第36話 カナデの壁
引き続きバトル回です。忘れた人は3章前のルール説明,技一覧をご覧ください。
また相変わらず視点は例の表記で交互に代わります。
それでは本編です。
カナデの現在の手術ポイントは15pt。昔だと、このまま〝ゴッドウォール〟を張られて、劣勢になって負けた記憶がある。〝ゴッドウォール〟は20ptで発動できる技だから、あと5pt。
でも、今が昔と同じとは限らない。
「【いっせいのーで〝晴れ〟】」
「やばっ。」
カナデの動ける指が今、すべて上がってる。
「半分だけど、やるしかないか。」
半分?
カナデは手を広げ、弧を描くように横に長し、宣言する。
「【〝ハーフゴッドウォール〟】」
その言葉を合図に出現する金色に輝く、光の壁。ただその高さは〝ゴッドウォール〟ほどではなく、手を半分まで覆いつくして終わる。
ポイントを使わせはしたが、厄介そうな技に違いない。
Turn 24
Issei 7pt Kanade 15→5pt
【〝half god wall〟Lv.6(S1)】
R●〇〇〇〇 R〇〇〇〇〇
L〇〇〇●● L〇〇○○○
5本の指が回復する。〝ハーフゴッドウォール〟発動時の効果で。
「【いっせいのーで〝晴れ〟】」
一誠の宣言とともに〝晴れ〟の日差しが降り注ぐ。でも同時に私の張った壁が上昇し、自分の腕のすべてを覆い隠す。
「効かないわよ、このターンはね。」
〝ハーフゴッドウォール〟は10ptで使用可能な技。そして名前の通り、半分の〝ゴッドウォール〟、つまり自分のターンが来るごとに張られている状態、張られていない状態を交互に繰り返す。
「このターン、ってことは次のターンは効くんじゃないのか。」
「正解。でも」
〝手術〟で左親指を治す。これで私の指は全回復。
「これで、次のターン、私は〝トリック〟で一誠のポイントを奪えるってわけ。さあ、一誠の番だよ。」
このターン、私を守る金色の壁は高さを下げ、私の腕があらわになる。
正直、この技は使いにくい。常に張られているかいないか把握しておかなければならないし、2枚目を張るときは〝ハーフ〟ではなくなる。つまり普通の〝ゴッドウォール〟の技板がないと、2枚目を張ることはできない。中、上級者向けの技だ。
さて一誠は、どう出る?
一誠はこれまで〝晴れ〟を多用してきた。となると真っ先に思いつくのは〝快晴〟。でも、普通は打てない。一誠はすでに4本は〝晴れ〟で固まって動かない状態。つまり〝快晴〟を打てばその部分は確実に固まり、治しづらくなってしまうから。
ここは、〝雨〟か〝晴れ〟で私の指をいくらか固めに来るのが定石。
「【いっせいのーで〝快晴〟】」
Turn 27
Issei 7pt Kanade 5pt
【〝clear sky〟Lv.3 (S3)】
R●〇〇〇〇 R〇〇〇〇〇
L●●●●● L●●●●●
「普通じゃないね。」
「普通じゃ勝てないだろ。」
カナデは〝雨〟と〝晴れ〟どちらでも対応できるようにリスク回避の形か。結果的にカナデの5本を固めたのは大きい。〝トリック〟を使えなくなって奪われる心配はなくなった。
でも、あの形。
「普通じゃ勝てない、か。その言葉を言えるのは、何百回、何千回と勝負してきた人がいえる言葉だよね。やっぱり特訓したんだ。」
「まあ、いろいろと。」
「目線そらした、図星かな。さっきは現実味のない答えだったけど、実際どんな感じでやったのか知りたいな。参考にしたいし。」
「まあ、いろいろとな……。」
俺の脳内空間でとは言えないし。言ったら言ったで変人扱いかも。
『一誠、嘘つくのは下手ですよね。』
瞬きの間にノーデにからかわれた。
「じゃあ、普通にやるのやめようかな。」
カナデはすべての手を広げる。何か仕掛ける気か。
「【いっせいなで。」
これは鋭人がやってたフェイクか。普通に考えればこのまま〝雨〟、ちょっと考えれば左手を下げて〝晴れ〟。もっと考えれば。
「15】」
数当て。カナデはすべての指を上げていて10。俺は左親指と人差し指を追加で上げて6。
「16の方か。惜しいな。」
16の方? まるで二択に絞っていたかのような言い草だ。
「危なかった。でも、15か16で来るって読んでいたのか?」
「うん。これ鋭兄が前、一誠に使った戦法って聞いたから、同じ前振りをすれば3本とも上げるってことはまずしないと思ったの。かといって〝雨〟、〝晴れ〟どっちが来ても困るから、たぶん追加で上げるのは1、2本って予想してた。でも外しちゃったな。」
なんてところまで考えてんだ。勝てるか不安になってくる。
「さあ、一誠の番。このターンは〝ハーフゴッド〟は復活する。」
再びせりあがってくる金色の壁。
「いっせいので……【〝幸運の手術〟】」
Turn 29
Issei 7→15pt Kanade 5pt(T.P)
【〝lucky operation〟Lv.2】
R○〇〇〇〇 R〇〇〇〇〇
L○○○○○ L○○○○○
一誠の〝雨〟にかかっていた指3か所が青い光に包まれる。さらに〝ツインパワー〟、しかも〝いっせいので〟とつけて宣言。
私が使ったのと同じ手を。
油断していた。一誠の指が3本下がっている限り、〝ツインパワー〟は起きないから適当に指をあげとけばいいだろうと。
「【いっせいなで〝雨〟】」
一誠は左4か所かかった。〝ツインパワー〟狙いもお見通しか。
面白い。
「このターンは、カナデを守る壁はないんだよな。」
「ええ。」
「そして、〝ウォール〟はその使用者が〝シールド〟を再び張れば消滅する。」
その確認をするということは、確実に仕掛けてくる。
「そうね。〝ゴッドウォール〟でもそうでしょ。」
「でも、〝ゴッドウォール〟は攻撃力S2までの技は常に効かない。でも、今カナデが張ってるのは〝ハーフゴッド〟だ。半分だからこの手が使える。」
私に〝シールド〟を張らせて、割る気ね。
「【〝ブラックホール〟】」
放たれた、黒い霧。
でも、それが狙いなの。
Turn 31
Issei 15→5pt Kanade 5pt
【〝black hole〟Lv.5(S1)】
R○〇〇〇〇 R×××××
L○●●●● L×××××
〝シールド〟を使ってくるはずだ。そうしなければカナデの指は全滅する。そう思っていた。
でも、彼女はニヤリと笑った。
〝ブラックホール〟がカナデの両手を飲み込もうと迫った瞬間、彼女は宣言した。
「【〝カウンターシールド〟】」
その言葉とともに、黒い霧の浸食は止まり、何が起こった?
手が重い。俺の指が動かせない。
死滅、している。
「〝カウンターシールド〟は私の切り札、手術ポイント5ptと自分の動く指の数が相手の放つ技のレベルと同じなら発動できる技よ。」
〝ブラックホール〟はレベル5。カナデは30ターン目の時点で指が5本しか動かなかったから条件を満たす。
「そして効果は、相手の放った技を跳ね返せるの。」
跳ね返す?
そうか、俺は今、自分が放った〝ブラックホール〟に自分がかかっているんだ。
「一誠が前のターンで〝幸運の手術〟をしたとき、〝ハーフゴッド〟の守りがないこのターンで何か仕掛けることは予想がついた。そして、その攻撃が〝ブラックホール〟で安心した、この技の使用条件を満たせるからね。」
俺の狙いはお見通しってわけか。
「そして、なんで技の効果、べらべらしゃべってると思う?」
説明するためだけじゃないのか。いや、この言い草……。
「時間稼ぎか。」
「ピンポン、10秒経っちゃったね。公式ルール上、もう〝シールド〟できない。特に腕輪つけてやってるからそのあたりは厳格よ。」
説明を聞いて、理解するのに時間を費やしてしまった。まったく〝ブラックホール〟っていう技は、どこまでも俺の行く手を阻むみたいだ。
でも、これはチャンス。鋭人のときはノーデが助けてくれたけれど、今度は俺がこのトラウマをちゃんと乗り越える。悔いを残したくはないから。
正直、この作品のバトル回を書くのは難しいです。
でも、一人でも多くの読者に指ゲームの奥深さとかが伝わればいいなと思って書いてます。
次回は7/22予定です。
よろしくお願いします。




