第35話 変化したこと、してないこと
今回は予告通り、早めに投稿です。本編はバトル突入、忘れた人は3章前のルール説明,技一覧を見てください。
それでは本編です。
技板を腕輪のひっかける場所に通すと自動的に〝イセノ〟モードに移行する。PCの画面もそれ専用に切り替わる。
「このモードだと、立体投影ほどではないけどパソコンの画面越しに技のエフェクトが出るの。まあ、私もやるのは初めてなんだけど。」
カナデは左腕に着けた自分の腕輪をチラチラ見せながら言った。カナデの腕輪には技板が20枚近く垂れ下がっている。
「じゃあ、そういうとこも楽しんでいこう。で、先攻後攻はどうする?」
「まあ、一応私は世界3位という肩書もあるから、チャレンジャ―である一誠からで。」
「わかった。じゃあ行くぞ。」
俺は大きく息を吸って宣言する。
「【いっせいのーで〝7〟】」
俺の宣言に対し、カナデは右親指1本上げただけ。
「いきなり数当て、しかも私が昔よく上げてた数字。でも、そう簡単にはいかないわよ。私だって成長してるんだから。」
2ターン目、カナデの番。
「【いっせいなで〝1〟】」
カナデの、「いっせいので」の「の」が「な」になってる独特の掛け声。自分の名前と書けたその掛け声は変わってないんだな。
俺は右手の上3本、左手の上4本上げた。カナデはどこも上げていない。
「ふーん、7か。わかってるね。」
前のターン、カナデは俺の名前に入っている数字の1を上げたんだ。カナデの7を上げないとな。
「挨拶はここまで。いくよ。【いっせいのーで〝雨〟】」
Turn 3
Issei 0pt Kanade 0pt
【〝rainy〟Lv.1 (S1)】
R○○○○○ R○○○○○
L○○○○● L○○○○○
今の私ノーデは正直言うと暇です。というのも。
『今日私は本当に見てるだけでいいのですか?』
「ああ、約束しただろ。いつまでもお前に頼っていられない。それに今日は自力で勝ちたい。」
と一誠に言われまして。
いや、嬉しかったですよ。成長した子を見る親の気持ちとはこういうものなんだなと感じたくらいですから。しかし、一誠以外と対戦してみたいという気持ちもあるんですよね。
さて、暇つぶしとして私は最近ちょっとしたことにはまっています。それは、一誠の対戦相手の思考再現です。今回は勝負の状況やカナデさんの表情から彼女の思考を再現していきましょう。
一誠の宣言とともに薄い雲が一誠の頭上を覆い、一滴だけ水滴が投下される。一誠の左小指に向かって。
「へえ、本当に技のエフェクトが出るんだ。」
「そう、この腕輪を使ってるとね。じゃあ、私も行くよ。【いっせいなで〝晴れ〟】」
日差しが一誠の指4か所にあたり、日焼けさせる。
「【〝手術〟】」
畳みかける。
「【いっせいなで〝雨〟】」
「【〝手術〟】」
「【いっせいなで〝晴れ〟】」
〝手術〟で治してはいるけれど、ここまでで一誠の指は合計6か所固まった。
Turn 8
Issei 2pt Kanade 0pt
【〝sunny〟Lv.1 (S1)】
R●●○○○ R○○○○○
L●●○○● L○○○○○
「……【〝手術〟】」
攻撃しようか迷ったけど、俺は左中指を治した。でも、次は仕掛ける。
「なるほど、〝ツインパワー〟を避けてる感じか。なら……。」
カナデは指を鳴らして宣言する。
「【〝トリック〟】」
「3ptで?」
「3ptだからよ。」
俺とカナデの〝手術ポイント〟が入れ替わる。
〝トリック〟は自分の指がすべて動く時しか使えない技。でも5ptあれば〝シールド〟されるし、今、俺の指は5か所が固まっているから、ちょうど俺が〝トリック〟返しができないタイミングでとられたってことか。
一足遅かったな。攻撃しとけばよかったかも。
Turn 10
Issei 3→0pt Kanade 0→3pt
【〝trick〟Lv.3(S1)】
R●●○○○ R○○○○○
L●●○○● L●●●●●
一誠は11ターン目で左薬指を〝手術〟。でも12ターン目、私が放った〝雨〟にその指だけが再びかかった。つまり、一誠は今、5か所が動かない状態。
13ターン目。
「【いっせいのーで〝晴れ〟】」
攻めてきた。でも予想通り。
「左の5本全部上げたか。」
これでお互い5本ずつ指は動かない。考えることは同じだったのか、次の技の宣言はかぶった。
「「【〝最高の手術〟】」」
お互いの指がすべて回復する。今の手術ポイントが私は8pt、一誠が6pt。
「【いっせいなで〝雨〟】」
Turn 16
Issei 6pt Kanade 8pt
【〝rainy〟Lv.1(S1)】
R●●〇○○ R○○○○○
L〇○○●● L○○○○○
「下げるしかないよね。〝ツインパワー〟を避けるには。」
そう、カナデの言うとおりだ。10Pt先に貯められたくない。
「【〝手術〟】」
「【いっせいなで〝3〟】」
カナデはここで、数当てに来た。
Turn 18
Issei 7pt Kanade 8pt
【〝3〟】
R●〇●●● R●●●●●
L〇○○●● L●●●●●
数当ては外したけど、これでいい。一誠が考えなければならない選択肢が増えた。数当てがある、それだけを意識させるだけでも次の技でさらに指を固めやすくなる。
「【いっせいのーで〝晴れ〟】」
私の指が2か所、かかったけど支障なし。私の番。
「【いっせいなで〝晴れ〟】」
ほら、思った通り。一誠は追加で4本かかった。
「【いっせいのーで〝晴れ〟】」
えっ。
晴れが3連続! 予想してなかった。右手は全滅、左手も2本、計7本も上げちゃったじゃない。
「くっ、やるわね。」
「これでお互いに動く指は3本。同じ状況ってわけだ。」
ここまではいい勝負。昔の一誠とは大違いね。
「これで数当てしやすくなった。」
「そりゃ、お互い様だよ。」
「昔の私になら多分勝てるかもね。」
「それは、素直にうれしい。」
「でも、今の私には勝てないよ。だって今の私を一誠は知らないだろうから。」
正直この手はあまり使いたくない。
「全力、勝負を始める前、全力でって言ったよね。」
「ああ。」
でも、使わなければ勝てない。少し賭けだけど、今の私の全力はこういうことを含めて全力といえるから。
「なら遠慮はいらないね。【いっせいな……。」
ここまで言えば普通は数当て、もしくは指の状態を固める技と相手は思い込む。
右親指を
「【〝手術〟】。」
「これは……。」
Turn 22
Issei 7pt Kanade 9→15pt
【〝operation〟Lv.0】(T.P)
R●〇〇〇〇 R●〇〇〇〇
L〇〇〇●● L〇〇〇●●
フェイント、それに動く左中指を上げて強引に〝ツインパワー〟を起こした!
「〝いっせいので〟の掛け声って、〝手術〟とかの技の前にもつけていいのか?」
「あれ、知らない? 昔から掛け声自体は宣言するたびに必ず付けてきたの。それが技が増えてきて、省略されるようになった。今では最低限指の上げ下げが関与する技と数当てのみには必ずつけるってルールに記載されて、じゃあ、それ以外はつけないって誤解してる人も多いみたい。」
「でもその、不意打ちするのはカナデらしくないというか。」
「そうね。でも、そうしなければ勝てないときだってある。このゲームって基本的に読みあい、情報戦なの。だからこそ、自分の手をいかに相手に読まれないかが大切。世界大会の決勝とかに進める人っていうのはそれがわかってる人。」
「そうなんだ。」
「昔の私は無限の巫女さんのような、正々堂々と、どちらかと言えば読むことに特化して相手の攻撃を軽くさばいていくような、そんなプレイに憧れた。」
「熱心に試合見て、俺に解説してたもんね。」
「うん、逆におじいちゃんのような、フェイントとか挟んで自分のペースに持っていくようなプレイはあまり好きではなかった。でも、私には相手の一手を読むだけじゃ無理だった。大会は予選止まりのままで、変わらなきゃいけないと思った。」
巫女さんの場合は予知能力があったから、相手をだますようなことはしなくてもよかったんだろうな。でも、普通の人だったら限界がある。
鋭人も似たようなことをしてたし、たぶんカナデのおじいちゃんもこういうだましあいが強かったんだろう。そういう家系かもしれない。
「これが今の私。変わったでしょ。」
いろいろと変わった。でも、それはカナデだけじゃない。2手3手、先を読まれようが、あいつのフェイントに引っかかろうが、俺は。
「それでも勝つよ。」
「そうこなくっちゃ。」
カナデはニヤリと笑う。その表情は昔から変わらないな。
注:イセノの表記ですが、そのターンで回復した箇所はハイフン(-)で表記するようにしました。
またいつものように更新できなさそうだったら、事前に伝えるなり、活動報告に書くなりします。
次回は7/15予定です、少し間空きますがよろしくお願いします。




