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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第2章 理由多き天使(小学生編Ⅱ)
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第25話 十指選

今回は書いてるうちに長めになりました。誤字脱字、言葉足らずあるかもしれないですがお許しください。気づいたら修正します。

それでは本編です。




 士義さんとのバトル。結果は、ノーデの敗北。

『もてあそばれてしまいましたね……。私もまだまだです。』

 ノーデは気落ちしていた。無理もない。あいつの敗北は俺と出会って最初に〝イセノ〟をした時以来だ。

 対する士義さんは、勝っても喜びを顔に出さない。それどころか、こうつぶやいている。

「特性を、使うまでもなかったな。」

 特性……。そうか、由多さんが持っていたんだ。弟の士義さんも持っていておかしくない。まだ、本気じゃなかったんだ。

「ノーデ、君は負けた。だから私が計画のことを話す必要もない。」

『それは承知しています。』

「とはいってもまた同じように勝負を挑まれても面倒だ。だから、条件を出す。」

『条件?』

「私が指定する人物たちに勝つこと。勝てばもう一度、勝負をうけても構わない。」

『ほう、その人物とは?』

「ちょうど今からここでオンラインの集まりがある。そこに出席する何人かだ。天井の装置で映し出すから、後ろの席で座って見ておくといい。」

 ノーデが視線を移動させ、俺の脳内空間でもこの建物の天井が映し出される。天井の木の色と同化して気づきにくいけど、俺の小学校でもあった投影装置が吊り下げてある。

『……わかりました。私の役目はとりあえずここまでですね。』

 二人の会話が終わり、視界が広がった。俺に体の主導権が戻ったようだ。

「士義さん、強いですね。」

「一誠君に戻ったか。」

「はい。もしかして士義さんもその、予知能力とか持ってたり……。」

「そう思うかい? 根拠は?」

「えっとその……。由多さんも持っていたみたいだし。何となくそうかなと。」

「ならもっと人を観察した方がいい。人のしぐさや行動、一つ一つに意味がある。」

「は、はあ。」

 何が言いたいのか俺はすぐに理解できなかった。そんな様子を見かねたのか、士義さんは助言した。

「詳しくはノーデにでも聞いたらいい。そういうのは彼女の方が得意だろう。」

 俺は早速目をつむった。ノーデと会話するために。

『悔しいですね……。』

 脳内空間では体育座りしたノーデがショックを引きずっている。

「えっと。まあ、まだ負けたの二回目じゃないか。士義さんも強かったし。元気出せよ。」

『まあ、そうですね。いい経験をしたということで。あとで一誠と対戦してモチベーションを取り戻しますか。』

 ノーデは立ち上がりながら言った。声もいつものトーンに戻っている。

「それ、俺の前でいうことじゃないぞ。」

 俺はそうツッコミを入れたが、こいつは切り替えが早いからそれはそれで安心する。

「で、さっき士義さんが言ってたこと、何だがわかるか?」

『ああ、その件ですか。結論から言うと、彼に予知能力などありませんよ。』

「ええ、どうして?」

『予知能力がある人が〝イセノ〟で凝ったフェイントを使うと思いますか? もし予知能力があったらそんなことする必要がありません。』

「確かに……。」

『予知能力を持つと、普通は変化を恐れます。または、由多さんのように運命に抗い、変化を切実に望むかもしれません。どちらにしろ、楽しくなくなっていくんですよ。』

「それは、由多さんとかの体験談か?」

『まあ、それ以外にも私の知る限りですが。でも、士義さんの場合は勝負を楽しんでいますね。』

「楽しんでる? そういう風に見えなかったけど。」

『そうですかね。勝ちを決めた最後の数当ての時、<五年前から変わってる、だから勝てる>なんて普通言いませんよ。顔に出してないだけで、たぶん内心ウッキウッキですよ。』

 ノーデは士義さんの真似をしながら言った。

「えっ、そうかな。」

 内心ウッキウッキね。あの堅苦しそうな人が……。

「ぶっ、ハハハハ。」

『どうしましたか、そんなに腹抱えて笑って。』

「いやその。想像したら面白くて。」

『笑うのは構わないですが、少々目を閉じすぎですね。ほら、呼ばれてますよ。』

「えっ。」

「一誠君……、一誠君!」

「ふぁい。」

 俺は思わず目を開けて、士義さんに腑抜けた返事をしてしまった。

「頭の中で話すのはいいが、あまり浸りすぎないようにしなさい。」

 士義さんの目が怖い。

「す、すみません。」

「そろそろ集まりが始まるから、後ろの席に移動してくれ。」

「わかりました。」

 俺は回れ右して、後ろの席に向かった。でも、2、3歩歩いて気になって聞いた。

「今からの集まりって、どんな集まりなんですか。」

「どんな、か。〝イセノ〟、今でこそその呼び名だが、昔は十指(じゅっし)(せん)と呼ばれていた。なぜ名前が変わったと思う?」

 確かにそういわれると、なんでだろう。

「えっと。言いやすいから、とか?」

「まあそれもあるかもしれないが、答えは混同を避けるためだ。今集まる10人の総称が同じ呼び名だから。」

 すると、立体映像が映し出され、士義さんを取り囲むように9人の人物が出現する。いやよく見たら、一人は人間じゃなくて犬だ。それと一人だけ、素顔を仮面で隠している。

十指選(じゅっしせん)、漢字は若干違うが。この町で、いや今は世界で〝イセノ〟が強いトップ10人だ。私を含めてね。」

「士義さん~、そこに~誰か~いらっしゃるの?」

 茶色の長髪の女性が声を上げた。年齢は30歳くらいで、赤いドレスを着ていて、胸も大きい。あとしゃべりがゆっくりだ。

「見物客がいてね。一誠君、後ろの席へ。」

「すみません、今行きます。」

 俺はさっさと後ろの席に直行し、座った。

「それにしても、毎回派手な服装ですね。こういう場ではもっと落ち着いた服装でと何度も申し上げたはずですが……。」

「あら~これでも派手? 割と抑え目な方を選んだのだけれど~。ほらあ、前のよりも値段だってお安いし。」

「ちなみにおいくらですか?」

「一億よ~。」

 どうやら女の人は相当な金持ちらしい。

「ほっほっほっ。塩町(しおまち)(じょう)は相変わらずですな。」

 今度しゃべったのはひげを生やした白髪のおじいさんだ。

矢野(やの)じいも、お元気そうで~。」

「そう見えるかねえ。じゃが、最近足腰があまり動かなくなってのう。年を痛感しとるわい。」

 そういって矢野じいと呼ばれていたおじいさんは足をゆっくり上げる動作をした。

「無駄話はいいから、とっとと本題に入ってくれる? 時間もったいない。」

 次に口を開いたのは、パーカーを着たオレンジ髪の男子。高校生くらいかな。

「賛成。」

 紫髪の女子が手を上げながら言った。割と俺と年が近そうな子だ。

「そうだワン。」

 そして犬、しゃべった。

「お時間はそんなに取らせません。予定通り10分以内で終わらせます。」

 士義さんはそんな人たちに動じず、司会をしている。

『まさに十人十色、個性豊かな人たちですね。』

「うん。でも士義さん大変そう、あれを取りまとめるの。」

 俺の何気ない一言はまさにその通りだった。

「さて、全員揃ったようなのではじめます。進行は十指選右人(うじん)の神杉士義です。」

「というか、毎回やってない? 進行役。俺やるよ、すぐ解散させるけど。」

「久々にやってもいいのう。で、何話すんじゃっけ?」

「そういわれたらそうですね~。私も一回やってみたいです~。」

 と、こんな調子だった。士義さんは咳ばらいをし、大声で宣言する。

「今回も私がやります。あなたたちに任せると議論が進まないので。もし異論があるなら、十指選の脱退をかけて勝負でもしますか、この私と。」

 この一言でみんな黙った。士義さんはそれだけ十指選の中でも、権力と実力があるのだろう。

「さて、毎年この時期は恒例ですが、本日をもって、現メンバーの中から一人が脱退となります。」

 士義さんのこの言葉にさらに空気がピリつく。視線を右往左往させる者、特定の人物に向く者がいる中、一人うつむくものがいる。

府中本(ふちゅうほん)(まち)君。君です。」

 その一人は顔をあげる。

「やっぱりですか。」

 府中本町と呼ばれた人は肩を落としながら言った。確信があったのだろう。

「まあ、当然よね。アンタ今年は大会でも調子悪かったみたいだし。」

 紫髪の女子は口が悪いな。あの口ぶりだと、府中さんと知り合いっぽいが。

「とはいってもこの一年、立派に十指選として戦い抜いた。そこは評価するべきです。それに万倉(まくら)さん、あなたも人のことは言えないのでは。」

「うっ。……そういうのは言わなくてもいいのよ。」

 士義さんは紫髪女子の痛いところを突いたようで、その後彼女は黙ってしまった。

「府中君、君には十指選の証である指輪は返納してもらいますが、腕輪に紐づけてある特性は使っても構いません。ただし、大会での使用は禁じます。」

「ありがとうございます。」

「それともう一つ、来年は府中君の入れ替わりで一人加入します。三好カナデさんです。」

 カナデが!

 いや、不思議じゃない。鋭人が世界3位になった、とか言ってたもんな。

「そして彼女の序列ですが、左薬(さやく)とします。そして現メンバーを含めた序列はこうです。」

 序列が映し出される。漢字が読めない人もいるけど、ざっとこう書いてある。


 右親指 神辺零世

 右人差指 神杉士義

 右中指 梶田正宗

 右薬指 塩町千里

 右小指 矢野京凱

 左親指 中畑・ドッグ・真一

 左人差指 高木百舌

 左中指 鵜飼辰巳

 左薬指 三好カナデ

 左小指 万倉美六


 どうやら、実際の手の指1つ1つに1人が対応しているようだ。

「待って、納得いかない。なんで私が新参者より下なわけ?」

 紫髪の女子は不満を口にした。たしか、万倉(まくら)さんだったよな。万倉さんは左小指。その人がカナデより下ってことは少なくとも上の指は上位、下の指は下位ってことだな。

「十指選の選考基準はこの一年での大会成績、地域貢献度等もろもろの要素を鑑みて決めていますが、君の場合、大会でカナデさんに負けたでしょう。そこが大きいですよ。」

「たった一度の試合でしょう!」

「でも、負けは負けです。それに去年全体でも見ても勢いがあったのはカナデさんの方。もし不満でしたら、自分から序列変更をかけて勝負すればいいでしょう。」

「……そうね、やってやるわよ。」

「それも運命(さだめ)だ。受け入れよ。」

「そうですよ~~。私なら~、いつでも相手になるわよ~。」

「塩町さんと勝負するには、矢野じい以下を倒さないといけないでしょ。」

「ほっほっほっ。若いもんに負けてやるつもりはないぞ。」

「僕もだワン。」

 誰が何を言ってるのかわからないけど、ほんとに個性が強すぎるメンツだ。

「ハイハイ、話は以上? 士義さん。」

「いいや、最後に一つ。これは私からの提案です。普段は十指選内で入れ替わる場合、その人より下位の者に順に勝っていく必要がありますが……。」

 すると士義さんは俺の方を指さした。

「そこにいる九山一誠君。彼を倒したら、私が直々に相手をしましょう。もちろん、その時の挑戦者はノーリスク、十指選脱退をかけなくても構いませんし、挑戦者が勝てば私の座を譲りましょう。これは本日抜ける府中君、君も対象とします。異議はありますか?」

 えっ。

 士義さん以外の8人の目がぎろりと俺の方を向く。みんな不敵な笑みを浮かべ声をそろえていった。

「「「「「「「「異議なし。」」」」」」」」

「ただし、彼にも受験など大切な予定も控えていますから、今の提案の執行は来年4月1日から、9月末まで半年間とします。以上、解散。」

 そこで集まりは終わり、映像は消えた。一息ついた士義さんは俺たちの方を向いた。

「一誠君、そしてノーデ。君たちには今の人物たちの中から、左手にあたる人物五人は倒してもらおう。それが私の出す条件だ。」

「ちょっと何言ってるんですか。集まりの時もあんなたきつけるようなことを言って。」

「面白くなっただろう。」

「でも、俺はそのケンカを売りに来たわけではなくて……。」

「ノーデと永遠に居続ける。それができるよう私も手を尽くすが、できなかった場合のことも考えておくべきだ。」

「できなかった場合……。」

「カナデさんに勝つ、それが君の目標だったな。そして目標を達成すればノーデは消える。」

「そうです、だから。」

「目標なんて時がたてば変わっていったり増えたりするものだ。だから、今のうちに変えておけ。例えば、我々十指選を倒す、とかな。そうすれば、限界の一年間は彼女と一緒にいれるだろう。」

 言われてみれば、その発想はなかった。

「でも、そんなことできるかどうか。」

「それをノーデに聞いたのか。」

「それは……。」

 聞いてない。

「聞いた話の限りでは、君は一つのことにとらわれすぎだ。あらゆる可能性を考えろ。」

 士義さんの言うことはまったくもってその通りだ。俺は目をつむり、確認を取る。

「ノーデ、俺の目標って『カナデに〝雷魔切り〟で勝てるくらいまで強くなりたい』だったよな。その目標を変えることってできるか?」

『残念ですが、そう大きく変えることはできません。』

 やっぱり、そううまくいくもんじゃないよな。でも、他の可能性も。例えば……。

「なら、解釈を変えることはできるか。」

『というと?』

「俺は強くなりたい。カナデにも、あの人たちにも勝てるくらいまで。」

 今思ってる正直な気持ちだ。士義さんはまだ実力の底を見せていないし、カナデと同じくらい、いやそれ以上の実力者が十指選なんだ。勝負してみたい、そしてあわよくば勝ってみたい。

『なるほど。勝つではなくて、強くなる方がメインだと。』

 ノーデは考えこんだ。無理か……。

『それならできます。』

「よし。ならそれでいこう。」

 こうして、俺の目標は少し変わった。士義さんが今日俺を呼んだのはこのためだったのかもしれない。

「ありがとうございます。その、何とかなりそうです。」

「そうか、ならよかった。私は十指選の右人、序列で言えば2番目だ。」

「士義さんで2番目……。今日あんなに取り仕切ってたのに。じゃあ、1番は。」

「仮面をつけている人物がいただろう。彼だ。今日は一言もしゃべっていなかったが。」

 あの人か……。

「だいだい、1番強いものは仮面をつけるしきたりがあってな。姉上が退いてからはずっと神辺(かんべ)君がつけている。」

「ってことは、5年連続で。しかも士義さんより強くて。」

「上には上がいるもの、私もまだまだだ。いつか追い付きたい人だっているしな。」

 追い付きたい人。士義さんにとっては神辺さんか、由多さんだろうな。そして俺にも……。

「ともかく、私と神辺君以外の八人は君に本気で勝負を挑んでくる。だから、受験が終わったら準備しておけ。」

「はい。」

「私の計画というのも少なくとも3月までは何もできないしな。そこは断言しよう。」

「わかりました。」

『新しい目標ができましたね。』

「俺たち2人のな。でも、カナデに勝つって目標は何も変わってない。ノーデ。」

 俺は右手を差し出した。

「とりあえず、来年もよろしくな。」

『こちらこそ。」

 固く握手を交わし、俺たちは前に進む。



 こうして、私と一誠は士義さんに礼をして、神杉神社を後にしました。ただ去り際、私は士義さんがこう口を動かすのを確認しました。

「君たちには、強くなってもらわないとな。」

 一誠はおそらく気づいていないでしょう。

 来年は波乱が起きそうな予感がします。



一応これで2章は終了です。次回4/29は一度整理したいので、ルール集を出そうと思います。話の続きは翌週5/6予定。(登場人物一気に出しすぎて話をたためるか不安)

今後ともよろしくお願いします。

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