第11話 ブラックホール
いや、改めて勝負書いてると、作中のイセノ投影、確認が本当に厄介。
そして相変わらずこの表記で視点が一誠とノーデの視点を交互に切り替わります。
この先の勝負もこんな感じだから慣れてください。
よろしくおねがいします。
Turn 5
Eito 0pt Issei 0pt
【〝sunny〟Lv.1(S1)】
R○○○○○ R○○○○●
L●●●●● L●●●●●
鋭人は自分の指を固めて、自力で〝手術〟して手術ポイントを貯める気だ。俺が〝トリック〟で手術ポイントを取り返せないのをいいことに。
でも、俺も右指を上から4本あげた。この技が使える。
「【〝最高の手術〟】」
俺は右の指5か所すべてを上げて、そして下げる。
この技はレベル3。1度で5か所の固まった指を治せて、1試合で1回しか使えない貴重な技だ。
「これで、一誠が一気に5か所を手術したから、5ptがたまる。鋭人はいまだ0pt。これでさっきとは立場が逆転したわけだ。」
「しかも、今度は〝トリック〟を使おうにも、横尾さんも指が固まっていますから、使えないですね。」
トーモとナユユが俺のプレイを見ながらしゃべっている。もうこれは補佐役というより実況役か。
「しかし、イッセーが使えるということは。」
トーモ、フラグをたてなくていい。
「【〝最高の手術〟】」
鋭人も右指5本を治しに来た。〝晴れ〟にかかっている5か所を下ろす。
と、直後に鋭人はニヤリとした。
「〝ツインパワー〟、だぜ。」
えっ。
思わず自分と鋭人の指の形を見て、気づく。
〝手術〟は普通、というかルール上、上がった指なら下ろして、すでに下ろしている指なら上げる。〝手術〟した箇所を分かるようにするためだけど、この動作の直後に自分と相手の指の形が同じになることがある。
「〝ツインパワー〟って、基本〝雨〟や〝晴れ〟みたいな指の上げ下げが関わる攻撃技のときによく起こるから、その時はつい身構えがちだけど、手術っていう回復技のときはどうしても意識がそれがちになるんだよな。」
トーモが俺の気持ちを代弁してくれている。
「なるほど、このゲームも奥が深いんですね。」
ナユユは納得してくれているようだ。
現状、鋭人は最高の手術の5ptと〝ツインパワー〟による5ptを得た。つまり、トータル10pt。大技が使えるポイントだ。
でも、落ち着け。まだ大丈夫だ。
5ptあるなら〝シールド〟ができる。10ptでできる攻撃技は大体〝シールド〟1枚で防げる。俺が〝手術ポイント〟を貯めて追いつけば問題ない。
って、いつもなら考えるんだろうな。
「【いっせいのーで〝10〟】」
周りのみんなが少しどよめく。
「ここで、当てに行くのか!」
「そして、当たってます!」
「さすが、私の息子ね。」
よし。
Turn 8
Eito 10pt Issei 5pt
【〝10〟】
R○○○○○ R●●●●●
L○○○○○ L●●●●●
特訓の成果、発揮されているようですね。
「やるようになったじゃねえか。」
鋭人からも称賛の言葉。
『一誠、数当ては、相手が予期していないときにするのです。そうすれば、相手はとっさの反応で上げやすい指の形しか上げない。』
という私、ノーデのアドバイスの賜物です。
それにしても、鋭人は数あてを〝シールド〟等で防ぐそぶりを見せません。
「〝シールド〟しないのか?」
「片手、抜けてくれてかまわないぜ。」
一誠は左手を抜きます。鋭人はまだ余裕がありそうです。
何か、ありますね。
「【ッせいので……」
鋭人は再び目一杯手を大きく広げて――。〝雨〟、いや。
「〝晴れ〟】」
Turn 9
Eito 10pt Issei 5pt
【〝sunny〟Lv.1(S1)】
R●●●●● R○○○○○
L●●●●●
!!!!
俺の全部の指がかかってる。
防ぐしかない!
「【〝シールド〟】」
「使ったな! 5pt」
えっ。
「この前と同じようにこの技をお見舞いしてやるよ。」
この前、事故にあう前の対戦。よみがえるトラウマ。
雲間が日差しを遮り始める中で、鋭人は右手を大きく広げて、声高らかに宣言する。同時に技板が黒く染まる。
「【〝ブラックホール〟】」
それは、俺の手を暗黒の霧が包み込むみたいに。一瞬、自分の手の重さを感じなくなって。
「ああ――。」
ぜ、全滅。
すべての指が死滅状態、手術では治せない。
「知ってるか、〝シールド〟は張らせて、割るんだぜ。」
理解は後から追いついてくる。
Turn 11
Eito 10→0pt Issei 0pt
【〝black hole〟 Lv.5(S1)】
R○○○○○ R×××××
L●●●●●
「俺は、鋭人のフェイントに引っかかったんだな。」
一誠、この脳内空間にきましたね。
『理解したようですね、一誠。鋭人は技名を言う前、〝いっせいので〟という掛け声中に〝雨〟を放つ前にする、動く指すべてを上げる動作を行いました。それで技名を宣言するときすばやく指を下げて打った技は〝晴れ〟だったというわけです。』
私は、死滅状態を表す×で覆われた〝イセノ〟投影を眺めるのをやめて、まずは現状説明。
「いちいち解説しなくてもわかってるよ。」
と一喝されましたが。
それにしても、何でしょう。さっきから、一誠の視線が痛い。
『えっと、前から疑問だったのですが、〝いっせいので〟という掛け声は技を放つときすべてにつかうものではないんですね。』
「すごい今さらだな。まあ、指の動きが関係する技にしか基本つけないから。て、そんなことじゃないんだよ。」
話題そらし、失敗。
『えっと、ではなぜ、一誠は不機嫌そうな表情で私を見るのです?』
「〝ブラックホール〟食らってさ。なんか、今むしゃくしゃしてるっていうか。」
『八つ当たりですか。確かに〝ブラックホール〟は手術ポイントが10で使える強力な技、確か食らったらすべての指が自分のターンで5ターンの間、死滅状態という、手術系統以外の回復技でないと治すことができない状態になるというものでしたね。しかし、今の一誠にはその回復技も使えないので治せません。』
「そう、今その状況。」
一誠は両手を掲げて言います。グーの形をしてはいますが、いつもの上向き親指ではなく、親指をその他の4つの指で覆う形。これが死滅状態のデフォルトです。
「お前と勝負してた時にも〝ブラックホール〟は何回か食らったから、それで慣れたと思ってたのに――。」
『その技の映像は、夢の中では迫力ある演出にしてましたね。何せ、名前が宇宙規模ですから。』
「あのときは新鮮さとか面白さとかが強くて、多少の痛みとかはあったけど手が軽かったんだ。でも今日はその、手が重いんだ。」
『なるほど。負けるのが怖いということですね。』
一誠は鋭人と、そして私との対戦でも〝ブラックホール〟を受けるたびに負けてきました。それが今回の一誠のプレッシャーになっているのでしょう。
「その、通りだな。あれだけ、お前と特訓したのに。このままじゃ。」
すこし、一誠は涙ぐんでいます。
私に八つ当たり気味なのは、それだけ悔しいから。
『勝負は終わってないでしょう。まだ打つ手はありますよ。』
「でも、このままじゃ、二度とカナデと勝負できない!」
『二度と、ってことは……。』
「できないんだよ!」
一誠は大声で叫びます。
うーん、情緒不安定ですね。それだけカナデさんへの思いが強いということですか。
私の分析では、鋭人がそこまで意地悪ではないと結論付けています。彼は口こそ悪いですが、事故の日のことで一誠に謝罪しましたし、カナデさんの現況も伝えてくれた。それに一誠の粘着質な性格を加味してあきらめがつくように「チャンスは一回しかやらない。」という言葉をいったのでしょう。一誠はその言葉を信じすぎていますが。
かたや一誠は、一度信じ込むと突っ走る傾向がありますから、負け=カナデさんとの対戦は不可能、それは最悪、一誠にとって生きる目標を見失うなんてことになるかもしれません。それは私にとっても困ります。
一誠はまだ子供、ならある程度導くのは私の役目。
『なら、どうするのですか。脳内空間にいるといっても時間はそんなにありませんよ。』
せかして、決断を迫って、申し訳ございません。でも、私は聞きたいのです。
『一誠は、誰に、勝ちたいのですか?』
一誠の本音を。
「俺は、カナデに勝ちたい!」
ぶれないですね。今、対峙しているのは鋭人だというのに。
でも、それならオーケーですかね。
私は一呼吸おいて答えました。
『まったく、世話の焼ける人ですね。なら唱えてください、あのコードを。』
「でも、あれって」
『このまま負けてもらっては一誠の目的を果たせませんし、その目的が果たされないとノーデのカウンセリングも失格です。判断は任せます。』
一誠は一瞬沈黙。迷っているのでしょう。正直、私もこの手段、あんまり使いたくありません。しかし捉え方を変えましょう。
「Operation code 憑依」
今の私は、一誠の一部。
「ノーデ、ごめん。特訓付き合ってもらったりしたのに、結局自分の力で勝とうとせずに。でも、俺今まで戦ってきて力不足だなって感じて、勝つイメージができなくて。でも、ここで負けたらカナデと勝負できないから、だから。」
『今回、だけですよ。ちゃんと見ておいてください。勝ち方のお手本を見せますから。』
私は一誠の本体の口を動かします。
『【〝タイムスリップ〟】』
じらしてたブラックホール、やっと出せました。
(たぶんこの文章だけ読むとやばいやつみたい。)
次回は3/10です。
よろしくお願いします。




