第161話 あのときの話②
どうでもいい前置き
前回のサブタイトル、①として変更し、今回②になります。
というのも本来は「これからの話」というサブタイトルを予定していたのですが、書いてるうちにここで区切った方がいいと思った箇所が全然、これからの話ではなかったので。
視点は終始、一誠の視点です。それではどうぞ。
「全員、そろいましたね。」
俺たちが入った瞬間、担任の八田先生が口を開く。
ここは俺達1年の教室がある近芽台中学1号館の地下。窓1つない、薄暗い照明と机だけの、さながら取調室のような部屋。そこに俺とナユユ含め、この部屋にはオリエン時のD2チームと八田先生の計6人が集まっている。
「先生、なんでわざわざこの部屋に。もっといい部屋はあったんじゃないですか?」
「そうよな、セキュリティって面で言うたら面談室とか会議室とかの方がよさそうって思うんやけど。たしかあの部屋もうちらの学生証の技板、登録して入ったら鍵かかるんでしたよね?」
落合君と尾関山さんが不満を吐露、そしてその理由を我らがD組の担任は答える。
「あそこは人目に付きますし、技板の読み取り機が学校のシステムに直接つながっています。ここなら独立していて、入ってきてもそれが確認できるのは壁の横にあるモニターだけです。」
よく見たら確かに、壁の横にインターホンのようなものがある。
「そしてこの学校のシステムは極力使わぬほうが良いと提言したのは拙者だ。」
と、手を上げて補足を入れるのは千草さん。
「どうしてや?」
「まだ確証はないが、母上は何か知っている気がするからだ。」
「千里さんが……。」
この学校を支援している、塩町グループ代表のあの人なら学校のシステムも確認できるかもしれないけれど。
「あのフード男は機械の体だったと聞いた。そしてあやつが持っていた有弦刀、あれは間違いなく塩町グループが開発していたもの。無関係とは思えぬ。」
それはもっともな意見だ。機械の体という時点で、それを作るだけの財力を持っている企業とかは限られるし、オリエンの施設にも関わりがあるし。有弦刀の件があるからなおさら怪しく思えてくる。
「それで、千里さんにその件は聞けた?」
「いや、まだ聞けておらぬ。祭りで忙しいとは言うが、意図的に避けられているやもしれん。」
「ということもあって、元お仕置き部屋のここが選ばれました。」
「いやお仕置き部屋って……。」
先生は明るい口調で言うが、たぶん今の時代じゃコンプライアンス的にやばいやつだと容易に想像がつく。
「ここはそもそも立ち入り禁止、それに技板の読み取り機も独立して動きますから、まず話を聞かれることはないでしょう。念を入れて、人目のつかない遅い時間帯に来てもらいましたしね。」
俺も事前に母さんに、特別補習があるから今夜は遅くなるといったくらいだしな。入学早々テストで悪い点とったのかと心配されてしまったが。
「まあ理解はできた。さて、わざわざここまでおぜん立てしたんだ。話してもらうぜ、一誠、いやAIのノーデさんよ。」
『そうですね。』
ここからは説明下手な俺よりも、AIの強み、瞬間要約を生かして立派に説明してくれそうなノーデにバトンタッチだ。俺は脳内空間へ、そしてノーデは現実世界へ。
「片目……。」
『私が表に出ても外見上は変わりませんので、一誠が意図的にしない限りは、片目を開けていれば私と判断してください。』
俺が意図的にって。まるで俺がそういうのに目覚めることも視野に入れて話しているが、それはない、たぶん……。
『さて、説明を始める前にもう一人、話を聞いてもらいたい人物がいるのですが。』
「せっかく内々に話しできる環境を整えたのにか? それに今からそんな人物なんて来ない……。」
と落合君がノーデにつっかかっているときに。
コンコン、ノック音がする。
「シツレイシマス。」
その言葉と同時に、この部屋唯一の入り口の扉が開く。そして入ってきたのは二人の人物。その一人はガタイのいい筋肉質な――。
「マークスリーさん。」
千草さんのボディーガード、スーツにサングラス姿で登場する。
「一応、拙者が外をずっと見張ってもらうよう頼んだのだ。」
「えっ、ずっとですか……。この部屋まではあの階段しか通り道がありませんよね。一度もすれ違わなかったのに。」
「最後に来た近田さん達以降、読み取り機の反応もありませんでしたよ。」
ナユユや八田先生の疑問に
「コウ、ミハッテイマシタ。」
と答えを示すスリーさん。その答えはアクロバティック、ジャンプして天井に張り付いたのだ。いや忍者か。
「サイキン、オジョウサマノミタエイガノボディーガードハ、コウカクレテイマシタ。」
いやそれ絶対忍者、そしてそれを実行できてしまうスリーさんは、さすがのフィジカル。
そしてそのスリーさんと一緒に中に入ってきたもう一人は金色の長い髪をした……
カナデ⁉
「ごめん、一誠と奈湯が入っていくところ見かけて、それで……。」
『つけられていましたね。』
この脳内空間に、ノーデの声。振り向けばそこにいる。瞬きの合間に俺に話しているようだ。
「ノーデ、どこで気づいたんだよ。」
『一誠の視界の隅に、カナデさんらしき人影が見えましたので。』
といって、映像をリプレイするノーデ。でも該当の箇所はわずか数秒、そして画角的にも隅の隅、全体のわずか百分の一にも満たないサイズの人影。
『一誠もまだまだ、視野が狭いですね。』
そういってノーデは現実へ戻ったが、いやお前がすごすぎるんだぞ。
「本当ごめんなさい。私、邪魔なら出ていきますから……。」
『いえ、カナデさん。あなたも聞いた方がよいと思います。』
ノーデは階段の方へ戻りかけたカナデを引き留める。
「あなたは……一誠なの?」
何か察したのか、カナデは尋ねる。外見が俺の、中身がノーデに。
『それも説明を聞けばわかりますよ。まずは一誠との出会いからですかね。』
そしてノーデは語り始める。俺との出会い、ノーデの前世、そしてオリエンでの出来事を。
ついに秘密を明かす時!
次回、4/25までに更新予定、サブタイトルはおそらく「これからの話①」です。
よろしくお願いします。




