第158話 コンサート⑤
読者の皆様へのお願い:作中のゲーム〝イセノ〟の掛け声を募集中です。基本は「いっせいのーで」のような感じですが、正直何でもあり。一応作中の腕輪は3音あれば掛け声判定できますので、最低3音以上あればOKです。思いついたら感想欄にどんどん書いてください。
さて、お話は前回に続きバトル回、一誠→百舌視点で切り替わります。それでは、どうぞ。
「私たち、ね。」
ノーデの台詞の一部を、高木さんは復唱する。何か引っかかっているのかもしれない。
『【〝タイムスリップ〟】』
だけど、まずは勝つ。俺たちの未来のために。この技に賭けて。
時計の針が、巻き戻る。
「〝タイムスリップ〟、これで〝テーピング〟で固められた指も回復します。」
「万能の治癒、それは絶大な力。ゆえにそれを有するのは、時か、神のみ。」
えっと。鵜飼先輩のいいたいことはなんとなくこういうことだろう。
俺の知ってる限り、結束状態を解除できるのは専用の回復技か、万能回復効果のある技しかない。そしてこの万能回復の効果があるのは、時間か、神と名がつく技だけといいたいんだろう。
「しかし力には代償が伴う。クヤマ、貴様の使ったそれは、一時の猶予を稼ぐに過ぎないぞ。」
『確かに一時、しかしその一時で当てればいいだけのことです。』
〝タイムスリップ〟は一時的に片手になって全回復する。今高木さんはポイントを使い切っている以上、〝電磁バリア〟さえ張れなくなればもう彼女を守る壁はない。その状態にさえ持っていければ、たった一度の数あてで、勝てる。
「【♩♫♩♪ 〝♪〟】
高木さんの音楽、何か今までと違う。掛け声のフレーズの後、少しだけ間があった。そしてその違いの意味は、すぐに判明する。
『数あてした、ようですね。』
Turn 12
Issei 0pt Mozu 0pt
【〝5〟】
R●●●●●
L○○●○● L●●●○○
アタシの宣言した数字は5、それは当たった。九山君が伏せる素振りはない。その代わり、彼から出た言葉は――。
『数あての時は一拍、間を置くのですか?』
まあ、そこまでは気づいてもおかしくはない。
今回のアタシの音楽は、こう成り立っている。
まず掛け声のフレーズを決める。これは他のフレーズ、組み合わせが被らないように最低5音、今回で言う【♩♫♩♪】のリズム。ここでは音楽を成り立たせるために、あえてリズムだけ、音階は指定しない。そしてこのフレーズが登場する前の前奏で指の配置を、フレーズ後の音で技や数あてを宣言している。
次に指の配置や技、これはドレミの音階で指定する。ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ここに高いド、レ、ミ、これがこの横笛で吹ける主な音たち。これを順に日本語のア、カ、サ、タ、ナ、ハ、マ、ヤ、ラ、ワと割り振っている。さらに半音の音は濁音に対応させる。もちろんそのままの字ずらすべてを指定していては長すぎるので、省略しながら。
例えば、「親指を下げる」と指定したい場合は、「お」はア行、「や」はヤ行、そして「下げる」は頭文字からサ行とみて「ドドミ」、技の〝テーピング〟なら「テ」のタ行、「ピ」のパ行をとって「ファラ#」といった具合。もちろん音楽性も成り立たせるために、多少採用する文字を変えることだってある。そこは私の匙加減。
だからこそ、この音楽を解読するのは不可能。まして初見、それにまだ2曲と少ししか聞いていない九山君、君にとってはね。
今の宣言で左手を抜き、私は5本の指全てが動かせる。さっきの様子だと、君は〝電磁バリア〟を持っていない、だから今後、私の数あて1回で終わらせることができる。
君が次にとる行動も読める。〝電磁バリア〟の条件、私の小指を確実に動かなくするために技を撃つ。だけど、それが不発に終わった時、私の返しのターンで当てさえすればそれで決着。それがかなわずとも〝タイムスリップ〟が終われば、もう君に手はない。
となればやはり、私が今演奏している曲が最後。ちょうど盛り上がるところまで来た。あともう少しで、終い……。
『【いっせいのーで〝1〟】』
いきなり数あて、しかも当たっている。
「【♩♫♩♪〝♩♩〟】」
ここは〝電磁バリア〟で防ぐ。
『【いっせいのーで〝4〟】』
また数あて、〝魅惑の不協和音〟で2か所動かなくなっているのはお構いなしに。
そして当たった。ただの偶然、よね?
「【~〝♩♪〟】」
ここはもう一度、〝電磁バリア〟で……。
『【いっせいのーで〝2〟】』
また⁉ 当たっている……。3連続、これをただの偶然で片づけるには少し無理がある。となると……。
まさか、そんなまさか。
アタシの音楽を、この短時間で解読したとでもいうの⁉
「【〝♫〟ッ】」
『笛の音が、徐々に乱れていますよ。』
動揺しては相手の思うつぼ。冷静に考えるの。
〝タイムスリップ〟の終わりがさっきのターン来なかったから〝追い風〟で4ターンに延長したことは確定。でもその延長した〝タイムスリップ〟も次で最後。この数あてを乗り切れば勝利。アタシは一演奏者として、この演奏は最後までやりきってみせる。
『【いっせいのーで〝3〟】』
まさか……。
「4連続の数あて……。」
「そして4連続の当たり。〝魅惑の不協和音〟の呪いに4か所かかっているのはなりふり構わずか。」
鑑賞している二人も、唖然としている。
「でも、〝電磁バリア〟で防がれたら……。」
「いいえ、それはできないの。」
近田さんはこの言葉に驚いている。なぜなら私が演奏を中断して、口を開いたから。
『〝電磁バリア〟で不可にできる技の数は4つが上限だったようですね。』
「そうよ。」
レベル6以上の技なんて、そうやすやすと準備できるものじゃないし、入れられる技のレベルの合計が100というルールから見ても、それは重すぎるから。
でも一番の要因は、自信があったから。自分の奏でる音に。
「アタシの音楽、解読したの?」
『ええ、技や指の配置などをすべて音でやり取りしようとすれば、必ず不自然な点が生まれます。そこからおのずと法則性は見えてくるものです。』
だとしても、それをこの短時間で解読するなんて初めての経験。それも鵜飼みたいな何度か対戦した相手ならともかく、今日初めて顔を合わせた相手に。
とても人間技とは思えない。
『あなたは演奏前にこういいましたね。一度演奏が始まったら最後まで吹くのが奏者というものだと。』
一見すればただの、1というくせ毛だけが目立つ少年。だけど、確実にいる。
『それがあなたのこだわりであり、それがあなたの敗因です。』
人を超越した、何かが――!!
VS百舌戦、決着!
次回3/28までに更新予定です。よろしくお願いします。
♦♦以下、補足♦♦
今回の高木百舌の音楽の法則性、これでちゃんと曲になるかどうかまでは未検証です。(作者もこのためだけにピアノアプリ入れたりして頑張ったんですが、所詮作者の音楽スキルは中学高校の教科書で習ったのが最後なので限界でした。)ということで、それをやれてしまうのが彼女のすごいところと割り切ってご理解ください。




