第22話 本心
お詫び
一応本日分は掲載しますが、今後以前のように毎日更新は難しくなるので
しばらくは毎週土曜に更新に変更しようと思います。
よろしくお願いします。
「ノーデが、消える……。」
2030年12月23日。懇談、そしてマスターの対戦が終わって。
一誠は知ってしまったのです。私も口に出したくはなかった事実を。
「嘘だよな、またひょっこり戻ってくるってことは。」
『ありません。』
そんなことができれば、よかったのに。
「なんで、なんでだよ。」
『一誠の願いが叶い、私が役目を終えるからです。』
「役目を終えても、消える必要はないじゃんか。」
『いいえ、私の入っているチップには容量に限界があります。その容量を超えたとき、私は正常に動作できなくなります。だから私は主に一誠の目標を遂げるためだけに動くことで膨大な情報を制限して正常にふるまえるようにしていたのです。』
「ふるまうって、そんなこと今まで……。」
言いかけて一誠は気づいたようです。
「〝イセノ〟表記も片目閉じも、それに……。」
一誠は口を手で覆い、何かを言いますが私にはわからない。
「俺の言ったこと、言えるか。ちゃんと大声でいったから聞こえているはずだ。」
『いいえ、言えません。だって私は』
「音の情報を処理してないんだろ。さっきそういった。」
こくりとうなずく私。
「やっぱりそうだったのか。お前と憑依で入れ替わった時、音はこの空間にいる俺の頭の中だけで響いた。この脳内空間じゃなくて。それっておかしいだろ。どっちも俺の頭のはずなのに。」
『そう、この脳内空間はいわば私が一誠との間に強引に作り出した空間ですからね。私の映像だけで判断するということが適応されているのです。そして情報を限定し、より詳細に解析することこそが私の強さでした。』
「やっと納得がいったよ。お前が強い理由も、ただ単に由多さんの生まれ変わりってだけじゃなかったんだな。」
『しかし、長い年月が経てば当然データはたまっていき、私もパンクする。それはいつか一誠に悪影響を及ぼす。カナデさんに勝つという目標以上のことを私が多く考えるようになればなおさらね。』
「じゃあ、カナデに勝たなければ、お前はずっといるのか? これからもずっと……。」
『いいえ、せいぜい1年が限度です。そしてその時が来れば、一誠自身で私の機能を停止させる言葉を言ってもらうことになります。』
「確か、オペレーションコード、イン……。」
『おっと、その先は、今は言わないでください。私は一誠と別れるのならせめて一誠の目標が達成されたとき、最高の形で別れたいのです。』
「もしそうだったら、カナデとの試合のとき、俺は勝ちをためらうかもしれない。お前が消えるくらいなら負けた方がましだと。」
『こうなるから、話したくなかったんですよね。マスターも意地が悪い。』
まるでマスターと湯多さんのやり取りを、私と一誠で追体験させているみたいで。
『一誠はカナデさんに勝ちたい、のでしょう?』
「ああ。」
『そして、私はそれを見届けたい。それが、私がいたことの証明でもある。どうするかは一誠の判断に任せます。ただ私の思いだけはわかっていてほしい。』
今思えば、人工知能らしくない言葉ですね。
「ノーデ、お前は俺と別れたいのか?」
『私は役目を終えれば、消えなければなりません。そして、その時悔いを残したくない。』
「そうじゃない。ノーデ、お前は俺と離れたいのかって聞いてる。」
『私は……。』
あれ、どうしてでしょう。すぐに答えがでないのは。
冷静に見つめなおしてみましょう。
いつか別れの時が来る、そしてその時に巣立つ一誠を見たいという親心にも似た気持ちははじめからあったのです。でも、自分の命に関しては無頓着でした。一誠を救う使命を遂行することが優先、そのために手を尽くすけど、私はどうなってもいい。
「俺はお前と別れたくないんだ。1年が限度ってさっき言ってたな。なら受験が終わっても、そうせめて3月、カナデと話すまでは絶対にいるんだろ。」
『はい、そこまでは確実に。一誠の目標達成を見届けないといけないですから。』
「じゃあ、時間はまだまだある。俺がそれまでにできる限りあがいてみる。納得して、決められるくらい。」
一誠は妙に落ち着いています。
『受験に支障が出ることはありませんか。』
「それもあるからさ、基本的にはそっちに集中するけど、正月休みとか暇があるときに母さんとか近田先生とか、とりあえず相談できる人に相談してみる。俺、頭の中のチップの詳しい知識とか全然わからないし。俺もできることがあったら協力する。」
『なんの成果も得られないかもしれませんよ。』
「そうだったとしても、困難を乗り越えて新しい自分になるんだろ。」
一誠……。
「でもよかった。」
『よかった、何がですか?』
「別れるかもしれない日が決まってるのは、なんだかさみしいけど、安心するんだ。知らないよりもずっとましだから。」
ああ、そうだった。私は愚かでした。
私はまた一誠にトラウマを植え付けそうになっていた。彼にとって目の前から突然いなくなることは一番のショックだと理解していたはずなのに。
いや、わかっていてためらっていたのは私の意思。
目が潤む。演技しているわけでもないのに、頬から雫が流れ落ちる。
「ノーデ、泣いてるのか?」
『一誠、私はあなたと別れたくなかったのですね。』
「そんなこと、俺に聞かなくても自分でわかるだろ。」
こぼれる涙を手で拭いながら、私は答えます。
『いや、やっと理解したのです。自分の気持ちを。』
そんな私を見て、一誠は微笑みます。
「やっと、見た目にあうような行動とったな。」
次回は4/8です。
余裕ができるまでは週一ペースにします。
よろしくお願いします。




