道路の方を向いている。
俺は玄関の押戸を開けようと力を込めた。その変化を感じ取ったのか、戸の先にいる彼女は立ち上がり、一歩後ろへ下がる。
「あの、どちら様でしょうか?」
「拙者、塩町千草と申す。年は12、もう少しで近芽台中学の学生になる身。九山一誠殿、でよいか?」
塩町? どっかで聞いたことのある苗字だけど。これから同級生になる子か。事前登校日の1回しか近芽台にはいってないから、俺はまだ同級生全員の顔全員を覚えられていない。でも、目の前の彼女はそこで俺のことを覚えたのだろうか。いやそれでも、この住所を突き止めてわざわざ来ようと思うか?
「えっと、九山一誠です。こちらこそよろしく。それで、挨拶しに来たってわけでもないよね。ご用件は?」
すると彼女は脇差のようなものを鞘に入れたまま取り出し、俺の喉元に突きつける。
「いざ尋常に、勝負。」
「いや、命だけは勘弁を。」
俺は思わず両手を上げていった。
「むむ? ああこの刀は物騒なものではない。これは携帯用の立体投影装置、刀のように見えるが、刃先の部分は柔らかい樹脂でできている。」
彼女は鞘から抜いた刀の刃先をつまんで曲げて見せる。それって投影装置にいる要素か。いやそれよりも。
「え。えっ。それってつまり、何をしに来たの?」
「お手合わせ願いたい、〝イセノ〟なるもので。」
「えっと、話が読めないんだけど。なんでかな。」
「むむ、なんでか、か。そうだな。」
彼女は少し考えこみ、何か思いついたのか鞘から抜刀して構える。そしてその刃先を俺の方に向けて、頭の輪郭でもなぞるように動かしながらいった。
「一誠殿がふさわしい男かどうか、見極めるため。頭の中の隅々まで調べさせていただきたい。」
8月なのに作中では4月1日。季節合わないね。
次回は8/20までに更新予定です。(というのも活動報告にも書きましたが、スマホの調子が悪く、外出中だと更新できないかもしれないので幅を持たせようと思います。1分ずらしは結構こだわっているので)
一応ざっくりとした物語のゴールはありつつも、ここからは本当に書きだめも何もないのでその都度修正が入るかもしれませんが、温かい目で見守っていただくと幸いです。
今後もよろしくお願いします。




