第13話 始まる前の記憶
はじめに連絡ですが12話まででイセノ投影表記が変になった箇所は修正しました。
スマホでもギリ見れるはず。(縦書きとかにはしないでください、全部ずれるので)
さて有言実行、前回から1週間+1時間後
連載再開です。
『だからね、新しい自分になってみたいの。生きた証を残せるような。』
私が始まる前の、記憶の断片。目の前にいる男性は、マスター?
泣いている。その表情は悔しさを帯びていく。
そのうち、足から崩れていき、かがみこんで、強く握りしめた拳を床のタイルに激しくぶつける。
「何が〝無限の巫女〟だ。私にとっては、有限なんだよ。」
そして、彼は仮面を手に取り思いっきり……。
パリン。
「ノーデ、どうした? お前の番だぞ。」
我に返って。
2030年12月23日。今の時刻は深夜3時くらい。
私は一誠と今日も〝イセノ〟をしています。
『すみません、少し考え事を。』
「珍しいな、ノーデが考え事なんて。考え事と言えば、俺も気になることがあるんだよな。」
『保護者懇談会ですか。今日ある。』
「今日? ああもう12時過ぎてんだな。ここにいると時間分からないのは不便だよな。」
その後、一誠は感慨深い顔をしています。
「早いもんでさ。小学校最後の懇談会なんだ。今年で卒業だし、受験もあるし、事故にも合っちゃうし。成績も事故の後下がったしな。先生になんて言われるか。」
『でも、事故の後は頑張って、成績も持ち直したではありませんか。自信を持ってください。』
こういう時は、前向きになるように元気づけるのがいいのです。
「そう、だよな。よし。おっと、対戦の続き。今の状況だとノーデは数当てで勝つしかない。そうじゃないと、俺が次に〝あの技〟で勝てるからな。」
『〝あの技〟もようやく使える一歩手前まで来ましたね。これも私の教えがいいからですかね。』
「切り札は2つ以上持て、とか言ってたな。確かにあの技にこだわりすぎてた感じあったからな。まあでも、これでやっと……。」
『それはどうですかね。』
自分の手を見つめていた一誠はこちらを向きました。驚きと不機嫌さを顔に出しています。どうやら、私の次の言葉をあらかた予想しているのでしょう。
『このターンで当ててしまいますから。』
午前10時に一誠は母親の五月さんと家を出て、小学校に向かいました。学校までは徒歩で、15分くらいかかります。
「今日は雪、振るかもね。予報でもすこし雪がちらつくかもしれないっていってたし。母さん、そんな恰好で大丈夫なの?」
一誠は白い息を混じらせながら言いました。
「これは冬用だから大丈夫よ。こう見えて意外に暖かいの。」
相も変わらずエプロン風のドレスに身を包んだ五月さんが答えます。懇談会まで着てくるくらいですから、五月さんも服装には謎のこだわりがあるようです。
「あれ、あそこの工事終わったのかな。」
一誠の視線の先は、緑の木々と一部コンクリートで塗り固められた斜面に囲まれた山。その中で一際目立つ赤の社殿を見ています。
あの建物は神杉神社。五年前台風の時に起こった土砂崩れで建物が流されて以来、大規模な改修工事が行われていて、ずっと工事用のシートが被されていました。
「まだ、シート被さっているところもあるから、完全に工事は終わってなさそうだけど。ついに終わりが見えてきたわね。ほとんどの建物が壊れてどうなるかと思ったけど、杞憂だったみたい。」
「きゆう?」
「一誠も勉強不足ね。杞憂っていうのは取り越し苦労ってことよ。心配しなくてもいい心配をしていたってこと。また、祭りとかあるのかしら。」
「祭り、もう一度あったらいいな。」
『何か思い入れでもあるのですか?』
瞬きが入ったので、私は一誠に質問しました。
「ちょうどあの神社でやってた祭りなんだ。俺がカナデと一緒に行った祭りで、〝無限の巫女〟さんを見たのは。台風以来、祭りそのものが休止になって、そこでやってた〝イセノ〟大会も自然消滅してしまったから、もうどこの誰かもわからないけどね。」
『意外に近くにいる人物かもしれませんよ。』
「まさか、少なくとも俺よりは遠い場所にいるよ。仮にもし、会えたら戦ってみたいけど今はカナデとの対戦が優先。」
当面の目標は変わらないようですね。
かれこれ学校に到着。正門から靴箱に向かって、アスファルトで舗装された道を一誠たちは歩いていきます。その道の横にはこの学校の卒業生が残していった数々のモニュメントがあります。それは銅像、日時計、木々、壁画など様々です。
「あれは、近田先生。」
ふと、一誠がつぶやきました。
当時の卒業生全員の手形をかたどったモニュメントを見つめるスーツ姿の男性。
「由多、私は……」
「ゆた?」
マスターの声が一誠には聞こえたようです。
「えっ、あら本当。白衣じゃなかったから気づかなかったわ。近田先生、お久しぶりです。」
「ああ、九山さん。一誠君も。ご無沙汰しております。」
マスターも五月さんの声でこちらに気づいたようです。
「今日は、奈湯ちゃんの懇談会とかですか? それにしては奈湯ちゃんを見かけないのだけれど。」
「奈湯は靴箱のところで待ち合わせしています。ちょっと私自身が朝にやっておかないといけない仕事がありまして、病院によってから今来たのですよ。」
「お医者さんって多忙なのね。ところで、何を見ていらっしゃるんです?」
「ああ、実は私もここの卒業生でして。もう20年以上前ですが、そのとき卒業記念で作ったのがこの手形のモニュメントなのです。私のは、これですね。」
「へえ、俺の手のサイズぴったりだ。先生の手は大きいね。」
一誠は、モニュメントの手形と自分の手を比べて言いました。
「私が小学6年生の頃の手形だからね。今日久々にみて、時の流れは早いなとすこし感慨に浸っていたよ。ああ、いけない。時間がないのでこれで。」
手袋の袖の腕時計を確認したマスターはそういうと足早に靴箱の方に向かっていきました。
「近田先生、休まる暇もなさそうで大変そうね。」
「そうみたいだね。にしても、ゆたってなんだろう?」
「ゆた? 湯たんぽの事? お湯を入れて体を温める。懐かしいわね、おばあちゃんちにあったな。」
「違うと思うけどな。」
「なら、浴衣とかの聞き間違いでしょ。」
「母さん、今冬だよ。時期的に言わないよ。」
「そうかしら。そんなことより私たちもそろそろ行かないといけない時間よ。」
一誠は、先を歩くマスターに視線を移し、瞬きします。
「ノーデ、お前は知ってるか?」
脳内空間で質問してきました。
『マスターの奥さんのお名前です。私を作った。』
私の答えに一誠は、なるほどとうなずきます。
「やっぱりノーデは知ってたか。というか、ノーデを作ったとか結構重要な話じゃないか。きかせてくれよ。」
『それよりまずは懇談です。不安な気持ちを紛らわしたい気持ちはわかりますが、今は目の前のことに集中です。』
「それもそうだな。よし。」
一誠の顔は少し晴れ、現実に戻っていきます。対照的に私の顔は曇り、一人つぶやきます。
『私もそれ以上のことは知らないのですよ。』
本編読めばわかりますが、今回はしばらくノーデ視点が続きます。
次回は3/18です。
引き続きよろしくお願いします。




