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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第9章
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第160話 あのときの話①

1週お休みしまして、再開です。といっても今回の話ができたのは、更新時間10分前。作者は追い詰められないとやらないタイプのようです。

さて、今回はカナデ視点です。それではどうぞ。

 どうして私はあの時、嘘をついてしまったのだろう?


 2031年4月20日。放課後の教室、私は自分の技板を整理中。技板といっても〝イセノ〟で使うものだけじゃない。自分の学生証や今日の課題も個別で入っている、疑似技板もあるから、持ち運びは便利だけどどれがどれだっけとなる。だから定期的に整理が必要になる。

 他の同級生は帰る身支度をしたり、各々友達と会話したり。そんな中、真っ先に耳に入ってきた言葉が――。

「一誠殿と二人でいったのか?」

「は、はい。ですけどコンサートが始まる前に、十指選の高木さんと鵜飼さんに会って。」

 コンサート、ということは奈湯が前に私にも誘ってくれた件のことみたいね。

「それでオリエンの事情を聞かれて。」

「一誠殿のことは、何か深く聞かれなかったのか?」

「怪しまれはしたんですけど、結局高木さんと九山君の二人が〝イセノ〟の勝負をして、それで深く聞くか決めることになって……。最終的に九山君が勝ったので聞かれませんでした。」

 一誠が私よりも上の十指選に、勝った⁉ 

 一誠ならいつかやるとは思っていたけど、チームで勝った万倉さんならともかく、1対1で、こんなにも早く――。

「むむむ、そこはさすがというべきか。しかし高木殿には拙者も事情を聞かれた。いよいよ警察が動き出したというわけか。」

 いやいや初めて聞くこと多いんだけど。確かに警察には私も事情聞かれたけど、高木さんじゃなかった。だからあの十指選の高木さんが警察だったなんて初耳。それにこの話の流れだと、一誠は何か、重大な秘密を抱えているということに――。

 それは、気になる。

「それでどうだったんですか? この前話していた件。」

「いや、それがだな。まだ聞けてないのだ。母上も祭りで忙しいらしい。」

「いったい何の話?」

 私はいてもたってもいられず、奈湯と千草の会話に割り込んだ。

「カナデさん、いやその……。お祭り、お祭りで千草さんのお母さんが大変だって話で。」

 奈湯はどこかよそよそしい。まるで知られたくないことでもあるみたい。

「祭りって?」

 話題は変わっちゃうけど、とりあえず情報収集しないと。

「そういえば、カナデ殿は最近まで海外にいたゆえ知らぬのだったな。ここ5年で始まった福ノ山市を代表するお祭りのことだ。その名も福ノ祭(ふくのさい)。」

「もともと祭り自体は神杉神社で行われていたものですけど、5年前の台風で神社の修復に時間がかかるってことで、場所を市街地に移して新しく始まったんです。」

「へえ、そう。あの祭りが――。」

 毎年一誠と私の家族通しでよく行った、そして〝無限の巫女〟さんを初めて見て憧れた、私にとって思い出深い祭り。

「昔は、〝イセノ〟のちょっとした大会みたいなものをやっていたけれど、今回もそういうのはあるの?」

「いや、ここ数年は大会はやっていなくて、その代わりエキシビションマッチで十指選のトップの人と、前年の世界大会の優勝者が戦うんです。それも大通りを封鎖して、派手な山車の上で。」

「へえ、結構規模は大きいのね。」

 十指選のトップといえば、無限の巫女さんもつけていたあの仮面を常に身につけている、神辺さん。一方の世界大会の優勝者といえば、一般の部だと現十指選NO2の士義さんで、ジュニア部門だと。

「まあ母上が忙しいということだから、海外から人を呼ぶのかもしれぬ。」

 なら準決勝で私に勝ったあの天才、ミハエルか。

「ちなみに、今までの対戦は十指選側と大会優勝者、どっちが勝っていたの?」

「始まってからずっと、十指選側です。」

「その十指選のトップもこの祭りが始まってから変わっていなかったはず。確か名は――。」

「神辺さん、やっぱりあの人強いんだ。」

 私はあの人の戦っているところを、一度も見たことがない。他の十指選の人は少なからず世界レベルの大会や〝イセノ〟関連のイベントで試合しているというのに。

「私、ちょっといってみたいかも。」

 だから興味がある。

「そ、そうですね。今度みんなで行きましょう。そ、その、九山君達も誘って。」

 一誠も、か。

「そうね……。一誠は絶対興味ある、というか毎年行ってそう。」

「祭りは5月3日から5日まで、その最終日にエキシビションマッチは行われる。とりあえずそうだな、最終日はみんなで回るとしよう。お、拙者は部活がある故、そろそろ。」

「私も、部活です。ではまた。」

「うむ。」

「じゃあね。」

 と、2人は部活に行き、祭りのこと以外はあまり深堀りできなかった。

 まあ焦っても仕方ない。

「私も部活、いくかぁ。」

 軽く伸びをして一呼吸置いた後、私は料理部の部室、家庭科室へ向かう。今日作る料理は確か、アップルパイ。

「りんごって一誠の好物よね。」

 最近、ついあいつのことを考えてしまう。

「どうして私はあの時、嘘をついちゃったのかな。」

 オリエンの有弦とD2チームの決戦の後、私は嘘をついた。

 本当はかすかにだけど覚えている。あの勝負の最中に、一誠が私に告白したことは。

 でもあの時はすぐに答えられないと思った。断るのもイエスというのも何か違う気がしたし、かといって先延ばしにするのも、あとあとで自分の首をしめそうだし。

 そもそも私は一誠のことを、どう思っているのだろう。


「三好さん……三好さん!」

「はい。」

「アップルパイ、焦げちゃうよ。」

「ご、ごめん。」

 気づいたら、上の空で料理を作っていた。そしてその味は。

「甘い、でも少し苦い。」


 あの時の判断が間違ってるとは思ってないけど、オリエン以降、一誠とまともに会話できていない。それどころか妙に意識してしまう。事実、そんなことを考えていたら下校時間になってしまうし。

「あれ、忘れ物しちゃった。」

 このまま部室から直帰するつもりが、今日の課題が入っている技板がカバンのどこにも見当たらない。

「ああ、教室か。」

 私としたことが。切り替えなきゃ。

 教室のある1号館に急いで戻る。だけどある光景をみて、私の足は止まる。

「奈湯に、一誠……。」

 もう下校時刻は過ぎている。それに二人が向かっているのは教室じゃなくて、さらにその先の方。

「この先には、階段しかないはず。」

 いったいどこへ?

 私は物陰に隠れながら、後をつける。幸い私の尾行に二人は気づいていない。そして何だろう、この胸をほんの少しだけ締め付けてくる、この思いは。

 階段の前で二人の足は止まった。


「じゃあ、行こう。」

「はい。」


 ここは1階、だからこれだけ聞くと2階に行くしか選択肢がないはず。だけど、二人が向かうのは2階への階段ではなく、その真下の扉の前。そこに自分たちの学生証である技板をかざして。

 ガチャ、ドアのロックが解除される。

 二人はドアノブを回して扉を開けると、その先に消えていく。たぶんこの部屋は限られた人しか入れない部屋。たぶん私の学生証では入れない。だから扉が閉まる前にそのドアノブをつかむ。つかんで一瞬考える。


「この先、入っていいのかな。」


 悪いことをしている気分。さすがにあの二人のことだからいかがわしいことではないと思うけど。私に何も話がないということは、私には関係のないか、話したくはないことか。

 でも、私は知りたい。2人が何をしているか。

「見つかったら全力で謝ろう。」

 いざ、扉を開けて部屋の中へ。中は薄暗いが明かりがある。でも二人の姿は見えない。

 いや。

「ここ、てっきり物置かと思っていたけど……。」

 二人は先を歩いている。この――。


「地下に続く階段が、あるなんて。」


その先は、いったい何が――。

次回は4/18までに更新予定です。よろしくお願いします。

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