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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第3章 ともとして(小学生編Ⅲ)
31/179

第28話 受験

本日もよろしくお願いします。

では、本編です。

 2031年1月17日。

 私立近芽台(きんめだい)中学校。雲一つない晴天の中、ここにぞろぞろと地味目な服装をした受験生たちが入っていく。黒の制服を着た俺もその一人。

「緊張する……。」

 周りには知り合いと一緒に来た人だろうか、こそこそと話声も聞こえるのだが、大半は無言。足音とところどころにいる案内の人の声だけが響き渡る。

 ちなみに今日の俺の頭の中も静かだ。というのも、ノーデはスリープモード。オペレーションコードの選択(セレクト)をしていないから、瞬きしてもあいつは出てこない。今は少し寂しい気もするが、もともとあいつは受験に関しては助言してくれないし、俺もあいつの小言に反応しなくていいので試験の時は集中できるだろう。

 正面の正門を通るとすぐに大きな掲示板がある。受験する部屋が受験番号ごとに分かれて記載してある。

「九山君、おはようございます。」

 ナユユの声だ。黒服のブレザーにスカートと俺たちの小学校の制服だ。

「おはよう、いよいよだね。」

「イッセー、ナユユ、おはよう。」

 もう一人俺たちの学校の制服でやってきたのはトーモだ。だが、声がかすんでいる。

「トーモ、今日は元気なさそうだな。」

「昨日、夜遅くまで詰め込んでたから、寝不足で。それにちょっと風邪気味なんだ。」

「今日、いけるか?」

「熱はないから大丈夫。何とかするさ。」

 心配だけど、今の俺には構ってる余裕はない。

「それで部屋は確認したか。」

「今から、31570は……。」

 俺は掲示板の方に目線を戻す。あった。

「俺は1号館2階だな。」

「私は2号館1階。」

「俺は3号館3階、みんなバラバラか。お互い頑張ろうな。」

 そこで俺たちはわかれた。俺は目の前の1号館。中に入り、スリッパに履き替え、いざ。

「あれ?」

 廊下の少し先を歩く金髪で長髪の女子。彼女はそのまま中央の階段を上って行った。

 どことなく顔立ちがカナデに似ているような……。

 いいや、あいつは海外だ。いるわけがない。

「気のせいか。」

 今は目の前のことに集中、ってノーデに言われそうだ。切り替えよう。

 教室の後ろのドアから入室、中は知らない人ばかり、いや前にいる一人は見たことがある。黒髪でマッシュの髪型、どことなく見透かした目。

「大数君だよね。近芽台受けるんだね。」

「ああ、九山君、おはよう。そう、神杉家は代々ここを受験してて、受かったら行くんだよ。」

 なるほど、神杉家御用たしの学校なのか。

「でも、九山君も同じ学校受けるなんて。しかも同じ教室。もしかして五十音順なのかな。」

 確かに神杉(かみすぎ)の「か」と九山(くやま)の「く」は近いからそうかもな。

「もう少しで試験始まるし、お互い頑張ろうね。」

「うん、九山君も。」

 俺はそうやり取りして、黒板に書いてある自分の席に向かった。俺の席は後ろの方。そのあとは誰とも話さず、試験直前までやってきた問題集や単語帳を眺めた。

 肝心の試験はというと。

 俺が受ける試験は国語、算数、理科、社会の4科目。筆記だけだ。

 よし、解ける、次の問題もいける、次は……、わからないから後回し。次は、これ見たことあるな、なんだったけ、の繰り返し。終わってみれば自己採点でそうだな、6割くらいだったかな。

「大丈夫かな、これ。」

 試験が終わり帰宅中、足がいつもより重かった。そして俺の心の内を反映したかように空は曇っていた。

『うーん、微妙なラインですね。』

 って帰宅後、ノーデにも突っ込まれた。


 時は経ち、2031年3月1日。

「いよいよね。」

「緊張するなあ。」

「俺のほうが緊張するよ。父さんは受けてないでしょ。」

 ダイニングテーブルに置かれた、父さんのノートPC。そこに家族全員が群がっていた。受験結果が発表されるのだ。

「昔はこういう結果は受験した学校に行ったものだが、便利な世の中になったな。」

 画面に映し出されているのは近芽台中のホームページ。<合格者一覧>のタブにマウスカーソルを重ねている。

「いくぞ。」

「まって、あなた。こういうのは、受けた一誠にやらせるべきよ。」

「それもそうだな。じゃあ、一誠、ポチってくれ。」

「じゃあ、遠慮なく。お願い、受かっててくれ。」

 ポチッ。

 マウスをたたくと受験番号が一斉表示される。次々と五桁の数字の羅列を処理していく3人。やがてそれぞれの視線は一つの数字に集約される。

「「「31570」」」

 それは俺の受験番号。

「よっしゃあああ」

「一誠、合格おめでとう。」

「今日はお祝いね。盛大に行きましょう。まずはそうね、久しぶりにアップルパイでも作ろうかしら。」

「やった。」

 俺はテンションが高くなる。瞬きすると、ノーデもサムズアップしていた。

 母さんは料理に入った。常にエプロン姿の母さんだけど、やっぱりキッチンが一番なじんでいる。

「おっと、合格祝いを先に渡しておこう。」

 父さんはそういうと箱を机に置いた。パッケージは一組の腕輪がプリントされている。商品名は〝フューチャーリング〟。

「これはもしかして〝イセノ〟対戦用のリング。ありがとう。」

「〝イセノ〟以外にもいろいろと便利機能は付いてるみたいだ。一昔前のスマートウォッチだな。受からなかった場合も頑張ったご褒美として準備してたが、ちゃんと合格祝いになってよかったよかった。」

「開けてもいい?」

「ああ。最初は設定がいろいろあるから、父さんも手伝うよ。」

 さて、いざ開封。中に入っているのはプラスチックのトレーに腕輪本体があるだけと意外とさっぱりしたものだ。

「説明書はないのか? ああ、ウェブの取説見ろだ。最近の機械は全部これだな。俺は紙の方がいいんだけどな。」

 父さんが愚痴りながらも助言してくれて、セッティングは完了。

「じゃあ、早速試してみるか。まずは、一誠が気になってる〝イセノ〟対戦モードからかな。」

「そうだね。」

 俺が腕輪のディスプレイをいじろうとしたその時、1本の電話が入った。近くにいた父さんが電話を取った。

「一誠、トーモ君から。」

「うん。」

 俺は受話器を受け取る。

「もしもし。」

「もしもし、イッセー。結果見たか?」

「うん。その……合格だった。」

「そうか、よかったな。イッセーは事故からいろいろ頑張ったもんな。」

「その、トーモは?」

 間があって返答が来る。


「俺は、落ちた。俺は近芽台には行けない。」


トーモについてははじめ掘り下げずに行こうかなとも思ってたのですが

書いているうちに掘り下げた方がいいかなと思い始めてこの話に至ります。

次回は5/27予定です。よろしくお願いします。

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