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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第3章 ともとして(小学生編Ⅲ)
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第32話 約束

大人になると、データだの数値だのを求められます。

この作品も数字にこだわってます。(こだわりすぎか……。)

それでは本編です。

 24ターンで決着がついて、立体投影が終わる。同時に、日が落ちてあたりは暗くなったことを実感する。

 しまった、なんかつい調子に乗って勝ってしまったけど、これでよかったんだろうか。

「俺の負けか。〝雷魔切り〟はないと思ってたから不意を突かれたな。ああ、最後の俺の数当て、間違えなければ勝ってたのに。」

 トーモはそう言いながら、バラの街灯に照らされたベンチに座った。ショックだろうな。俺もカナデの時に似たようなことやったからわかる。

「あそこはほんと、危なかったよ。トーモはやっぱり俺より強いよ。」

 こういう時は励ますべき、カナデもそうしてた。

「使う技の相性の問題だろ、それは。」

「いやまあ、いろいろと。でも、なんか勝ってごめん。」

「なんで謝るんだよ。ちゃんと手加減なしで勝負してくれたってことだろ。それにわかったこともあるし。」

「わかったこと?」

「イッセーが俺のことも友達として認識してるってこと。〝ボンド〟の箇所を壊したり、数当ての時に片手を抜いて対処しようとしたりしなかっただろ。」

「それはその、作戦もあったけど。やっぱり友達だからね。」

 俺もそういいながら、トーモの隣に座った。

「まさか、〝ボンド〟に対して、〝ミラー〟を使って〝ボンド〟で上書きするなんてな。」

「つながりは断ち切るんじゃなくて、より強固にする方がいいかなって。」

「やっぱ、イッセーってこだわるよな。そういうとこ。今までも勝負で何かしらこだわってただろ。だから勝てなかったんだ。」

「それは、俺の悪いとこかもしれないけど。」

「違うよ、お前のいいところだよ。」

 トーモにストレートにそう言われて、俺は内心嬉しくなった。

「それに勝てなかったのは過去の話。今日は現に俺に勝ったじゃねえか。それだけ強くなったってことだ。」

 そうか。

 最近ノーデとばかりやってて、気づかなかったけど。

 俺、ちゃんと強くなってたんだ。

「なんかトーモが友達でよかったよ。」

「そう。まあ我ながらさっきいいこと言ったなって思った。」

 俺たちはお互い見つめあって、笑いあった。お互いの腹の中を確かめ会ってほっとしたんだと思う。

 でも、それならなおさら俺の秘密、ノーデのことは言うべきだとも思う。

「トーモ、さっきの勝負の結果はあれだけど。やっぱり話しとくべき……。」

「いや、待った。」

 トーモは俺の口を手でふさいだ。思わず「むぐっ。」って声が出る。

「すまんすまん、思わず手が出て。でも、それ以上言うな。勝負に俺は負けたんだからな。」

 そういいながらトーモは俺の口から手を離す。

「俺は別にイッセーの秘密を知りたいわけじゃないんだ。ただ、最近疎外感みたいなものを感じてて、俺のことどう思ってるのか、確認したかっただけなんだ。学校も結局違うところ行くわけだし。」

「そうだね。塾は同じところ、通い続けるの?」

「いや。しばらくは塾とか通わない。お金がな。」

「じゃあ、ほんと会えなくなるね。」

「連絡先は交換してるんだし、会おうと思えばいつでも会えるさ。でもそうだな、新しい環境に慣れるまで時間かかるかもしれないし、会う目的もなくなるとこう話せる機会も減るよな。」

「どうしようか?」

「だったら。」

 トーモは立ち上がる。何か決めたような顔で。

「俺がやられっぱなしっていうのも癪だから。定期的に会おうぜ。来週とか。」

「来週は、カナデと話す約束があるし、ちょっと無理かな。」

「そうか、なら再来週かな。会う目的は俺が今日聞けなかったイッセーの秘密、話してもらうことをかけて勝負するってことで。そのついでになんか話したり、ほかの予定も入れよう。特にカナデさんとの勝負の件とか聞かせてもらおうかな。」

「再来週なら大丈夫。カナデの件は言える範囲で。」

「勝つ自信ないのか?」

「そんなことはないよ。」

「じゃあ、今から弱気になるなよ。」

 トーモはそう言いながら俺の肩をたたいた。

「うん……負けないよ。」

「もうちょい勝つって断言したほうがいい気もするけど、まあよし。約束だ。」

 トーモが小指を立てて、俺の方に向ける。街灯に照らされたトーモの顔を見て、目が少しウルっとして。

「トーモ、ありがとう。」

「なんでお前が泣いてるんだよ。」

 俺も小指を立てる。そして指切りした。

「約束したぞ、バックレるなよ。」

「うん。じゃあ、もう暗くなったしそろそろ。」

「帰るか。じゃあ、またな。」

 こうしてトーモと別れた。俺の約束も1つ増えて。

『すごくいい友達ですね。もし私が純粋な女の子なら、惚れるでしょう。』

 帰りの自転車をこぎながら、瞬きがてらのノーデとの脳内会話。

「惚れる? お前には近田先生がいるんじゃないのか。」

『あれはいわば、私の前世? みたいなものですし。もちろん今でも気にしてはいますが、私はAIですからね。』

「恋愛とか、まだよくわからなところもあるけど、でもそういう気持ちに人間もAIも関係ないんじゃないかな。」

『一誠も時々いいこと言いますね。』

「だろ。さあて、帰ったら晩御飯とアップルパイかな。」

 自転車の車輪がよく回る。心地いいほど滑らかに。


 2031年3月9日。

 もう一つの約束、カナデとのオンライン通話の日がやってきた。

「ところで、カナデちゃんとはどこで話すんだ?」

 午前9時。俺の家にて家族で朝食中。父さんが話しかける。

「自分の部屋で。」

「そうか、なら父さんのパソコン、部屋に持っていこう。最初父さんと母さんは挨拶させてもらうからそのあとでゆっくりとな。」

「うん。ありがとう。ごちそうさま。」

 俺は食べ終わって食器を片付け、2階の自分の部屋に向かおうと、階段に足をかける。

「一誠、なんか、成長したな。後ろ姿とか、精神的にもたくましくなったみたいだ。」

「そうかな。」

 この半年、いろいろあったからかもな。

 その後、俺の部屋でセッティング。机にノートPCを置き、腕輪との接続をした後、父さんの使い方の説明を受けた。

「説明は以上。じゃあ、そろそろ時間だな。母さん呼んでくる。10時からだろ。」

「うん。」

「なら5分したら行く。先に画面開いて、始めててもいいぞ。」

「わかった。」

 父さんはいったん俺の部屋を出る。俺は目をゆっくり閉じる。

「ノーデ、一応おまえにもちゃんと伝えとくよ。」

『もう知ってますよ、一誠の記憶を確認してますから。』

「でも、ちゃんと自分の口から言ってなかったから、ここで決意表明しとく。」

 そして力強く言った。


「俺、今日カナデに勝つよ。」


次回は6/24予定です。

よろしくお願いします。

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