第12話 VS鋭人戦 決着
サブタイトル通り、今回で鋭人戦決着です。
それでは本編です。
Turn 12
Eito 0pt Issei 0pt
【〝time slip〟Lv.3 】
R●●●●● R○○○○○
L●●●●●
俺は、自分の脳内空間にいる。
不思議な感覚だ。このコードは言ったことがなかったけど。俺であって、俺じゃない。体の主導権は今、ノーデが持っている。
ただ、俺の体をどうしているかは感じ取れる。〝タイムスリップ〟の宣言時に右指5本を上げ下げして、それに右目をずっと閉じたまま、左目を開けている。そのせいか、左目だけ外の世界が見える。
「九山君? もしかしてまぶしいのですか?」
ナユユが最初に俺の変化に気づいた。なんか、声が直接頭の中に入ってくる感覚だ。いや、俺の脳内空間で頭の中っていうのもおかしいか。それはそうと確かにちょうど雲間からまた日差しがのぞいてきたタイミングだけど、そうじゃない。
「かっこつけか? 右目がうずく的な。」
「もうそういう年頃なのかしら。中二病っていうの。」
鋭人や母さんも反応してるけど、それでもない。
「いや、あれはそう、片眼モードだ!」
トーモは勝手にこの状態を命名してる。
「片眼モード、ってなんですか?」
「なんかこう、片眼を閉じて、あえて自分に入ってくるいろんな情報を絞ることで集中力を上げる、みたいなことなんじゃないかなって。」
トーモ、お前冗談でもすごいな。ほぼその通りなんだよ。
『私が体の主導権を握る分、情報の処理速度を落とさないために片目を閉じます。』
ってノーデが言ってた。
「でも、〝タイムスリップ〟か。」
「どういう技何です?」
「その対戦で1回しか使えない技で、一時的に自分の指を片手の5本だけにして全回復することができるんだ。」
トーモとナユユがノーデの使った技の解説をしている。
「すごい技ですね、じゃあまたまだまだチャンスはあるってことですね。」
「いいや、最後の悪あがきだな。〝タイムスリップ〟は使ったときに一時的に手術ポイントもリセットされて0になってしまうし、代償として3ターン後、使用者の指5本が死滅する。まあ、ブラックホールも継続中だから結局10本すべて死滅状態だが。それに今のターンで1ターン目は終わったから残り2ターン。もう後がないって言ってるようなものだぞ。」
鋭人の言う通りだ。
『でも、まだ2ターンある。それに私はあきらめが悪いもので。』
違和感がある。
追い詰められているのは俺たちの方なのに、ノーデに焦りがない。
「【ッせいので〝晴れ〟】」
鋭人の攻撃。ノーデは中指、薬指を上げてる、か。この脳内空間でみれる映像はノーデ視点だから、確認しにくいな。天井の〝イセノ〟投影を見た方がいい。
「変なところ上げるな。」
『それは私の自由です。それよりいいのですか、ポイントを貯めようとしなくて。当ててしまいますよ。』
圧が、すごい。あの鋭人が一瞬黙るくらいに。
「この状況ならお前の自滅を待てばいいだけだ。それに、所詮お前はイッセーだ。当てられるわけがないだろ、お前に、オレの上げる数を。」
『果たして、そうでしょうか?』
「何!」
俺自身の表情がここに映し出されてるわけではないけど、分かる。
ノーデの奴、もう鋭人が挙げる数字、分かってるってくらい、余裕の笑みを浮かべてやがる。
「【いっせいのーで〝8〟】」
ノーデが言ったその瞬間、俺は天井を見上げた。
白丸の数は……。
Turn 16
Eito 0pt Issei 0pt
【〝8〟】
R○○○○○ R●○○○●
L●●●●●
一瞬、静まり返った。
「当たった……。」
って、俺は思わず口を動かした。そして体の主導権が俺に戻ってると気づいた。
「九山君が勝ったんですね。」
俺の勝ち、それを場にいた人々は徐々に理解して言ったのか、パチパチと拍手の音が聞こえて、それが大きくなった。
勝った。ただ、俺だけの力ではないということが少しだけ引っかかってはいたけれど、それ以上に嬉しさが勝る。
「俺には分かる。これはすごい攻防だったと。」
「というと?」
「〝タイムスリップ〟のチャンスは2回。それで相手が全部の指を動かせるとなれば、普通最初は〝晴れ〟、〝雨〟で相手の指を固めて次のターンで、数当てをするほうが有利なんだ。」
「でも、それを逆手に取った。オレがそう来ると踏んで、一番確実に指の本数が残せる5本を上げてくると読んだのか。やられたぜ。」
ナユユ、トーモ、そして鋭人が今の試合の感想を言い合っていた。
「それにしても、イッセーの雰囲気。お前、本当にイッセーか?」
トーモの鋭い質問、答えに詰まる。だけど、今の俺は九山一誠。
「俺は、俺だ。」
「いや何、当たり前のことかっこつけて言ってんだよ。」
トーモがツッコミをいれた。
「格好つけたがりたい年頃なのよ。トーモ君はまだそう言う年頃じゃないの?」
母さんがトーモに質問し、トーモは自分のことを指さして答える。
「俺ですか? 俺はまだ冷静沈着って感じで突き通したいんですけどね。」
うん、お前も格好つけてない?
「イッセー、オレも一つ聞いていいか?」
今度は鋭人が俺に質問。俺は軽くうなずくと、鋭人は続けて言った。
「最後の宣言、なんで8にした? 7でもよかっただろ。」
いわれとみると確かに。俺、いやノーデが人差し指を上げなければ7だった。どうして……ってこれしかないよな。
「それは、鋭人の名前だから。」
途端に鋭人は笑い出した。
「な、何がおかしいんだよ。」
「いや、イッセー面白いな。お前もカナデも、勝ちに変にこだわってる。」
「カナデも……?」
「ああ、カナデもお前と同じ純粋で粘着質だからな。まあ、最近はずる賢さも身につけて来たけど。お前とまた勝負する日まで私は強くなっとくんだとか言ってるんだぜ。」
「えっ。じゃあ、カナデは俺の事覚えてるんだね。」
「あ。」
思わず口をふさいだ鋭人。それですべてを悟った。こいつ、俺が事故にあった日も、嘘言ってたんだ。謝罪に来た本当の理由も、その罪悪感からか。
「くそ、口が滑ったな。この際だからはっきり言うが、オレはお前がすかん、昔からな。カナデが海外に行くまで、妹のカナデにしつこく付きまといやがって。しかも、カナデもお前の事を意識してる。勉強も運動もろくにできない、ありとあらゆるゲームでカナデに負けてきたお前をだぞ。なぜ兄であるオレじゃないんだ。オレはテストで学内一位も取ったこともあって、運動もできて、〝イセノ〟以外の勝負なら互角に張り合えるこのオレじゃ。なんでお前なんだ。」
思わず、ぽかーんと俺も俺の周りも口を開けて聞いていた。これが鋭人の本音か。鋭人ってシスコンだなって理解した。そして、鋭人が頭いいってことはわかってるけど、勉強できないってとこだけは弁解したい。
鋭人もすべてを吐き出したのか、落ち着いたみたいで
「すまん、今のは忘れてくれ。約束だよな、連絡先は教えるよ。」
と、スマホを取り出し、母さんに連絡先を教えていた。何事もなかったかのように俺も周囲もふるまうことにしたが、しばらく忘れられないだろう。
「約束通り、カナデにはお前とのリモートの件、伝えておく。だが、対戦するのはイッセーの受験が終わってから、3月初めになるだろうな。」
「全然大丈夫。」
「そういえばイッセー、近芽台中学受けるんだってな。まあお前の学力で受かるかどうかは知らんが、受験頑張れ。」
「ありがとう、頑張るよ。」
「そしてオレが学校別の対抗戦とかでコテンパンに打ち負かしてやろう。」
鋭人は俺への敵対心丸出しだな。
試合が終わり、トーモとナユユはそのまま塾へ、母さんは部屋の片づけをしていた。俺も手伝いをしたかったが、「病人だからおとなしく自分の病室にもどっておきなさい。」と母さんに言われて、鋭人の付き添いで戻った。
「別に、付き添いいらないのに。」
「オレに付き添われると何か嫌なことでもあるのか。」
「いや別に、そういうわけじゃ……。」
まだ最後の数当てを疑っているのかな。
「ならいいだろ、イッセー。どうせ病室すぐなんだし。お前って変なところで躓くからな。オレが見張ってるんだ。」
「見張りって……。」
鋭人なりのやさしさ、なのかな。目つきは怖いんだけど。病室のドアも開けてくれたし。
「だいぶ先の対戦になると思うが、カナデは強いぞ。」
「分かってる。今よりももっと強くなっとくよ。」
「勉強も忘れずにな。」
「そ、そうだね。」
そして、鋭人は病室を出ようとして言った。
「ああ、最後に一つ。妹ならかわいい一面ですませられるが。」
分かる、これ、笑み浮かべながら毒気のある一言言うんだろうなって。本当、鋭人は一言余計なんだ。
「オレはネバネバした奴は大嫌いだぜ。」
そしてその夜、ノーデがつぶやいて俺も気が付く。
『一誠、今日誕生日ケーキ、食べてませんでしたね。』
いつか予告した通り、1週間休みます。
といってもある程度続きは書いているので安心してください、必ず戻ります。
更新時間、ここまできたら24時間制覇したいしね。
表記とか僕の気づかない間違い箇所や感想等があれば、どっかコメントなどで教えていただけると幸いです。
それでは一週間後また。




