第29話 隠し事
諸事情でいつも使ってるPCが使えず、今回はスマホメインで編集しました。なにかここ変だなとかあったらご指摘お願いします。
では本編です。
2031年3月1日、夕方4時。
ここ、赤バラ公園はその名の通り、赤いバラが多く敷き詰めてあり、5月ごろには花が咲く。今の時期では、花壇にあるバラにはちらほらと芽が出始めていて、夕日で若干朱色がかっている。
俺は自転車を止めると、待ち合わせ場所に向かった。腕には新品ほやほやのフューチャーリングを巻いている。持ってきてとお願いされたからだ。
待ち合わせの目印はバラを模した街灯。まだ明かりは灯っていない。
「いた。」
街灯の周りを取り囲むようにバラの花壇があり、そばのベンチにトーモが1人座っている。トーモの赤いツンツン髪と夕日で染まった周囲の状況が妙にマッチしている。
「よ、イッセー。」
トーモも俺に気づいたようで、手招きしている。俺は小走りで向かった。
「やあ、トーモ。」
「まあ、座れよ。」
トーモはベンチをポンっと2度たたく。言われるがまま隣に座ったが、気まずい。こういう時、どう声をかければいいのだろう。
「あの、受験の結果はその……残念だったね。」
「まあ、あの時は調子が悪かったからな。でもこういうのは早めに伝えとかないとと思った。特にイッセーは、いきなり俺がいなくなるのは嫌いだろ?」
どうやら、トーモは俺の性格を加味してくれたらしい。
「そうだ、ナユユの結果は聞いてるか?」
「うん、トーモが電話してきた後、連絡があって受かったって。」
「そうか、それはよかったな。あとで俺の結果、ナユユにも伝えないとな。」
トーモは思ったより暗い顔じゃなかった。
「何だかもっと落ち込んでいるかと思ったけど……。」
「落ち込んでいるっちゃ落ち込んでいるんだぜ。でも、いい知らせもある。」
「いい知らせ?」
「俺、広王大も受けるって話したよな。そこの結果も発表されて、受かったんだ。」
「本当! よかったじゃん。」
「ああ、こればかりは両親に感謝だな。お前らといけないのは残念だけど。」
「行く学校が違っても俺たち友達だろ?」
「イッセー……。」
トーモは号泣していた。暗い空気ではなくなり、いつもの感じだ。
「じゃあちょっと話していいか、次いつ会えるかわからないし。友達なら。」
「いいよ。」
「俺のうち、貧乏でさ。特に授業費とかバカにならなくて。親は金かからないところに行ってほしいみたいなんだ。俺らの通ってる塾も授業費安いだろう。」
「うん。」
「それで近芽台受験したあの時、自分のやってきたこと出しきれなかったのが悔しくて。両親の圧力というか、期待というかそういうのもあったけど、俺自身もここは落とせないって、頑張った。」
トーモは饒舌になっていた。緊張の糸がほぐれたみたいだ。そんなトーモを見てすこし安心した。
「広王大は難しいのに、結果をちゃんと出たのはすごいよ。」
「だろ。それでイッセー、横尾さんと連絡とってたよな。広王大について聞きたくて、連絡先教えてほしい。持ってきてるか、腕輪。」
なんだ、用件はそういうことか。
「ああ、言われた通り、持ってきたぞ。」
俺は左の袖をまくった。すると新品のフューチャーリングがあらわになる。
「じゃあ登録するか。」
トーモも袖をまくって自分の腕輪を見せた。ところどころ塗装が剥げているから中古品だろう。
「イッセーの連絡先もついでに。」
トーモの腕輪を俺のに近づけ、小さなディスプレイに表示された鋭人と俺のアドレスを選択。ピッという音が登録完了の合図だ。
「完了だな、用件はこれだけか?」
「いや、もうちょっと話したいことがある。」
トーモは神妙な面持ちになった。
「俺、最近ずっと聞きたいことあったんだ。一誠、何か俺に隠してるだろ?」
「何かって。」
もしかして。
「ナユユと一誠、最近こそこそ話し始めたの、俺が気づかないとでも思ったか。」
ノーデのことか。
トーモにはノーデのことは何も話していない。それはノーデのことをあまり公にしない方がいいし、トーモには直接かかわりがないからだ。でも、
「お前ら、もしかしてもう付き合ってるとか?」
予想外の発想だった。
「えっ、いやないない。小学生だと早すぎるよ。」
「だと思ったぜ。小学生とかどうかは別として、おまえはカナデさん一筋って感じだよな、今のところ。」
「それはその、思い残したことがあるってだけで。」
「隠すことないぞ、バレバレだ。」
顔がほてってくる。改めて言われて、考え直すと恥ずかしいな。
「ま、まあトーモがそう思うのならご自由に。」
「素直じゃないな。で、話をもとに戻そう。ナユユと何を話してるんだ?」
「それは……。」
「それは友達の俺には言えないことか?」
思わず言葉に詰まる。さっき友達だろって俺が言ったから余計に。
「それとも俺は、友達じゃなかったのか?」
「それは違う、トーモは俺の大切な友達だ。」
お互いに大声だった。トーモの本音が少し垣間見えた気がした。
だからこそ言うべきか。
俺は一瞬瞬きして、ノーデの指示を仰ぐ。
『私は法外の存在ですし、あまり公になると世間がどういう反応をするのか予測できない。できれば伏せたいですがね。』
俺はどうしたら。
「わかった。言いにくいことなんだろ、ならこうしよう。これから〝イセノ〟で勝負して俺が勝ったら話してもらう。負けたら話さなくてもいい。」
悩む俺を見かねたのか、トーモはこう提案した。この状況、まるで。
小一の時、俺がカナデにやったことと同じじゃないか。
「せっかく二人そろって腕輪を持ってきたんだ。それに俺もイッセーほどじゃないが、技板持ってるんだぜ。受験があって封印してたけど、もう終わったんだ。なら勝負しなきゃだろ。」
「トーモ、俺……。」
「【いッせいのーで〝3〟】」
急にトーモはそう宣言し、俺は思わず5本の指を上げた。
「外れか。イッセー、くよくよ悩む節あるよな。でもそういうときはこういうのがいい。言葉よりも。」
「トーモ……。」
「それに俺、お前に負けるつもりはないぜ。いくら一誠が横尾さんに勝ったからって俺に勝てたこと、なかっただろ。」
トーモはそう、俺の言葉を遮った。
悩んでても仕方ない。お互いの気持ちを伝えるには……。
俺はポケットから技板を取り出した。そして自分の腕輪に通しながら言った。
「わかった、勝負しよう。」
結局5月中はまともなバトル書けなかったな。
次回は6/3予定です。よろしくお願いします。




